ドSなイケメン上司とドMな部下の新人OL、という組み合わせがすることは一つしかないですよね。
そう、「悪霊退治」です!
というわけで今回ご紹介するのは宮田紘次(みやた・こうじ)さんの漫画「犬神姫にくちづけ」全6巻。
清掃会社の除霊・退魔専門班の活躍と、上司・部下のイケない関係(?)を描く、オカルト・アクション・ラブコメです。「犬神姫」は「わんこ」と読んでください。
「犬神姫にくちづけ」レビュー
概要
主人公は清掃会社「ラッキー清掃」の特殊汚染処理課の課長・犬養(いぬかい)影之と、その部下である新人OL栗生(くりゅう)かずら。
犬養は犬神・弁天号の使い手。霊媒(イタコ)体質のかずらとキスをすることでかずらに弁天号を憑依させ、5分間だけ驚異的なパワーを持つ犬神をあやつることができます。
特処課(特殊汚染処理課)の社内での呼び名は「ゴミ捨て場」。
ひとクセもふたクセもある問題社員ばかりが集まりますが、その実態は除霊・退魔専門班「玉箒(タマバハキ)」。悪霊や妖魔に取り憑かれた物件を「清掃」する専門部隊です。
毎回様々なシチュエーションで除霊・退魔業務を行うタマバハキ。クールな犬養と、彼を密かに慕いながらも、「仕事で」キスをすることに悶々とするかずら。
そんな二人をコミカルに描くオカルト・ラブコメが「犬神姫にくちづけ」です。
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ユニークな寸止めラブコメ
宮田紘次さんのポップな絵柄と、ページいっぱいに動き回るキャラクターたちのアクションが楽しい「犬神姫にくちづけ」。
しかしその実態は、読んでいてこっ恥ずかしくなるほどのラブコメです(褒め言葉)。
かずらに弁天号を憑依させるために、毎回犬養とかずらのキスシーンがあるのですが、これが実に生々しい(笑)。
かずらは入社二ヶ月の新人ですが、そんな仕事に不満が。しかしイケメンの犬養に迫られるとイヤとは言えずに、いつもイヤイヤ弁天号になります。
犬養も、かずらの気持ちをわかった上で彼女を「操作」。そんなドMとドSな二人の関係が、毎回繰り返されます。
しかし霊媒は「生娘」であることが条件。二人が会社と交わした契約の条件は「XXXしてはいけない」。つまり一線を超えてしまうと二人ともクビに。
この「業務上キスをするけど恋愛しちゃいけない」という寸止め感が面白い。
男性が寸止めを喰らう作品は数多くありますが、女性側がその立場になる、という設定が「犬神姫にくちづけ」のユニークなポイントです。
迫力のオカルト・アクション
イチャイチャするだけがこの漫画の特徴ではありません。特処課・タマバハキの面々の活躍にも注目。
発火能力者・発明オタクの陰陽師・巨漢の法力僧・妖刀使い・英国生まれのエクソシストなど、実力派ぞろいの不良社員たち。
それぞれの持ち味を活かして敵に立ち向かう姿がカッコイイ。アクション漫画としてもバツグンの魅力があります。
その中の一人・発火能力者である御子神(みこがみ)はかずらに惚れている様子。
犬養にベタ惚れなかずらと、彼女を振り向かせたい御子神。そして一見かずらに気のないフリ?の犬養。三人の社内三角関係も?
そして感動の大団円
そんなアクション・ラブコメも、終盤になるとシリアス風味が増してきます。
かずらに憑依する犬神・弁天号と、姉妹犬である吉祥天号。明かされる犬神たちの過去。
また犬神を代々育ててきた家系で育った犬養。巫女を依巫(よりまし)とする犬神使いの本質ゆえ、あえてパートナーを「巫女」としてしか見ないようにしてきた彼。
しかし徐々にかずらへの気持ちに変化が…?
そしてラッキー清掃本社地下に封印されている「鬼穴(きけつ)」に異変が起こり、せまる決断の時!
全6巻を通して徐々に迫真の展開となっていく本作。
最終巻で描かれるタマバハキたちの死闘、そして犬養・かずら・弁天号たちの運命。
感動のラストに思わずホロリ…。
まとめ
というわけで漫画「犬神姫にくちづけ」。
生々しいキスシーンの数々、最初はホントに読んでいて気恥ずかしさも感じるのですが(笑)、終盤の迫力ある展開に釘付け、そして満足の読後感を与えてくれる全6巻です。
しかし作者の宮田紘次さんは、本記事作成の2年前である2015年の10月22日、ご病気のために34歳という年齢で早すぎる旅立ちをされました。
「犬神姫のくちづけ」最終巻の発売が2015年9月。これからもっともっと、楽しい作品を届けてくれるだろうと期待していた一ファンとして、大変ショックな出来事でした。
新作が読めなくなってしまったのは残念ですが、宮田さんは「犬神姫にくちづけ」以外にも楽しい作品を遺してくれました。
個人的には宮田さんのファンタジックな魅力が詰まった短編集、「ききみみ図鑑」と「うたたね姫」がオススメです。
まだ宮田さんの作品を読んだことの無い方は、ぜひその漫画の楽しさに触れてみてください。
楽しい漫画作品を遺してくれた宮田紘次さんに感謝するとともに、あらためてご冥福をお祈りします。
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