「白い街の夜たち」―女性たちの成長とあふれるトルコ感が魅力の全3巻

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親日の国としてよくその名を耳にするトルコ。トルコアイスやドネルケバブ、サバサンドといったトルコ発の食文化も、今やすっかりお馴染みとなりましたね。

でも改めて「じゃあトルコの特徴って何?」と聞かれると、ちょっと詰まってしまいます。大統領の権限などに関する政治的なニュースも耳にしますが、その文化的な側面についてはあまり知らなかったり…。

そんな近いようで遠い国・トルコの魅力をあますことなく楽しめるのが、市川ラクさんの漫画「白い街の夜たち」。月刊コミックビームに2013年から2015年まで連載。全三巻で完結済みです。

「白い街の夜たち」レビュー

あらすじ

服飾系の専門学校に通う文子(あやこ)はふとしたきっかけで、新宿のトルコ料理店「アクシェヒル」でバイトをすることに。ちょっといい加減だが人の良いトルコ人オーナーのホジャさん、従業員兼ベリーダンサーのざくろに教えられながら、トルコ文化に親しんでいく。

しかし、かつて友人を苦しみから救うことができなかった事を悔いている文子。現在の同級生とも距離を縮めらず、自分の優柔不断さに悩む毎日。意中の彼の気持ちも掴めずに、自分に自信が持てない。

そんな文子は「アクシェヒル」で働き、またホジャさんの妻クミコや娘ユリらトルコ圏の人々と触れ合ううちに、これまで知らなかったトルコやイスラムの考え方に触れ、自分の進むべき道を見つけ出していく。

白い街の夜たち 1 (ビームコミックス)市川 ラク:KADOKAWA

異国「トルコ」の空気感

「白い街の夜たち」という、ちょっと文学的なタイトルの漫画。作者の市川ラクさんのペンネーム「ラク」は、トルコのお酒から来ているそう。なるほど、作品全体からトルコ大好きな匂いが漂ってきます。

作品の主な舞台はトルコ料理店。というわけで、まず惹きつけられるのはホジャさんのお店「アクシェヒル」で提供されるトルコ料理の数々。トルコ風水ギョーザ「マントゥ」に始まり、エキメッキ(パン。トルコ人の主食)、ナスのカルヌヤルク(肉詰め料理)、ムサカ(≒ラザニア)などなど。

「世界三大料理」の一つと言われ、多くの料理の原型ともなったトルコ料理が、実に美味しそう。そんな料理によだれを垂らしていると、ざくろのベリーダンスが開始。大胆な衣装に身を包み、妖艶に、しなやかに、その身を揺らして踊るざくろ。今にも音楽が聞こえてきそうなその空気に、異国「トルコ」を感じます。「白い街の夜たち」に漂うこの雰囲気が素敵。

女性たち、それぞれの生きざま

そんなトルコの空気に囲まれて、人と触れ合い、時に失敗しながら、主人公・文子が自分の生きる道を見つけていく様子が、作中で描かれていきます。

服飾の専門学校で何かと突っかかってくる同級生。故郷の友人で登校拒否から自殺未遂を起こした、コミュニケーションを取りづらい友人。そして文子に気がある素振りを見せながら、もう一つ煮え切らない男子…。

結構ドロドロ(笑)したりもしてる、文子の周囲。その鍵となるのは、文子が友人からもらったトルコのアクセサリー「ナザル・ボンジュウ」(1巻表紙で文子の首に掛けられているもの)。

「嫉妬から守ってくれる」というそのお守り。割れる時は「呪いを跳ね返した時」と言われているそうですが、ナザル・ボンジュウが割れる時、文子がどのように成長しているのか?というのが物語の大きな見どころです。

また文子だけではなく、彼女と対象的なダンサー・ざくろも、ある意味もうひとりの主人公と言える存在。文子と違ってくっきりはっきりな性格を持つ彼女は、ベリーダンスの高みを目指すという目標が。しかし厳格な宗教観を持つトルコ人男性からの蔑視など、悩みもある世界。その中で彼女が向かう道は…?

文子・ざくろだけではなく、劇中では他にも女性たちの生き様が描かれ、それが「白い街の夜たち」のおもしろみの一つとなっています。

興味深いトルコ文化

そんなキャラクターたちの成長とともに、物語全体をフワッと包む「トルコ感」が、他の漫画には無い「白い街の夜たち」独特の大きな魅力。そしてアクシェヒルで働きトルコ文化に親しんでいく文子と一体となって、読者もトルコやイスラムの事をより深く知ることに。

先述のトルコ料理に始まり、ナザル・ボンジュウに代表される「魔除け」の考え、ベリーダンスの歴史、水タバコなど、作中に織り込まれるトルコ文化の知識が大変興味深く、面白い。

やがて文子はモスク(※東京ほか、各地域にあるそう)を訪れ、トルコ人男性からより深いイスラムの教えを教わることに。この時に男性は「(イスラム教に対して)マイナスイメージと上っ面しか知られていない」と嘆くのですが、仰っしゃるとおり、と言わざるを得ない内容が。

ここでそれを要約して誤解を招くといけないので、詳しい内容はぜひ本書で触れてみてください。トルコという国、そしてイスラムという宗教・文化に対する見方が、かなりアップデートされるのでは。漫画を読みながら異なる文化圏のことを理解していく、という良い読書体験ができるのも、「白い街の夜たち」ならでは。

まとめ

以上、市川ラクさんの漫画「白い街の夜たち」全3巻のレビューでした。女性たちの成長を読みながら、トルコにより深く触れていく、独特の漫画体験をさせてくれる作品です。

なお作者がトルコ好きであることは漫画からビンビン伝わってくるのですが、市川ラクさんは2015年より実際にトルコに移住。トルコに関する作品を発表されています。

わたし今、トルコです。 (ビームコミックス)市川 ラク:KADOKAWA

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