石黒正数さんの『それでも町は廻っている』、通称『それ町』。独特な感性の愉快な女子高生を中心に、町で起こる様々な出来事を描く日常系コメディ…
…と油断していると、時折ぶっ込まれるSF・ミステリー・オカルトなど多彩な題材、そしてトリッキーな構成に引きずり込まれる!予想外の深みと面白みを持つ漫画です。
連載は少年画報社の漫画雑誌「ヤングキングアワーズ」で、全16巻完結済み。以下『それでも町は廻っている』が気になる方向けに、主なあらすじや見どころなどを基本ネタバレなしでご紹介します。
『それでも町は廻っている』あらすじ
『それでも町は廻っている』は、女子高生・嵐山歩鳥(あらしやま・ほとり)を主人公とする、基本一話完結形式の漫画。
幼馴染の男子・真田、同級生のメガネ女子タッツン、金髪美人の紺先輩ら個性豊かなキャラクターとともに、町内・学校が舞台の「笑いにあふれたゆるやかな日々」が描かれます。
しかし単なる「日常系コメディ」にとどまらず、バラエティ豊かなエピソードが唐突に展開されるのが、予想外過ぎる面白味を与えてくれます。
なお歩鳥がメイド服を着ている理由は、馴染みの婆ちゃんが営む「喫茶シーサイド」がメイドカフェに転身(笑)したのをきっかけに、そこでバイトをするようになったから。
『それでも町は廻っている』レビュー
鋭い観察眼が生み出す「笑い」と「共感」
ミステリー好きで探偵に憧れ、時に「メイド探偵」を名乗る、ちょっと天然ボケな主人公・歩鳥。
そのツッコミどころあふれるユニークな行動と、それに巻き込まれる周囲のドタバタがシンプルに面白い!ゆるやか~な笑いが魅力のコメディ漫画です。
しかし!ふいに「サスペンス・ミステリー風味、オカルト・ホラー、SF、ファンタジーなど多彩なジャンルのストーリー」、そして「異彩を放つ中編的エピソード」が織り込まれてくるのが、『それ町』の醍醐味。
作者・石黒正数さんの鋭い観察眼が反映されたそれらのストーリーは、日常系コメディの枠にはまらない意外な読み応えで、飽きない面白さがあります。
予想外すぎる伏線の回収
また区切りが付いていたと思っていたエピソードが実は伏線で、その回収が後半の巻で意外な形で登場したりもするのが、『それでも町は廻っている』の気の抜けないところ。
その中でも印象的なエピソードが、1巻第4話の『目』。歩鳥の担任・森秋先生の祖父が描いた、不気味な絵にまつわる謎が明かされます。
このエピソードはこの1話で完結…思いきや、14巻第113話『赤』、そして最終16巻の第126話『悪』へと、意外な繋がりを見せることに。
これは読んでいて、「ここで1巻の話を持ってくるのか!」と素直に驚きが。マンネリを感じさせないビックリ展開と、物語に散りばめられた伏線の回収も、『それでも町は廻っている』ならではの面白さです。
なおこのエピソードはなかなか味わい深い結末(ちょっと怖い?)を見せるのですが、それはぜひ単行本でお楽しみください。
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トリッキーな構成がスゴイ
そんな『それ町』、各エピソードの面白さだけではなく、全16巻を通してのお楽しみが。
物語では主に歩鳥の高校生活が描かれるのですが、読んでいると彼女の髪型が唐突に変わったり、元に戻っていたりすることに気づきます。
それは「エピソードの時系列が前後している」ことを意味するのですが、そんな「歩鳥の変化」を念頭に全16巻を読み返すと「あの話がここに繋がっていたのか!」と新たな発見が。
作者・石黒正数さんの巧みな物語構成と、それが生み出すパズル的な面白みに、意外な読後感と他の漫画には無い独特の満足感があります。
なお正しい時系列は『それでも町は廻っている 公式ガイドブック廻覧板』にて確認できます。それにしてもトリッキーなその構成がスゴイ!
レビューまとめ
以上、石黒正数さんの『それでも町は廻っている』、通称『それ町』全16巻のネタバレなしレビューでした。
単なるコメディにとどまらず、SF・オカルト・ミステリー風味などの多彩な面白さ、そして読み終わったあとの「お楽しみ」もある作品。
また主人公・歩鳥だけでなく、その良き友人である紺先輩・タッツンらとの交流も、大きな見どころ。彼女らの友情が最終16巻で結実する様には、静かな感動があります。
笑いながらサラッと読んで、忘れた頃にもう一度読み返すと止まらなくなる、絶妙に面白い名作コメディ漫画です。
なお石黒正数さんは現在、講談社アフタヌーン誌において、サスペンス風味あふれるポストアポカリプスなSF漫画『天国大魔境』を連載中。
巻を重ねて伏線の回収が加速中!盛り上がりを見せています。面白いのでこちらもチェックしてみてください。
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