主人公は「戦闘のプロ」にしてインストラクター!戦い方をレクチャーされた素人たちは、難局を打開し生き延びることができるのか…?
原作・工藤かずやさん+漫画・浦沢直樹さんの『パイナップルARMY(パイナップル・アーミー)』。1980年代に小学館「ビッグコミックオリジナル」に掲載された、浦沢直樹さんの代表作品のひとつです。
オリジナルは全8巻で完結済み。現在は2024年に電子書籍化された『パイナップルARMY 完全増補デジタル版』全6巻が刊行中です。以下『パイナップルARMY』の主なあらすじや見どころをご紹介します。
『パイナップルARMY』あらすじ・概要
アメリカ海兵隊員に所属しベトナム戦争で活躍、のちに傭兵として各地の戦場で名を馳せたジェド・豪士(ごうし)。現在は民間軍事援助組織「CMA」に属する彼の職業は「戦闘インストラクター」。
兵士としての高い戦闘能力と豊富な経験を持つ豪士が、様々なシチュエーションで依頼者に「戦い方」をレクチャー。その顛末を見届ける、というのが物語の基本線。
また彼自身のキャリアに関わる因縁や、事件・陰謀に巻き込まれるエピソードも。それらを時に孤独に、時に仲間たちと共に乗り越えていく様子が描かれていきます。ちなみに「パイナップル」とは手榴弾のこと。
『パイナップルARMY』のココが面白い!
異色の職業「戦闘インストラクター」
銃器の取り扱い・格闘術のみならず、爆破技術や作戦立案など、軍事に関するあらゆる能力に長けた元傭兵、ジェド・豪士。その彼が「戦闘インストラクター」であるというのが、『パイナップルARMY』の最大の特徴。
本作で戦いの主体となるのは「紛争に向かう新米兵士」の様なダイレクトな軍事案件から、「ギャングに狙われた姉妹」「テロ事件の目撃者となった父子」「誘拐した子どもを守りたい犯人」など、バラエティ豊かな依頼者たち。
いずれもド素人である彼らが、豪士の指導を受けてどのように自身のミッションをクリアしていくまで。そしてそれをサポートする豪士のリアルなミリタリー・アクションが、物語の大きな見どころ。
戦闘能力の高い主人公が事態を解決する、というのはこの系統の漫画によくあるパターン。ですが主人公の少し変わった立ち位置が、本作ならではの独特な風味を味あわせてくれます。
読み応えのあるドラマが面白い!
そんな戦闘レクチャーを皮切りに、世界各国で展開されるシリアスでサスペンスフルなドラマも、『パイナップルARMY』の醍醐味。
都市で起こる不穏な犯罪、地政が複雑に絡んだ紛争地域のトラブルなどを背景に、豪士の能力を必要とする人々。その目的はそれぞれですが、武力を求める時点で深刻な状況を抱えている…。
様々な依頼者たちと、そこに関わっていく豪士の交流から生まれる、多彩なエピソードの数々。アクションだけではない、ヒューマニティあふれる多彩なストーリーに、飽きのこない面白さあり。
また時折、豪士自身の過去にまつわるエピソードも挿入。海兵隊・傭兵時代の悲しい出来事や、因縁に立ち向かう彼。無骨な表情の奥に秘められた悲哀が、読み手の心に深く残ります。
テロリストとの戦い、その結末は…?
基本一話完結の『パイナップルARMY』各話。豪士がかつての仲間たちとともに、米将軍の陰謀に挑む『5人の軍隊』、ロンドン・ソーホー地区で殺し屋たちとの孤独な戦いに臨む老警官と、それをサポートする豪士を描く『キング・オブ・ロード』などの中編を交えながら、物語はやがて佳境へ。
エピソードの随所に登場していた「結社」と「謎の日本人テロリスト」の動きが表面化。その目的は、「ある方法」を使ってヨーロッパを壊滅させること!
そこに立ち向かう、豪士と仲間たち。かつての上官・老兵ハリデー、恋人未満の狙撃手ジャネット、敵にも味方にもなるライバル・コーツらとともに、さて豪士はテロを阻止できるのか…?
緊迫感あふれるラスト・エピソードは、締めくくりにふさわしい読み応え。戦闘のプロたちのリアルなアクションに、確かな満足感が残ります。
感想・レビューまとめ
以上、原作・工藤かずやさん+漫画・浦沢直樹さんの漫画『パイナップルARMY』感想・レビューでした。
1980年代の作品ですが、今読んでも色褪せない魅力のある漫画。浦沢直樹さんの代表作のひとつ『MASTERキートン』にも通ずる面白さを持つ、濃密なミリタリー・アクション・ドラマです。
なお本作の第1話と最終話には「ある仕掛け」が。ラストを読んでから最初に戻ると、また違った読後感あり。全6巻を余す所なく楽しんでみてください。
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