元警察官の父を殺した犯人が捕まった。しかし父の残した手紙には、犯人の「冤罪」を示唆する内容が…?
一風変わったタイトルですが、本格的なミステリー・サスペンス漫画。浅見理都(あさみりと)さんの漫画『クジャクのダンス、誰が見た?』レビューです。
連載は講談社の女性漫画雑誌「Kiss」で、2024年11月現在、単行本1~6巻が刊行中。2025年1月放送のTVドラマ原作です。以下『クジャクのダンス、誰が見た?』の主なあらすじや見どころなどを、基本ネタバレなしでご紹介します。
『クジャクのダンス、誰が見た?』あらすじ
山下心麦(21歳)は、警察を定年退職した父・春生と二人暮らし。しかし心麦が不在の間に自宅が放火、父を殺されてしまう。
犯人・遠藤は、約20年前に6人を猟奇的な手口で殺害、死刑囚となった男のひとり息子で、事件に関わった春生を「逆恨み」しての犯行と見なされた。
だが心麦は葬儀の後、「春生が自分が殺されることを想定して書いた手紙」を発見。
そこには記載の「6人」が逮捕された場合、それは「冤罪」であり、「犯人の弁護」を指定した弁護士に依頼して欲しい、との旨が記されていた。
「6人」の中には果たして遠藤の名前が。手がかりを求め、手紙に記されていた弁護士・松風を尋ねる小麦。だが当の松風は手紙の内容に心当たりが無い。
果たして遠藤は冤罪なのか?真犯人は別にいるのか?そして父の真意は何なのか…?
『クジャクのダンス、誰が見た?』レビュー
多くの謎が横たわるサスペンス・ドラマ
たったひとりの肉親を失い、息つく間もなく「父の死にまつわる謎」に巻き込まれていく小麦。
内容に不信感を抱き一度は断るも、小麦の真摯な気持ちを受け入れ、依頼を引き受ける松風。
「父を殺した犯人の弁護をする」という奇妙な契約のもと、協力関係となった二人を中心に、サスペンス感あふれるドラマが『クジャクのダンス、誰が見た?』で展開されていきます。
その小麦と松風の前に横たわるのは、多くの「謎」。
なぜ父・春生は殺されたのか?
なぜ殺されることを予見していたのか?
手紙になぜ松風の名を記したのか?
遠藤は犯人では無いのか?
では「真犯人」は誰なのか?
そして20年前の猟奇的殺人事件との繋がりは…?
そんな数々の謎に、心麦と松風の繋がりが「ゆるやかな変化」を起こしていくのですが、心麦の周辺にはやや不穏な空気が漂い、胸の悪くなるような出来事も。
物語が進み、新たな事実が判明していくたびに、また「闇」が深まっていく。先の読めないイヤ~な雰囲気に、ドキドキと面白みを感じます。
リアルな社会派要素も読み応えあり
一方、物語の進行とともに徐々に明らかになる、「20年前の事件」の真実。
とある住宅街で起こった、凄惨にして猟奇的な一家殺害事件。遠藤の父・力郎の逮捕、そして死刑判決で事件は終結。
…しかしその裏では、「加害者の息子」として壮絶な半生を送る遠藤の姿が。また力郎の有罪にも疑義が…?
浅見理都さんは、裁判官を主役に据えたリーガル・ドラマ『イチケイのカラス』の作者。本作『クジャクのダンス、誰が見た?』でも、そんな「冤罪」「加害者家族」といった社会派の要素にスポットが。
また国際法律事務所による「法律監修」ほか、多数のドラマ・映画を監修する「チーム五社」所属・志保澤利一郎氏の「警察監修」も受けていて、リアリティ抜群。
それが「事件の闇」を深めるとともに、エンタメとリアルを良い感じで融合。現実味のあるクライム・サスペンスとなっています。
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意味深なタイトルの意味するものは?
そして気になるのは、やはり『クジャクのダンス、誰が見た?(英題:Who saw the peacock dance in the jungle?)』という意味深なタイトル。
これはかつてイジメにあった心麦を、春生が励ますために伝えた言葉。
ニュアンスとしては「本当のことを知っているのは、本人だけ」「嘘をついても、事実からは逃れられない」というもの。
それは自分が殺されるかもしれない、と感じていた春生の「秘密」を示唆するものなのですが、同時に心麦の「真実を求める行動」の指針ともなっていきます。
闇深き「ジャングル」の中で、真実を求めていく心麦と松風。果たして二人は、「クジャクのダンス」にたどり着けるのか…?
レビューまとめ
以上、浅見理都さんの漫画『クジャクのダンス、誰が見た?』のネタバレなしレビューでした。
リアルな要素が落ち着いた絵柄・物語運びと相まって、雰囲気のあるミステリー・サスペンス。ぜひネタバレ無しで楽しんでいただきたいところ。
真実の解明に向かっていく主人公コンビとともに、先の見えない暗闇に足を踏み入れてみてください。
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