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漫画『機動戦士ガンダムF91プリクエル』感想―SF表現が魅力!映画『F91』前日譚

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今も根強い人気を持つ映画『機動戦士ガンダムF91』。地球連邦軍 VS クロスボーン・バンガードの「コスモ・バビロニア建国戦争」と、闘いに巻き込まれていく少年少女たちが描かれました。

機動戦士ガンダムF91プリクエル 5 (角川コミックス・エース)

その本編以前、F91世界の各所で起こった出来事を綴っていくのが、おおのじゅんじさんの『機動戦士ガンダムF91プリクエル』。

これが非常にクオリティの高いガンダム漫画。いや、ガンダム漫画の枠に留まらない魅力的なSF作品となっています。2023年8月現在、単行本が5巻まで刊行中。

『機動戦士ガンダムF91プリクエル』感想・レビュー

あらすじ・概要

『機動戦士ガンダムF91プリクエル』は、映画『機動戦士ガンダムF91』の前日譚(プリクエル=PREQUEL)を描くガンダム漫画。

機動戦士ガンダムF91 クロスボーン・バンガード(上) (角川スニーカー文庫)

監督・富野由悠季さんの小説『機動戦士ガンダムF91 クロスボーン・バンガード』をベースに、下記の「3つの軸」で物語が展開。

  • モニカ・アノーを中心としたF91の開発風景
  • クロスボーン・バンガードの成り立ち
  • フロンティアⅣの様子(シーブック+セシリーの出会い)

開戦に至るまでの『F91』世界が、独自解釈・再構成を加えて展開。2時間の映画を補完するストーリーとなっています。

なお本作はあくまでも「前日譚」。映画『機動戦士ガンダムF91』を視聴してからの読書がオススメです。

機動戦士ガンダムF91 完全版辻谷耕史,冬馬由美,池元小百合 ほか:

ガンダムF91開発秘話

宇宙世紀0123年が舞台の『F91』では、

  • 恐竜的に巨大化してきたMSの小型化
  • アナハイム・エレクトロニクスからサナリィへ

といった、兵器技術の大きな変革・転換が行われました。

『F91プリクエル』ではそこに至るまで、特に連邦軍の次期主力機となる「F91」が、海軍戦略研究所・通称サナリィ(S.N.R.I.)で開発される様子が描かれます。

そこで中心となるのは、シーブックの母・モニカ。しかしバイオ・コンピュータが安定しないという問題が発生。さらに競合として「あの機体」が出現して…?

機動戦士ガンダムF91プリクエル 2 (角川コミックス・エース)

もちろんその後、F91が連邦軍に正式採用されるのは周知の事実ですが、そこに至るまでにはどのような変遷があったのか?という映画『F91』につながる「パーツ」が、非常に興味深いもの。

ちなみに劇中では「SA-01」「SA-02」とナンバリングされた、2機の真っ白なF91(F91ヴァイタル)が登場。宇宙空間で縦横無尽に動き回るその姿が、美しくもカッコいい!

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クロスボーン・バンガードの成り立ち

一方、新勢力「クロスボーン・バンガード(CV)」の成り立ち・変遷が綴られるのも、『機動戦士ガンダムF91プリクエル』の大きな見どころ。

「コスモ貴族主義」を掲げるその思想の根源とは?連邦に宣戦布告できるまでの力を如何にして付けていったのか?が、富野由悠季さんによる小説版をベースに描かれていきます。

機動戦士ガンダムF91プリクエル 3 (角川コミックス・エース)

そのCV編の中心となるのは、「黒の部隊=ブラック・ヴァンガード」のエース・パイロット、ザビーネ・シャル

少年時代に遭遇した悲惨な事故をきっかけに、のちのCV総帥マイッツァー・ロナに出会い、やがて幼馴染のダリア、クラウスとともにCVの中核へ。そこで「鉄仮面」の不穏な動きを察知、独自に調査を進めるが…?

…というクロスボーン・バンガードの組織の成長と、連動して描かれるサスペンス展開が、緊張感にあふれていて面白い!

また黒の部隊仕様のベルガ・ギロスのほか、シェルフ・ノズルを搭載したプロトタイプ?のビギナ・ギナなど、『プリクエル』ならではのMSが登場。CV系のメカニックが好きな人は必見!です。

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シーブックとセシリーの青春模様

上記の軍事関連の動きと対照的に描かれるのが、コロニー・フロンティアⅣの様子。その中心となるのは、もちろん主人公シーブックとセシリー

映画本編では「学園祭のミスコン」でちょっと揉めてた感じの二人ですが、初めての出会いからそこに至るまでが、サム・アズマ・アーサーら友人たち、妹リィズを交えながら綴られていきます。

そのアメリカン・ハイスクールもの的な「青春模様」は、「これガンダム漫画…?」と戸惑うくらい(笑)ですが、作者・おおのじゅんじさんの「安彦良和タッチ」と相まって、ユニークな読み心地。

機動戦士ガンダム THE ORIGIN MSD ククルス・ドアンの島(5) (角川コミックス・エース)

過去作『機動戦士ガンダム外伝 ミッシングリンク』『機動戦士ガンダム THE ORIGIN MSD ククルス・ドアンの島』を「徹底した安彦良和タッチ」で描いた作者。

そのハイクオリティな作画は、安彦良和さんデザインの『F91』キャラクターともマッチ。コミカライズによる違和感をまったく感じさせないのは流石、の一言です。

SFとしての大きな魅力を持つ漫画

そんな『機動戦士ガンダムF91プリクエル』。全体を通して感じるのは「SF漫画としての魅力。物語をバックで支えるSF描写が、隠れた見どころとなっています。

例えば「スペースコロニー」での生活風景。「天井」すなわち別の「大地」や、町並みに見られるアールなど、さりげなく描かれる「円筒形の巨大人工建築物」の様子が非常にリアル。

人々がコロニーで生まれ、成長し、そして死んでいくという、機動戦士ガンダムの根底にあるSF世界観を演出しています。

機動戦士ガンダムF91プリクエル 4 (角川コミックス・エース)

また「MSや戦艦の巨大感」や「宇宙空間の描写」にも、強いインパクトあり。

全長15mの大きさを持つMSが、さらに巨大な宇宙戦艦と並ぶことで、SF作品ならではのスケールを演出。またそれらが漆黒の宇宙空間で浮かんでいるかのような、「浮遊感」を感じる描写も秀逸。

『機動戦士ガンダム』は「巨大ロボットもの」として認識している人も多いでしょう。しかし卓越した表現力によって、「ガンダムも原点は本格SFである」ことを再認識させてくれます。

『機動戦士ガンダムF91プリクエル』まとめ

以上、おおのじゅんじさんの漫画『機動戦士ガンダムF91プリクエル』の感想・レビューでした。

ガンダム漫画を多数手がけている作者ならではの巧みな表現と、ガンダム漫画の枠を超えたSF感が魅力の作品。

また安彦良和タッチとF91世界の再現力から、このままF91本編に突入しても違和感の無い内容です。前日譚と言わずに、本編もコミカライズしてくれないかな…?と期待。

機動戦士ガンダムF91プリクエル 1 (角川コミックス・エース)

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