私がこれまでに読んで面白いと思った漫画をご紹介します。タイトル横の数字はランキングではなくナンバリング。作家が重複する作品は載せない、ということのみをルールとしています。
※2017年2月2日編集。
1~10
1.「海街diary」吉田秋生
既刊8巻。海の街・鎌倉を舞台に描かれる、四姉妹(=三姉妹+腹違いの妹)の物語。派手さはないのですが、随所に描かれる人間模様があったかくって、ああ、いつまでもこの海街の世界に浸っていたい…と感じさせてくれる空気が素晴らしい。
中学生である四女・すずの恋愛模様は少しくすぐったいけど(笑)、姉や彼女を取り囲む人々の思いやり、そして彼女が決して恵まれてはいない環境から、自分の世界を少しずつ広げていく、そんな様に心惹きつけられます。
2.「子供はわかってあげない」田島列島
上・下巻完結。書道部の門司くんと水泳部の朔田さんがふとした出会いをきっかけに、門司くんの兄(現・姉)を巻き込んで朔田さんの実の父親を探す…というよくよく書くと結構重たいテーマをサラッとライトなタッチで軽快に描いた、ひと夏のボーイ・ミーツ・ガール。
キャラクターの会話がとても魅力的な漫画です。軽快なボケ・ツッコミにニヤニヤしつつも、気づくと作者の術中にはまって「あの夏」にいるような気分になります。後から読み返すと良く計算されているな、という感想。
【ebookjapan新規限定クーポン】
3.「アンダーカレント」豊田徹也
全1巻完結。銭湯を営む「かなえ」の夫は、ある日突然理由も告げずに失踪してしまう。茫然自失の中、営業を再開した彼女の下に、銭湯組合の紹介で来たという寡黙な男が―。
タイトル通り、男と女の心の暗流を描いた大人のドラマ。時折ジョークも入りますが、読後はしんみーりした不思議な余韻が。漫画なんだけど、一本の映画を見終えたような気持ちになります。
4.「わたしの人形は良い人形」山岸凉子
私が読んだのは文春文庫版ですが、「山岸凉子スペシャルセレクション」の方が新しいのでこちらのリンクを貼っておきます。純和風なホラー漫画。
人形にまつわる怖い話、というのは古今東西・和洋を問わず尽きないものですが、漫画としてはこの作品がかなり古典的・かつベーシックなのではないでしょうか。ちょっと古いけど「あなたの知らない世界」的な恐ろしさがありますね。「黒髪の人形」の怖さは鉄板。
5.「地上の記憶」白山宣之
全1巻完結。2012年に病没された白山宣之氏の遺作短篇集。全5編を収録。この作品で白山氏の作品を初めて読みましたが、いるもんですね~、絵のうまい人。
現代劇「陽子のいる風景」「ちひろ」は一コマ一コマの描かれ方がとても緻密で魅力的。そしてそのコマがつながった時、ひとつの物語が動きはじめる。セリフで語るタイプの漫画ではなく、「絵」が読者のイマジネーションを刺激する、味わい深い漫画です。
6.「百鬼夜行抄」今市子
既刊15巻(文庫版)、以下続巻。純和風ホラー漫画。主人公・飯島律とその従姉妹・司、そして律の式神「青嵐」などキャラクターが魅力的な作品。飯島家の周辺に出没する「魔」が各話読み切りで描かれます。
律は「祓う人」ではなく「見える人」。「魔と日常」というか「毎日が怪談話」、みたいな漫画でしょうか。結ばれないけれど心の奥底でどこかつながっているという律と司の関係が、せつなくもうらやましい。
7.「鉄風」太田モアレ
全8巻完結。身長182cm、性格は「まっすぐ歪んでいる」女子高生、石堂夏央。才能がありすぎて何をしても満たされない彼女が、ライバルをぶっつぶすために総合格闘技の世界に足を踏み入れる、という本格女子格闘漫画。
彼女は本作中ぶっちぎりで性格が悪いのだけれど、登場人物の誰もがちょっとずつ歪んでいるのが本作の魅力。格闘技一本では食っていけない、などガチの女子格事情を描いているところも興味深い。
8.「ファンタジウム」杉本亜未
2015年に完結しました。全9巻。難読症の少年マジシャン・長見良が活躍するマジック漫画。字の読み書きが出来ないというハンデを抱えつつも、ショービジネスの世界に足を踏み入れた少年…って書くとなんかイメージ違うな。
ところどころに描かれる人々の生きざまに触れつつも、良の華やかな活躍、そしてマジックの世界に心躍る、そんな漫画です。7巻「ピエロ・エクリヴァン」で描かれる良の成長に涙してしまう。
9.「アップルシード」士郎正宗
既刊4巻+α、未完。「攻殻機動隊」はもちろん好きですが、その原点は何か、と考えるとやはり「アップルシード」。
ギリシャ神話を元にした名称設定、既成概念に囚われないサイボーグの形状、人造人間との共存、パワードスーツ「ランドメイト」、そして特殊部隊ESWATと、オタク心をくすぐり倒す設定にやられました。SF作品の新しい未来を切り開いた漫画。
10.「妖怪ハンター(シリーズ)」諸星大二郎
文庫版3冊、他いろいろ出ています。諸星大二郎先生の「妖怪ハンター」シリーズ。主人公・稗田礼二郎が様々な怪奇現象に出会って…なんですが、稗田はあくまでも狂言回しで何も解決しない、というところが異色の怪奇漫画。
「ぱらいそさ行くだ!」の元ネタはこの漫画です。日本古来の怪異や異形が好きならはずせない漫画。諸星先生には生あるかぎりこのシリーズを書き続けていただきたい。
11~20
11.「からくりサーカス」藤田和日郎
全43巻完結。完結後に全43巻を一気読みしましたが、まさに「駆け抜ける!」という言葉がピッタリの漫画。
勝と鳴海という二人のメインキャラが存在しているのに、どちらも食い合わずに成り立っているのがスゴイ。「からくりサーカス」読んでると力が入りすぎて奥歯をギリギリしちゃいます。ギイの最期、カッコ良すぎて震える。
12.「とめはねっ!」河合克敏
全14巻。「それを読んで何かをしたくなる漫画」がいい漫画の条件の一つと思っているのですが、これ読むと書道がしたくなる。してないけど。でももし現役の学生だったら、ちょっと影響を受けて書道部に入っていたかも、と思わせる漫画。
「書道」というのは失礼ながら結構地味な部類に入るものだと思いますが、そこに上手にスポットライトをあてている作品。
13.「火の鳥(異形編)」手塚治虫
未完(「火の鳥」全体として)。「火の鳥」は総合的に見ても面白いですが、特に評価したいのは「異形編」。「編」で区切るのもどうかとは思いましたが、何より長いシリーズなのであえて1編を選びました。ネタバレなので書きませんが、「○ー○もの」の一つの完成形だと思ってます。手塚漫画は深いですね。
14.「ブルーワールド」星野之宣
新装版全3巻完結。時間を超えるブルーホールを通じて、ジュラ紀に行った主人公たち。しかしトラブルにより帰還不能になり、恐竜世界でサバイバルを余儀なくされる…。
「恐竜VS人間」という、夢のテーマをあますことなく描いた漫画。現代と過去のつなぎ方その他には若干気になるところもあるが、細かいことは考えずに読むのが吉。リアル「のび太の恐竜」。
15.「名探偵マーニー」木々津克久
全11巻完結。高校生探偵「マーニー」が活躍する一話完結の推理モノ。事件の根幹に人間の黒い面が見え隠れするのが、他の推理漫画とはちょっと違うアプローチでイヤンな感じ。「探偵役の主人公が女性」というのもありそうで無い、新鮮な設定。
「セレブ」「アイアン」「スティンガー」といったグループが跋扈する、アメリカのハイスクールを彷彿とさせるような学園ネタもまた本作の魅力。
16.「鉄道少女漫画」中村明日美子
全1巻完結(スピンオフ「君曜日」もあり)。中村明日美子氏による「鉄道」をテーマにした短編集。あまり「少女」という単語にはこだわらない方が良いです。
気軽に楽しめるコメディ成分多めの漫画。でもそんなお笑い要素の中に描かれる、人と人との出会いや繋がりにおもしろみがあります。
17.「MASTERキートン」浦沢 直樹・勝鹿 北星・長崎 尚志
ビッグコミックス版全18巻・完全版全12巻完結。オックスフォードを卒業してイギリスの特殊空挺部隊SASに入隊、のちサバイバルマスターとなり、除隊後日本の大学の考古学講師となるもそれだけでは食えず、保険のオプ(調査員)をしながらドナウ川の発掘を夢見るキートンは私のスーパーヒーローです。ベストエピソードは「砂漠のカーリマン」。
【漫画全巻ドットコム】
18.「MOONLIGHT MILE」太田垣康男
既刊23巻、現在休載中。リアルな宇宙開発、そして月を目指す人間たちを描いたSF漫画。ブルーカラーとして超人的な能力を発揮する吾郎、そしてアメリカ軍人でクールなプレイボーイ・ロストマン。魅力的な二人の主人公を軸に、宇宙に飛び出す人類にドキドキ・ワクワクが止まらない。
「月へ到達するまで」とそれ以降の「月開発」では内容がガラッと変わります。ドネルケバブ号事件の際、急激な減圧に耐え切った吾郎とロストマンのツーショットは最高にカッコイイ。
19.「恋は雨上がりのように」眉月じゅん
バイト先の冴えない中年店長に恋した女子高生のお話。私は年齢・性別的には店長側ですが、正直この歳になると若い人の方を親目線で見てしまう。基本多くは語らない主人公の表情・目線・仕草が、実に巧みに彼女の気持ちをあらわしていて、うまい。
ちなみに作者は初期作品「さよならデイジー」を発表していますが、本作とのギャップがありすぎてワロタ。
20.「その名は101」横山光輝
全5巻完結(チャンピオンコミックス版)。昔なつかしのヒーロー漫画「バビル2世」の続編。バビル2世も好きだが、あえてこちらを推す。「3つのしもべ」を出さずに描く、バビル2世とその血を輸血された超人達との戦い、というコンセプトが好き。でも最後は3つのしもべが結局出るんだけどね(笑)。横山作品おなじみの「銀鈴」もゲスト出演。
21~30
21.「空が灰色だから」阿部共実
全5巻完結。一話構成のオムニバス。ほっこりする話、ちょっと悲しい話、笑える話。そしてその中に不意にあらわれる心を抉るような話、ブラックな話が癖になる。
3巻に収録の「ただ、ひとりでも仲間がほしい」のビジュアルはキョーレツ。中毒性のような心霊現象に対する説明がいちいちもっともらしくて良いです。
22.「I.C.U.」タイム涼介
物理学者・磯呂井心(イソロイシン)とその友人で霊の見えない除霊師・或木仁(アルギニン)、そして霊の見える少女・アミノの三人がチームを組む、ちょっと毛色の変わった除霊漫画。
霊やそれに取り憑かれた人々の描写が生々しく、そしておどろおどろしい。「見えないから祓える」のような心霊現象に対する説明がいちいちもっともらしくて良い。タイム涼介氏のちょっと先走ったようなセリフ回しが好き。I see you.
23.「ヘルタースケルター」岡崎京子
全1巻完結。沢尻エリカ主演で映画化もされた作品。全身整形のモデル「りりこ」が肉体の崩れから徐々に破滅へ向かって突き進む、まさにタイトル通り「螺旋状の滑り台」を彷彿とさせる内容。
最後は好き嫌いの別れるところだと思うが、私はイカしたラストだと思う。人間の欲望ってとどまるところを知らないのね。姉妹作として本作登場の人物も描かれている「リバーズ・エッジ」もあり。
24.「シンプルノットローファー」衿沢世衣子
全1巻完結。衿沢世衣子さんの作品が好きなのです。この「シンプル~」はとある女子校の生徒たちを描いた連作短編集。主役は毎回違います。
「女子校」というキーワードから想像される要素は一切でません。が、学生時代、何も考えずに生きていたあの日々を懐かしくも爽やかに思い出させてくれる、お気に入りの漫画。
25.「それでも町は廻っている」石黒正数
既刊16巻完結。とある下町を舞台に、女子高生・歩鳥(ほとり)とその仲間たちが繰り広げる、日常コメディー漫画。
基本的にはジャブのように繰り出されるギャグにジワジワとノックアウトされるパターンなのだけれど、時々良い意味で心にぐっさり突き刺さるエピソードをぶっこんでくるのが「それ町」の侮れない所。13巻で針原さんが紺先輩の懐にあっさり入った歩鳥を羨ましがる話、ぐっとくる。
26.「ドミトリーともきんす」高野文子
全1巻完結。もし朝永振一郎、牧野富太郎、中谷宇吉郎、湯川秀樹がドミトリーに住んでいたら…?高野文子氏による「科学者たちの言葉」を伝える読書案内漫画。4人の科学者とともきんす母子とのテンポの良いかけ合い、そしてハイセンスな絵柄が楽しい、オススメの一冊。
27.「聲の形」大今良時
全7巻完結。聴覚障害を持つ少女と、過去に彼女をいじめ、そして自身もいじめられる側になった少年の、再会から始まる物語。
正直に書くと、全7巻を読み終わった今でも、この漫画の伝えたかったメッセージを咀嚼しきれていない。でもこの本はまず読むこと、そして内容について「あーでもない、こーでもない」と考えたり話しあったりすることに意味があると思うのです。
28.「強殖装甲ガイバー」高屋良樹
既刊32巻、以下続巻。連載開始は30年前か…。色々な意味でスゴイ。特撮を意識した内容なので「男の子」に受け入れられやすい要素が盛りだくさん。下手に手を出すと一気読み必至。後は無事完結するのを祈るのみ。好きなキャラクターはアプトムです。
29.「ガラスの仮面」美内すずえ
既刊49巻、以下続巻。連載開始してから40年近く経つんですね。結婚してから妻に借りて読んでハマりました。「演劇」という世界がかくも熱く、奥深いものだったとは…!男性でこの漫画を読んでいない方、人生損してるので一度は見た方がいいです。「マヤ…おそろしい子!」とか白目風のビックリ表現とか、色んなパロディーの元ネタでもあります。
30.「大長編ドラえもん のび太の宇宙開拓史」藤子・F・不二雄
全1巻完結。劇場版原作である大長編ドラえもんの2作目。「コロコロコミック」でリアルタイムの連載を読んでました。冒険の始まり、出会い、異世界の空気、活躍、危機、友情、そして別れ…が見事にまとまった一作、大長編の中では一番好きです。「のび太の恐竜」や「大魔境」「海底鬼岩城」「魔界大冒険」も良いのですが、完成度の高さは1・2を争う作品なのでは。
31~40
31.「7SEEDS」田村由美
s=”books-clear”>
全35巻。災厄による人類の滅亡を防ぐために、冷凍保存された7人✕5組(春・夏A・夏B・秋・冬)が、文明の滅びた後の世界でサバイバルをするハードSF。初期は危険生物や自然災害などから生き延びようとする描写が主でしたが、中盤以降は登場人物が増え、対人サスペンス展開多めに。女性向けの媒体の連載ながら、決して恋愛展開に偏らない絶妙なバランスで、男性が読んでも面白い漫画です。
32.「GREY」たがみよしひさ
全2巻完結(文庫版)。海が蒼かったのは遠い昔、恋人を亡くし、「市民(シチズン)」となるべく戦いに身を投じた「死神グレイ」の物語。ちょっと気恥ずかしくなるぐらいのカッコつけたセリフが、当時の中二病まっさかりにジャストフィットした作品。今読んでもなかなかいけると思うのですが、どうでしょうか。二部の始まり~ナゴシ突入のあたりが好き。
33.「スキエンティア」戸田誠司
全1巻完結。「科学の女神」をその頂に据えた「スキエンティアタワー」の下で暮らす人々を描いた、少しSFなオムニバス漫画。描かれるのは誰も彼も普通の人々ですが、科学の力を日常に少しプラスされたことで、その生活にちょっと光射すような瞬間が。みんな悩み、苦しみ、それでも生きているんだよね。冒頭作「ボディレンタル」は「世にも奇妙な物語」で映像化されています。
34.「星のポン子と豆腐屋れい子」小原愼司・トニーたけざき
全1巻完結。読めば分かるので読んでください(笑)。原作・小原愼司、作画・トニーたけざきという組み合わせが斬新。
35.「七夕の国」岩明均
全4巻完結。岩明均氏の漫画としては「寄生獣」が有名ですが、あえてこちらを挙げてみる。謎の超能力を取得した主人公。しかし彼のルーツには何やらいわくがあり…という伝奇ミステリーSF。物語に散りばめられた謎に対するもどかしさが、ラストで一気に収束する様が読後の満足感を誘う。連載当時から読んでいたが、今読みかえしても面白い。
36.「ネメシスの杖」朱戸アオ
全1巻完結。行政機関の女性調査員と変人研究者が、南米原産の感染症「シャーガス病」の感染源を巡って奔走する、医療サスペンス漫画。猪突猛進な女性とクールな男性のコンビが面白い。絵柄に若干クセはあるが、一冊でキレイにまとまっています。すぐにでも映像化できそうな内容。同じコンビで続編希望。著者の別作品「Final Phase」も面白いです。
※「ネメシスの杖」は関連作「インハンド」のドラマ化に伴い、「インハンド プロローグ(1) ネメシスの杖」として再刊行されました。
37.「70億の針」多田乃伸明
全4巻完結。肉体を失って図らずも地球外生命体「テンガイ」と一体化したヘッドホン少女が、それと敵対する「メイルシュトローム」と戦う、というSF。お察しの通り出だしは「ウルトラマン」なのですが、一人の少女の出会いと別れ、そして成長の軌跡が爽やかな読後感を残します。少数巻でこじんまりとまとまった良作SF漫画。
38.「五色の舟」津原泰水・近藤ようこ
全1巻完結。小説家・津原泰水氏の原作を、近藤ようこ氏が漫画化。戦中、「見世物小屋」の一座が、未来を予言するという怪物「くだん」を探し求め旅をする物語。幻想的な内容がうまくコミカライズされています。読んだ後に感じる何ともせつない感じが良い。
39.「世界の合言葉は水」安堂維子里
全1巻完結。短編9編収録。基本、水にまつわるお話を収録。宇宙を目指す少年少女達を描いた「私たちはまだ途中」、気象現象「エンガイ」に魅せられた人々の話「塩害の季節」が特に面白い。全体的にファンタジックな雰囲気で、タイトル通り瑞々しい作品集。
40.「犬神姫にくちづけ」宮田紘次
全6巻完結。「わんこにくちづけ」と読みます。宮田紘次氏による長編漫画。清掃会社の「特殊汚染処理課」に所属する霊媒(イタコ)体質の女性社員が、上司であるイケメンドS課長にキスされることで犬神「弁天号」となり魔物を退治する、妖怪ハントもの。しかし根はシンプルなラブコメ。ああ、漫画って楽しいね、と素直に思える良作。
41~50
41.「機動警察パトレイバー」ゆうきまさみ
全22巻完結。ロボット漫画を「サンデー」で週間連載していた、という事実は今更ながらスゴイと思う。キャラクターとしては「カミソリ後藤」こと後藤隊長のインパクトに尽きるのですが、廉価版イングラム・エコノミーの足回りがフニャフニャと言った細かい描写に産業界の妙なリアルさを感じたり。しかし僕らはもうパトレイバーの世界を追い越してしまったのだなぁ。
42.「Q.E.D. 証明終了」加藤元浩
全50巻。天才少年・燈馬想とその助手役である体力担当・水原可奈が事件を解決する推理漫画。既にサザエさん時空に入り込んだ本作、当初若干垣間見えた燈馬くんと水原さんのいい感じな話も今や見る影なく。現在二人はぶっちゃけ狂言回しなのだが、毎回起こるトリッキーな事件が面白いので特に問題ない。「このハンバーガーとコーラは世界で一番売れているから一番うまいものだ」という画像の元ネタ漫画。
43.「Jドリーム」塀内夏子
完結。無印全14巻・飛翔篇全10巻・完全燃焼編全8巻。一番好きなのはユースを描いた飛翔篇。サッカーに駆ける若者たちの躍動がまぶしい!必殺シュートも超人的な選手も描かれませんが、代表に選ばれるということ、そしてその戦いの何たるかが良くわかります。この漫画を読んだ後では日本代表への見方が変わるかも。そして戦いの合間合間で描かれる、主人公・赤星鷹と恩師竹中先生のエピソードがまたせつない。
全2巻完結。ライトノベル的ストーリー+スタンドバトルを水木しげるタッチで描いた意欲作。一時とても話題になりましたね。まあとにもかくにも、話と絵柄のギャップ、そして見事なまでの水木タッチの再現にニヤニヤが止まりません。各話の間に挟まれる一コマ漫画が意外に面白い。ドリヤス工場氏の漫画は「有名すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む。」も面白いです。
45.「僕らはみんな生きている」一色伸幸・山本直樹
全4巻完結。アジアの発展途上国への出張から帰れなくなった日本人ビジネスマンの、悲哀と絶望または希望。南国特有の気怠さとそこに息づく人々の生々しさが全編から立ち昇る。20数年前の作品でリアルかフィクションかは判断できませんが、その時代、確かにこういう世界があったのでしょう。最終巻で何かに衝き動かされたかのようなジャパニーズ達に盛り上がる。
46.「ヨルムンガンド」高橋慶太郎
全11巻完結。「ヨルムンガンド」とは「北欧神話に登場する毒蛇の怪物」の意。若き女性武器商人とその私兵達を描いた異色の漫画。特殊部隊・狙撃・爆発物解体・敵対勢力排除など軍事や裏社会の描写が何ともオタク心に突き刺さる本作。話を複雑にし過ぎること無く、読者が愛着を持てるキャラクターを作り上げたのが支持を受けた理由の一つではないでしょうか。人気のあるうちに適度な巻数で完結させたのも潔い。フフーフ♪
47.「三文未来の家庭訪問 庄司創短編集」庄司創
全1巻完結。表題作「三文未来の家庭訪問」他、計3編収録。遺伝子デザインで生殖機能を持った男の子と、彼を立派な納税者として育て上げようとする家庭相談員のカノセさんを描いた「三文未来の~」…。ちょっと説明しにくいんですが、ラストで語られる雌雄の話はなかなか興味深い。死の間際に宇宙人によって美しく人生を完結させるべく地獄をループさせられる男性の話、「辺獄にて」も面白い…って、説明しづらいわ!
48.「HER」ヤマシタトモコ
全1巻完結。女性達の内面を描いた連作短編全6編。男性でも女性でも、みんな普段こんなことを考えながら生きているんだろうか。自分は物事を深く考えないタイプなので、この漫画に描かれる「人の内面」にちょっとビビってしまったり。基本シリアスなんだけど、最後笑いに持っていくパターン、好きだなぁ。
49.「アフター0」岡崎二郎
全10巻完結(文庫版)。基本一話完結のSFショート・ショート。著者・岡崎二郎氏の豊富な科学知識と発想の豊かさに驚かされる。どの話を読んでもおもしろく、感心することしきり。とっつきやすいイラストタッチの絵柄も好み。「科学?何それ」という方も気軽に手を出して問題のない漫画です。飽きずにパラパラと読める良いSF漫画。
50.「プラモ狂四郎」やまと虹一
全15巻完結(文庫版は全10巻)。作ったプラモデルで実際にバトルができたら…という夢を描いた漫画。基本はガンダムだけど、戦車・戦闘機・歩兵といったミリタリーからダグラム・バイファム・エルガイム、果てはサンダーバードやクラッシャージョウまで、色んな作品の異種格闘技戦、そしてプラモにかける熱い情熱が魅力的でした。「魔改造」の元ネタ漫画。「木製ガンダム」はインパクトあったなぁ。
51~58
51.「竜のかわいい七つの子」九井諒子
全1巻完結。7編収録の短編集。「ダンジョン飯」も「ひきだしにテラリウム」も好きですが、あえて本作を推す。「金なし白祿(びゃくろく)」のような絵・話を書ける作家さんってそうはいないと思います。「子がかわいいと竜は鳴く」はちょっと複雑な「母」の思いが一編に凝縮されていて味わい深く、ラストも良い。ファンタジー成分多め、九井作品の多彩さを楽しめる漫画。
52.「彼女のカーブ」ウラモトユウコ
全1巻完結。軽妙なタッチで描かれる、何気ない日常風景にユーモアを感じることのできる短編集。ネイリスト試験を控えた女性が実技試験のパートナーにちょっと苦手な義姉選ぶ「兄嫁のつめ」など。いい話・ほっこりする話に混ぜ込まれたクスッとくるお笑いポイントが良い、気楽に楽しめるほのぼの作品。表紙を見て過度な期待をしてはいけません。
53.「ダブルフェイク アンダー・ザ・ガンダム」うしだゆうじ
全1巻完結。今はなき「模型情報」に連載されていたガンダムのスピンオフ。「ZZ」と「逆シャア」の間の時代、コロニー公社の下請け作業員・ダリー・ニエル・ガンズがハンドメイドで作った「Dガンダム」がネオ・ジオンのMSを撃退して-というストーリー。「ガザW(ウィラ)」「バージム」「ズサ・ダイン」「バギ・ドーガ」といった歴史をつなぐMS達の設定がユニーク。ちなみに「ダブルフェイク」は「真っ赤な偽物」の意。実はサンライズ公認。
54.「夕凪の街 桜の国」こうの史代
全1巻完結。ヒロシマで被曝した女性を描いた「夕凪の街」、そしてその女性の弟家族を描いた「桜の国」からなる二部構成。日本人が忘れてはならない過去と、今ある差別。少し重い話ではありますが、こうの史代氏の軽いタッチで読みやすい。ラストの主人公のセリフにホロリとくる。一度は読んでおきたい漫画。
55.「このたびは」えすとえむ
全1巻完結。冠婚葬祭にまつわる短編6編。超めんくいな女性が、お見合いで見初めた顔面偏差値トリプルAの男性と結婚するまでの顛末「ふつつかものですが」がほっこり良い感じ。人と人との出会い、そして別れってこんなものなのかも。
56.「アラクニド」村田真哉・いふじシンセン
既刊14巻完結。女子高生殺し屋昆虫バトル漫画。ちょっと何言ってるかわかんないです。登場人物はほとんど殺し屋なんだけど、それぞれが「虫」の能力を備えている、という。冷静に考えると笑っちゃうんだけど、それを考えさせないノリとハッタリが効いている。戦いの合間に挟まれる昆虫うんちくがためになる。虫好きな方におすすめしたい漫画。
57.「さよならタマちゃん」武田一義
全1巻完結。著者である武田氏自身が精巣腫瘍にかかり、その摘出とガン治療のため入院していた時のエピソードを漫画化。タイトルはそういうことです。キャラクターはみなかわいい三頭身ですが、描かれている内容は至ってマジメそのもの。入院患者の苦しみや、抗癌剤の副作用、そして「治療うつ」。実際に体験した作者自身の手による描写にリアリティがあります。私は入院経験があるのでこの漫画の内容に共感できました。
58.「サイレーン」山崎紗也夏
全7巻完結。里見(♂)と猪熊(♀)は刑事で恋人同士。本部への抜擢を目指し日々精進する彼らの前に現れたキャバ嬢・橘カラ。殺人事件に何やら関わりのありそうなカラは、やがて里見達に接近し-、というサイコ・スリラー漫画。超絶美人なカラの、外見と正反対なドス黒い行動が何とも不気味で怖く、警察官として真っ直ぐな里見達との対照がその異常さをますます際だたせる。今後の展開が楽しみな一作(※)。山崎紗也夏氏の絵柄はこういうダークな話の方が映えるね。
※完結しました。個人的には満足のいくラスト。
まとめ
以上、おすすめの面白い漫画58作品のご紹介でした。冒頭でも書きましたが、一部例外を除き比較的マイナー群にある(と思われる)作品を選んでいます。また「男性でもおもしろく読める女性向け作品」もいくつか意図的に入れています。
マニアックに走り過ぎず、かつご覧になられる方の観測範囲外にある作品をお伝えすることを狙ったのですが、いかがでしたでしょうか。御覧いただいた方の興味を刺激するリストになっていたならば幸いです。
コメント