「このかけがえのない地獄」―心にさざなみが立つような5つの短編

ネットで話題となった「このかけがえのない地獄」。

なんともインパクトのあるタイトルと、カバーのかわいいメガネ女子が印象的な、全5編を収録した短編漫画集です。

作者の「アッチあい」さんは、「オゲハ」作者であるoimoさんの別名義だそうな。

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「このかけがえのない地獄」レビュー

短編集「このかけがえのない地獄」に収録されているのは、以下の5編。

  • このかけがえのない地獄
  • 死んでいる君
  • 4番目のヒロイン
  • 黙れニート
  • 僕は彼女の彼女

各話の最後には、作者であるアッチあいさん自身による1P解説つき。

なお、ねとらぼアンサーさんによる、アッチあいさんのインタビューが公開中。本作収録の「黙れニート」も、まるまる試し読みできます。

「編集の赤字は無視」「OKが出た後に内容を変える」 型破りすぎるマンガ『このかけがえのない地獄』の作り方 (1/3)
作者のアッチあいとは何者なのか。その一端が分かる!?

さて、「このかけがえのない地獄」。絵もうまく、話の運びもスムーズで読みやすい。それでいて各話ちょっとひねりが入っている、というのが特徴。

登場人物たちも微妙にズレているというかねじれているというか。

さらりと読めて、でもどの話も読後に何かひっかかりを憶える、そんな「味」を持っています。

アッチあい「このかけがえのない地獄」
[アッチあい 著 KADOKAWA / アスキー・メディアワークス「このかけがえのない地獄」より引用]

個人的に一番おもしろかったのは、「4番目のヒロイン」。

主人公は、漫画週刊誌に掲載されている人気ラブコメ漫画の「3番目のヒロイン」。

モテモテの男子(作中の主人公)に、最終回までに見初められたらいいな、と考えているサブヒロインの一人です。

そこに転校してきたのは、あきらかに他の登場人物と雰囲気の異なる「4番目のヒロイン」。

実は彼女は戦争漫画の新キャラで、なぜか同じ雑誌のラブコメ漫画に登場してしまった、という存在。

アッチあい「このかけがえのない地獄」
[アッチあい 著 KADOKAWA / アスキー・メディアワークス「このかけがえのない地獄」より引用]

ハーレム漫画の中でラブコメのお約束をぶち破る、異質な存在「4番目のヒロイン」。

彼女の行動が、やがて3番目のヒロインの心にさざなみを起こし…?というお話。

漫画世界をメタった漫画、という図式がめっちゃ印象的な一作。

読みながら「これは3番目のヒロインが戦争漫画の世界に引きずり込まれてエライ目に会うのでは?」なんて想像していましたが、まったく違いました(笑)。

取りようによってはハーレム系ラブコメ漫画に対する絶大な皮肉、とも思えるラスト。そう来たか、と思わずニヤリw。

その他、表題作「このかけがえのない地獄」もおもしろい。

魔法少女に憧れてコスプレをする女子高生と、彼女の友人、その友人が片思いする男子。三人の高校生を軸に描かれるドラマ。

コスプレをして、夜中の公園で一人魔女っ子を演じる主人公に痛々しさを感じつつも、三人の人物に起こる出来事が少しずつ繋がっていき、ラストで結実。

どの短編も、読み終わると何か心にざわめきを植え付けられたような、モヤモヤとも不安ともつかない「さざなみ」を起こされる感じ。

もっともっと、アッチあいさん作の短編を読んでみたい、と思わされた漫画です。

このかけがえのない地獄【電子限定特典付き】 (電撃コミックスNEXT)著者:アッチあい出版社:KADOKAWA / アスキー・メディアワークス発行日:2018-03-10

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