「文明崩壊後の日本」と「外界と隔絶された学園」。並行して描かれる2つの世界が徐々に接近、そして交わる時、真実の扉が開かれるー。
ポストアポカリプスな世界観のもとで展開される、ダーク&シリアスなSF冒険漫画。石黒正数さんの『天国大魔境』感想・レビューです。
連載は講談社「月刊アフタヌーン」で、2024年11月現在、単行本1~11巻が刊行中。現在伏線回収中で、めちゃくちゃ盛り上がってきました!以下『天国大魔境』の主なあらすじや見どころなどをご紹介します。
『天国大魔境』あらすじ
『魔境編』あらすじ
『天国大魔境』では「2つの物語」が交互に展開。その一つが、謎の大災害により文明が崩壊した日本を描く『魔境編』。
「自分と似た顔」の人物に「薬」を届けることを目的に、どこにあるかわからない「天国」を探す少年・マル(3巻カバー・右)。彼に雇われて、そのボディーガードをする女性・キルコ(同・左)。二人の冒険が描かれます。
しかし見渡す限り、瓦礫の山となった世界。移動手段も通信手段も無く、原始に戻ったかのような不自由な環境で、わずかな手がかりしかない「天国」探しは難航。
オマケに「人食い=ヒルコ」と呼ばれる不死の化け物も出現し、常に命の危険が…?
『天国編』あらすじ
その『魔境編』とは一変、外界とは隔絶された学園施設での生活が描かれる『天国編』。
先進的な科学力にサポートされた環境の中で、教師らしき大人たちやロボットにより教育され、健やかに成長していくトキオ(2巻表紙・中央)らの日常が綴られます。
一見「普通」に見える子どもたち。しかし「異常な身体能力」「吸着性のある手足」「見えないものが見える」など、それぞれに超人的とも言える特殊能力が。また怪しい学園長始め、施設の全貌も謎だらけで…。
『魔境編』とは対照的な雰囲気ながら、どこか奇妙な『天国編』。平和で豊かな生活と、対象的に不気味なその「裏側」が、不穏な未来への予感を掻き立てます。
『天国大魔境』感想・レビュー
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謎が謎を呼ぶSFサスペンス
不死の人食いモンスター「ヒルコ」が徘徊する、文明崩壊後の世界『魔境編』。
高度で豊かな生活を背景としながら、不気味な空気が漂う学園『天国編』。
一見無関係な2つの世界には、
- なぜ大災害が起こり、文明が崩壊してしまったのか?
- マルとキルコが目指す「天国」とは何なのか?学園との関連性は?
- 人食い「ヒルコ」が出現した理由とその正体は?
- なぜ学園の子どもたちは特殊な力を持っているのか?
など、多くの謎が横たわっています。
また別々の世界にいるマルとトキオは、なぜか外見が酷似。果たしてマルが薬を渡すべき人物はトキオなのか?そして謎の学園が「天国」なのか…?
他にも「学園の子どもが描くイラストが『魔境編』に出現するヒルコに似ている」など、奇妙な一致を見せる2つの世界。
物語の進行とともに、さらに多くの謎が浮かび上がり、その距離が徐々に近づいていく…。
ポストアポカリプス的SF世界の冒険は、全編にダーク&サスペンス感があふれていて、恐ろしくも興味深い展開の連続。
読めば読むほど「謎」に引きずり込まれていく…!
「伏線の回収」と「謎の連鎖」が面白い!
そんな謎多きストーリーを持つ『天国大魔境』。実際に読んでみると序盤(1~4巻ぐらい)はなかなか全体像が見えず、ややもどかしくも思ったり。
ですが巻を重ねるにつれ、これまで『魔境編』と『天国編』で「点」だった事象が、徐々につながりを見せ、別々の「線」だった二編がリンクしていく。
この伏線回収の過程がものすごく面白い!
ネタバレになるので詳しくは触れませんが、「あ、あの出来事や人物が、ここに繋がっていたのか…!」のような、驚きの連続があります。
作者の石黒正数さんは、前作『それでも町は廻っている』全16巻でも随所に「仕掛け」を施し、それが物語の面白みとなっています。
本作でもその手腕は健在。絶妙な「伏線の張り巡らし方」と「回収」が絶品!です。
物語の全体像を掴みかけたと思ったら、巧みな構成から生み出され連鎖する「謎」に、また新たなドキドキが…!
新刊が出るたびにまた1巻に戻ってページをめくってしまう、そんな読み込み要素が面白すぎる!SF冒険漫画です。
レビューまとめ
以上、石黒正数さんの『天国大魔境』感想・レビューでした。
本作は1巻が出た段階で「このマンガがすごい!2019」のオトコ編1位に選ばれているのですが、当時は正直「まだ評価するには早いのでは?」と思っていました。
ですが現在の『天国大魔境』は、間違いなく「スゴイ」。
実績を活かしてじっくり練り上げてきた物語が今!花開き、さらに加速していくような面白さがあります。
キルコ・マル、そしてトキオの運命は果たしてどうなるのか。続きが気になりすぎる漫画です。
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