「機動戦士ガンダムF91プリクエル」―コスモ・バビロニア建国戦争開戦前を描くF91前日譚

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今も根強い人気を持つ映画「機動戦士ガンダムF91」。クロスボーン・バンガードと地球連邦軍間における「コスモ・バビロニア建国戦争」と、その闘いに巻き込まれていく少年少女たちが描かれていきます。

その「コスモ・バビロニア建国戦争」の開戦前、F91世界の各所で起こった出来事を綴っていくのが、おおのじゅんじさんの「機動戦士ガンダムF91プリクエル」。記事作成現在、1巻が刊行されています。

これが非常にクオリティの高いガンダム漫画。いや、ガンダム漫画の枠に留まらない、魅力的なSF作品となっています。

「機動戦士ガンダムF91プリクエル」レビュー

概要

「機動戦士ガンダムF91プリクエル」は、映画「機動戦士ガンダムF91」の前日譚。監督である富野由悠季さんによる小説「機動戦士ガンダムF91 クロスボーン・バンガード」をベースに、独自解釈・再構成を加えて物語が展開されていきます。

F91の開発風景やクロスボーン・バンガードの成り立ち、舞台となるフロンティアⅣなどの様子を局所的に描くという内容。もちろん主人公であるシーブック・アノーやセシリー・フェアチャイルドたちも登場します。なお「プリクエル(PREQUEL)」は「前日譚」の意です(Prequelの意味・使い方・読み方 | Weblio英和辞書)。

機動戦士ガンダムF91プリクエル 1 (角川コミックス・エース)おおの じゅんじ,サンライズ,富野 由悠季 ほか:KADOKAWA

F91開発秘話

宇宙世紀0123年が舞台の映画「機動戦士ガンダムF91」。アムロとシャア以後のガンダム世界、アナハイム・エレクトロニクスからサナリィへ、MSの小型化、ジオンでは無い新勢力「クロスボーン・バンガード」の登場など、新たなガンダム世界の転換点となった物語です。

本作「機動戦士ガンダムF91プリクエル」は、その連邦軍VSクロスボーン・バンガードの闘いに至るまでの、周辺を掘り下げる様々なエピソードが展開されます。手始めに描かれるのは、シーブックの母・モニカを中心としたF91の開発風景。

改造されたザクを追いかける、「SA-01」「SA-02」とナンバリングされた2機のF91(ボディが真っ白なのが特徴)。しかしどうにも出力が安定せず、また軍上層部の意向もあり、開発中止の危機に…?

もちろんその後、F91が連邦軍に正式採用されるのは周知の事実ですが、さて、そこに至るまでにはどのような変遷があったのか?が大きな見どころ。ちなみに劇中で描かれるF91、えげつないぐらいカッコいい!

F91の世界観を広げるエピソード群

連邦の状況と対になるように描かれるのが、クロスボーン・バンガード。「コスモ貴族主義」を掲げるその思想の根源とは?如何にして連邦に宣戦布告できるまでの力を付けていったのか?などといった組織の様子が綴られていきます。

小説版F91を元にした鉄仮面の迫力ある演説、ザビーネ・シャルやドレル・ロナによる訓練、ザムス・ガルを始めとした巨大戦艦の建造・航行など、「THE ORIGIN」に見られた一年戦争開戦以前のジオンを彷彿とさせる描写の数々は、映画で語られなかったクロスボーン・バンガードという組織の根幹をより深く補完します。

その中でも興味深いのが、ザビーネを始めとしたクロスボーン・バンガードのパイロットたちは、一度連邦の士官学校に入学、軍人としてのキャリアを積んだのちに再度CV(クロスボーン・バンガード)に戻ってきた、というもの(※)。F91の世界観により深みを与える、興味深いエピソードを知ることができます。

なお劇中で描かれる黒の部隊仕様のベルガ・ギロス、これが渋すぎて震える…!CV系のMSが好きな人は必見。フィン・ノズルではなくベルガ系のシェルフ・ノズルを背面に搭載した、プロトタイプ?のビギナ・ギナも登場します。

※CVの軍人たちが連邦軍に士官していた、というのは小説版にも記載があります。

圧倒的な安彦良和タッチ

「F91プリクエル」の世界を描くのは、漫画家・おおのじゅんじさん。おおのさんと言えば、「徹底された安彦良和タッチ」がその作風の特徴

安彦タッチを駆使するイタコ漫画家さん(笑)は他にも居ますが、その中でもトップクラスの実力を持つおおのさん。過去にも「機動戦士ガンダム外伝 ミッシングリンク」「機動戦士ガンダム THE ORIGIN MSD ククルス・ドアンの島」といったガンダム漫画を全編、安彦良和テイストで描ききっています。

このタッチが「機動戦士ガンダムF91」の世界観と相性が良すぎてビックリ。映画F91のキャラクターデザインは安彦御大によるもので当然と言えば当然なのですが、コミカライズによる違和感をまったく感じさせないのは流石。もちろん単純に似ているというだけでなく、漫画としてクオリティが高いが故、なのは言わずもがな。

SF漫画としての魅力

ガンダム漫画として高いレベルにある「F91プリクエル」ですが、読んでいて感じるのは「ガンダム漫画」という括りに留まらない宇宙が舞台のフィクション、「SF漫画としての魅力」

ガンダム世界では宇宙に暮らす人々の多くは、巨大人工建築物「スペースコロニー」の中で生活しています。シーブックやセシリーの住むフロンティアⅣもその一つであるのですが、劇中の随所で見られる「円筒形の外観」、そしてその「中」の様子が、非常にリアルで興味深いもの。

コロニー内部のふとした風景にさりげなく描かれる「天井」、すなわち別の「大地」や、ところどころで描かれる街の中のアール・曲線が、そこに暮らす人々がコロニーで生まれ、成長し、そして死んでいくという、機動戦士ガンダムの根底にあるSF世界観を否が応でも想起させます。

またMSや戦艦の描写から受ける「巨大感」に、強いインパクトあり。静寂・漆黒の宇宙空間に浮かぶ全長15m程度のクロスボーン・バンガードMS。微妙にアオリを加えて巨大さを演出されるそれらが、しかしさらに破格の大きさを持つ宇宙戦艦と並び、対比されることで、SF作品ならではの巨大なスケールを感じることができます。この表現力には、ちょっと感動。

「機動戦士ガンダム」は「SFもの」としてよりは、「巨大ロボットもの」として認識している人が多いのではないでしょうか。しかし「F91プリクエル」は、やはりガンダムも原点は「本格SF」である、ということを再認識させてくれます。まあこの辺は文章で説明するのは限界があるので(笑)、ぜひ本編で本作ならではのSFテイストを感じてみてください。

まとめ

以上、おおのじゅんじさんの漫画「機動戦士ガンダムF91プリクエル」のレビューでした。

ガンダム漫画を多数手がけられている作者ならではの巧みな表現と、ガンダム漫画の枠を超えたSF感が魅力の作品。また安彦良和タッチとF91世界の再現力から、このままF91本編に突入しても違和感の無い内容。前日譚と言わずに、本編もコミカライズしてくれないかな…?と期待してしまいます。

ただ本作はあくまでも「前日譚」なので、読むにあたってはやはり、映画「機動戦士ガンダムF91」を先に見ておいた方が良いでしょう。未見の方は映画からご覧になることをオススメします。

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