神への生贄だった少女は、不思議な行者とその従者に導かれ、神々を巡る旅への一歩を踏み出す―。
鶴渕けんじさんの『峠鬼(とうげおに)』。人間の身近に神々がいた頃の日本を舞台に、行者・役小角(えんのおづの)と弟子たちの道行きを、SF風味を混じえながら描く和風ファンタジー漫画です。
連載はKADOKAWAのハルタ誌で、コミックス1~7巻が刊行中(2024年9月現在)。以下『峠鬼』の主なあらすじや見どころをご紹介します。
『峠鬼』あらすじ
ずらりと並ぶ大山・小山が成す谷を埋めるように、「倭の国」があった頃。大小の御山は神様の国であり、世のすべては神様の思し召し次第と信じられていた。
その倭の村の一つで、齢12にしてある年の生贄に選ばれた、みなしごの妙(みよ)。運命を受け入れ淡々とした生活を送るが、その前に高名な行者・役小角とその弟子たち前鬼・後鬼が現れる。
人々から慕われるも、どこか胡散臭い彼らを信用できない妙。だが弟子の女性・後鬼と親しくなり、生贄となることへの恐怖を吐露、涙を流す。
そして神に捧げられる日。社へ出向いた妙は、役小角の不思議な力で「神の世界」へ誘われることに。そこで人知を超えた驚愕の体験をする…!
『峠鬼』感想・レビュー
完成度の高い第一話が面白い!
神への捧げ物である少女・妙と、行者・役小角一行との出会いが描かれる『峠鬼』第一話。もともとはハルタ誌の特別小冊子「青騎士」に掲載された作品ですが、そこで注目を集め連載へと繋がったそう。
そんな経緯を持つだけあって、この第一話の完成度がものすごく高い!
後に師となる小角と、その従者である少年・前鬼(善)との出会い。不思議な力を発揮する「神器」と、それを持つ巨大な神の存在感。そして仮面の美女・後鬼のミステリアスな振る舞い…。
それらが絡み合い、少女の運命を変え、そして新たな旅の一歩となっていく。そんなファンタジー・ストーリーが圧倒的に面白い!60Pを超えるボリュームと相まって、大きな満足感を与えてくれます。
なお第一話は電子書籍の試し読みで最後まで読めます。一話完結の物語としてシンプルに面白いのでオススメ。ぜひ『峠鬼』の世界に触れてみてください。
神々と神器を巡る摩訶不思議な冒険
もちろん第二話以降も面白い『峠鬼』。役小角・善・新たに弟子となった妙の、ファンタジックな冒険が紡がれていきます。その見どころは、行く先々で出会う土着の神々と神の持つ神器に関わる、摩訶不思議な出来事。
モンスター的な外見と圧倒的な威圧感を持つ神々。彼らが持つ「神器」には強大過ぎる力があるのですが、それ故に人間たちに大きな影響を及ぼすことも。
神々のもとを訪ね歩くたび、姿形を変えられたり、異空間に飛ばされたり、時に時間を飛び越えたりも。スケールの大きすぎる神器絡みのトラブルには、得も言われぬ迫力あり。
また鶴渕けんじさんの卓越した画力と、センス良く絡められたSF風味が、ほかのファンタジー漫画とは一線を画す面白さを演出。ハイレベルなSFファンタジーを楽しめます。
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役小角一行、その旅の目的は?
そんな役小角一行の目的は、彼の仕える神・一言主(コト様)に再び会うこと。
巨大な龍の姿を持つコト様。変化して女性の姿にもなり、それは幼き日の役小角が淡い恋心を抱く(ひょっとして今も?)ほどの美しさ。
人々の願いを叶える不思議な力を持つ神ですが、しかし現在はその身に何やら問題を抱えているよう。役小角や弟子・善との関わりを持つ彼女に、果たして何が起こったのか…?
また巻が進むにつれ徐々に詳細が顕になると共に、「小角自身の秘密」も絡んできて、さて妙たちの目的は成就するのか。不思議な旅の終着地点が気になるところです。
感想・レビューまとめ
以上、鶴渕けんじさんの『峠鬼』の感想・レビューでした。
絵・物語ともバツグンのクオリティを持つ作品。一度その物語に触れたならば、古き日本の世界に一気に引き込まれる!読み応えのある和風SFファンタジー漫画です。
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