漫画『このかけがえのない地獄』―心にさざ波が立つ短編集

魔法少女になりきって、夜の公園でコスプレをするメガネ女子高生。彼女が起こした奇跡とは…?

アッチあいさんの『このかけがえのない地獄』。なんともインパクトのあるタイトルと、カバーのかわいいメガネ女子が印象的な、全5編収録の短編漫画集です。

『このかけがえのない地獄』感想・レビュー

概要

短編集『このかけがえのない地獄』には、以下の5編を収録。

  • このかけがえのない地獄
  • 死んでいる君
  • 4番目のヒロイン
  • 黙れニート
  • 僕は彼女の彼女

表題作『このかけがえのない地獄』は描き下ろし、他の4編は別冊少年チャンピオン・週刊少年サンデーS増刊・FEEL YOUNGなど、多彩な媒体で発表された作品です(単行本の刊行はKADOKAWAより)。

各話の最後には、作者・アッチあいさん自身による、1P解説が掲載されています。

なお「アッチあい」は、『オゲハ』作者であるoimoさんの別名義。本作以降は「アッチあい」名義を中心に活動されているようです。

読後に残るモヤモヤ

短編漫画集『このかけがえのない地獄』、くっきりした線で描かれる美少女たちの、吸い込まれるような目の輝きが印象的。絵の上手さが光ります。

話の運びもスムーズで、さらりと読み終える各短編。が、彼女たちが心の中に持つ微妙なズレ・ねじれが、心にひっかかるものを残していく。そんな「味」を持っています。

表題作『このかけがえのない地獄』は、魔法少女に憧れてコスプレをする女子高生と、彼女の友人、その友人が片思いする男子。三人の高校生を軸に描かれるドラマ。

夜中の公園で一人魔女っ子を演じるメガネの女子高生。その様子に痛々しさを感じながらも、三人に起こる出来事が少しずつ繋がっていき、ラストでは「奇跡」が…?

決してスッキリはしないんだけど、いい感じのモヤモヤが残る終盤。その余韻が尾を引きます。

メタ漫画『4番目のヒロイン』が面白い

そんな本作の中で個人的に一番面白かったのが、『4番目のヒロイン』。

主人公は、連載中の人気ラブコメ漫画内で、モテモテの主人公男子に「最終回までに見初められたらいいな」との気持ちを抱く「3番目のヒロイン」

そのラブコメ漫画に、「戦争漫画の新キャラ」である「4番目のヒロイン」がなぜか転入。

ハーレム漫画の中で、ラブコメのお約束をぶち破っていく彼女の行動が、やがて「3番目のヒロイン」の心にさざなみを起こし…?という短編。

読みながら「これは3番目のヒロインが戦争漫画の世界に引きずり込まれて、エライ目に会うのでは?」なんて想像していましたが、まったく違いました(笑)。

取りようによっては、ハーレム系ラブコメ漫画に対する絶大な皮肉、とも思えるラストと、「漫画世界をメタった漫画」という図式に、思わずニヤリとしてしまいます。

『このかけがえのない地獄』まとめ

以上、アッチあいさんの漫画『このかけがえのない地獄』の感想・レビューでした。

どの作品も読み終わると、モヤモヤとも不安ともつかない「さざなみ」を起こされる感じ。アッチあいさんの他の漫画も読んでみたい、と思わされる短編集です。

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