死んだ恋人が忘れられぬまま大人になった男は、死臭を漂わせるAV女優に出会い、その心を揺り動かされていく―。
葉月京さんの漫画『去る者は日々に疎し』(協力:折笠りょこさん)。死の匂いを嗅ぎ分けられる男と訳ありAV女優の出会いから始まる、ちょっとセクシーな恋愛ドラマです。
連載は秋田書店ヤングチャンピオンで、2024年2月現在、単行本1~7巻が刊行中。以下『去る者は日々に疎し』が気になる方向けに、主なあらすじや見どころなどを基本ネタバレなしでご紹介します。
『去る者は日々に疎し』あらすじ
死が近づいている人間が発する「甘ったるい匂い」を嗅ぎ分けられる、仏具店勤務の会社員・弓削命(ゆげみこと)。
しかし高校時代の彼女・希望(のぞみ)を救えなかったことを悔い、同名女優が出ているAVを見ることでしか「生」を実感できない彼。
「ただ生きているだけ」の悶々とした日々を過ごす。
ある日仕事で立ち寄った墓地で、「甘い匂い」を漂わせる女性とすれ違う命は、彼女の持つペットボトルを思わずはたき落とす。
驚く表情を見せた女性は、お世話になっているAV女優・妻夫木希望(つまぶきのぞみ)本人だった…!
『去る者は日々に疎し』レビュー
オカルト風味を持つ主人公たち
墓地での出会いの後、縁あって再会した命と希望。不思議な交流を続けていく二人の様子が、漫画『去る者は日々に疎し』で描かれていきます。
実は命は「死の匂いを嗅ぐと性欲が高まる」体質で、希望との触れ合いでは思わず気持ち(とアソコ)が高まったりして…?
生きがいの無い人生を送る彼が「生」を感じ、その人生に変化を見せていくように。
一方、セクシー女優としてAV業界で生きる希望。一見気ままに生きているようで、心の奥底には他人には窺いしれない大きな澱みが。
徐々にその背景が明らかになるのですが、それがなかなかヘビーな内容。
また希望は命の背後に「何かが見えている」ようで、それが彼の心を徐々に揺り動かすことに…?
性質は違えどオカルトな能力を持つ二人。その関係性を深めていく様子に、不思議なドキドキが。
「生と性」「生と死」のコントラストが面白い
「仏具店社員とAV女優」が不思議な出会いを果たし、なんとな~く良い感じの雰囲気でスムーズに交流が…
とは行かないのが『去る者は日々に疎し』。ヒロインがセクシー女優ということで、業界ならではの「闇」を垣間見せていくストーリーが展開。
その元凶となるのは、希望の後見人である関西弁の怪しげなオバちゃん。
かつてよんどころない事情から家を出た希望は、彼女に拾われ女優となったのですが、このオバちゃんがクセの強い人物で…!
普通の恋愛ドラマよりもやや重たいストーリーなのですが、その中で描かれる主人公ふたりの「生と性」「生と死」のコントラストが非常に印象的。
他の恋愛漫画には無い緊張感、ミステリアスな雰囲気が、独特の面白さを演出。続きが気になる…!
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セクシー描写が良いドロドロ感を演出
ちなみに作者の葉月京さんは、『恋愛ジャンキー』のようなセクシー系の作品が多い漫画家さん。
本作はセクシー描写がメインの漫画ではありませんが、物語冒頭からハードなXXXXがあったりして、いい意味でビックリ(笑)。
また劇中で希望の撮影シーンも随所に挿入されるのですが、これが18禁作品に負けず劣らず本格的でこれまたビックリ。流石ヤングチャンピオン(笑)。
いや真面目な話、非常に洗練された描写で、物語の見どころの一つとなっています。
このセクシー要素が命と希望の交流、さらには物語全体に良い感じの「ドロドロ」を付加。
惚れた腫れただけではない重量感のある恋愛ドラマ、クセになるほど引き込まれる…!
レビューまとめ
以上、葉月京さんの漫画『去る者は日々に疎し』のネタバレなしレビューでした。
18禁ではないセクシー系の漫画は数多くありますが、本作は「恋愛ドラマ」「セクシー描写」「オカルト要素」が奇跡的に絡み合っていて、他の作品には無い面白み・深みを感じます。
セックス描写が一般作品よりは激しめなので、読む人を選ぶかもしれませんが、ハマればとことんハマる!物語。
さて、今後苦難の予想される主人公ふたりの道は、どこに繋がっていくのか?今後の盛り上がりに増々期待が高まります。
なお『去る者は日々に疎し』は、1巻と同時刊行の漫画『若気の至りまくり、夏。』と連動。
こちらの主人公・虹渡(にじと)が勤める葬儀社は、命が勤務する仏具店の隣にある関連会社、という設定。ほか、一部キャラクターの設定にも関係があります。
ひと夏のアバンチュールで、爆乳お姉さんと関係を持った虹渡。
しかしのちに葬儀で再会したお姉さんは実は人妻で、ドSな夫に虐げられていて?というエッチなドラマ。命も1巻後半でゲスト出演します。
『若気の至りまくり、夏。』を未読でも『去る者は日々に疎し』の理解に問題はありませんが、読んでおくと世界観がより広がること請け合い。今後のリンク加減も楽しみです。
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