「機動戦士クロスボーン・ガンダム」全6巻―映画「F91」のその後、木星帝国との戦い

この記事は約7分で読めます。

SF漫画「マップス」の作者・長谷川裕一さん描く、宇宙世紀ガンダム・シリーズの一つ「機動戦士クロスボーン・ガンダム」。

劇場版アニメ「機動戦士ガンダムF91」の世界観を受け次ぐ、正統なガンダム・ストーリーです。

アニメ版ガンダム・シリーズおよび「F91」の監督である富野由悠季さんも、本作の制作に深く関わっています。もちろんサンライズ公認。

「機動戦士クロスボーン・ガンダム」感想

あらすじ

劇場版「F91」の舞台は、宇宙世紀0123年。

主人公であるシーブック・アノーとセシリー・フェアチャイルド(ベラ・ロナ)の二人は、コスモ貴族主義を掲げる「クロスボーン・バンガード」が仕掛けた、後に「コスモ・バビロニア建国戦争」と呼ばれる戦いに巻き込まれる。

時は流れてUC0133年。人類が木星にもその居住空間を広げる時代。

地球からの交換留学生として木星を目指すトビア・アロナクスの乗る船は、木星圏でドクロのマークを額と胸に抱く、ガンダム・タイプのMSに襲われる。

襲撃の最中、船に搭載されている毒ガスに気づくトビア。それは「木星帝国(ジュピター・エンパイア)」の兵器であり、帝国の目的が地球侵攻であることを知る。

戦いの中トビアは、「宇宙海賊クロスボーン・バンガード」と名乗り、ドクロのガンダム「クロスボーン・ガンダム」を駆る青年、キンケドゥ・ナウに問いかけられる。

全てを忘れるか、または我らと共に真実に立ち向かうか。

そしてクロスボーン・バンガードと行動を共にすることを選んだトビア。同じく留学生である謎の少女・ベルナデットと共に、木星帝国との戦いに身を投じていく…。

機動戦士クロスボーン・ガンダム(1) (角川コミックス・エース)長谷川 裕一,富野 由悠季,サンライズ ほか:KADOKAWA

アムロとシャアのいないガンダム・ストーリー

…というのが、「機動戦士クロスボーン・ガンダム」序盤のざっくりとしたストーリー。

「機動戦士ガンダムF91」と「機動戦士Vガンダム」(UC0153)の狭間における、宇宙海賊と木星帝国の戦いが描かれます。

アニメとしては「F91」から時代は一気に飛んで「Vガンダム」へ。「F91」で主役だったシーブックとセシリーは以後、映像には登場しません。

が、この「クロスボーン・ガンダム」でトビアと共に、アムロとシャアのいないガンダム世界、「クロスボーン・サーガ」を形作っていきます。

時間的な制約もあり、「F91」ではクロスボーン・バンガード(鉄仮面の方)との戦いの結末はややあいまいになった印象がありますが、「クロスボーン・ガンダム」ではその欲求不満を存分に解消する作りになっています。

独特のMSデザイン

「機動戦士クロスボーン・ガンダム」。この作品で目を引くのは、なんといっても独特・奇抜なMSデザイン

額と胸に海賊をあらわすドクロを抱く、主役機クロスボーン・ガンダム(X1・X2・X3)。

コア・ファイター・システムと連動した巨大なX字型のスラスター、そして本作独自のマント(ABCマント)をまとうその姿。

ヒーローメカでありながら、ヒールを想起させるデザインが魅力のガンダムです。

一方、敵対する木星帝国のMS群は、ザクでもギラ・ドーガでもない、独自の進化を遂げたこれまでのガンダム世界に無い容貌

序盤で登場する木星帝国の量産型MS・バタラこそ「MSらしさ」がありますが、徐々に自由な、自由過ぎるデザインに(笑)。

が、慣れてくるとこれが気にならなくなってくる不思議。クセはありますが、「F91」から一新された敵MSデザインをさらに推し進め、クロボン独特の世界観を形成するパーツとなっています。

悪に立ち向かう正義

「普通のガンダム」、特に宇宙世紀シリーズのTVアニメは、大局的には戦争、つまり「軍VS軍」の戦いが描かれます。

しかし「クロスボーン・ガンダム」の敵役は、地球侵攻をもくろむ木星帝国。

そのトップであるクラックス・ドゥガチの異質な風貌、そして彼を狂信する部下や兵、「怪人的」なMSデザインと相まり、それはどことなく「悪の軍団」を想起させます。

一方のベラ・ロナ率いるクロスボーン・バンガードは、軍というよりは義勇で立ち上がった「部隊」。

その中でヒーロー的な役割を持つクロスボーン・ガンダム、そしてガンダムの主人公らしからぬ(笑)熱血さを見せるトビアとキンケドゥは、「正義の味方」的な存在

物語全体としては「軍VS軍」ではなく、どちらかというと「悪VS正義」的な構図をイメージさせます(補足:厳密に言えば木星人には木星人なりの戦う理由があるのですが、敵や敵メカの行動・見た目から、単純化するとそう見えるという話)。

地球へ強力な敵意を向ける、ドゥガチ率いる木星帝国。トビアは、キンケドゥは、果たしてその目論見を阻止できるのか?というのがストーリーの大きな流れ。

この「ヒーローもの」的な要素が、他のガンダム作品にはない独特な物語感を生み出しています。

少年少女のガンダム

その戦いの中で物語の中心となっていくのは、トビアとベルナデット。

木星帝国との因果を背負ったヒロイン・ベルナデットの苦しみを、主人公であるトビアが持ち前の真っ直ぐさで、クロスボーン・ガンダムX3に乗り救っていきます。

このガンダムっぽくない「少年と少女の物語」が、実に新鮮。

長谷川裕一さんの熱血漢あふれる作風、そして「悪VS正義」的な構図と相まって、どちらかと言えば暗めのガンダム・シリーズには無い、クロボン独特の魅力・爽快感を生み出しています。

そしてもう一組の主人公と言える「F91」からの主要キャラクター、シーブックとセシリー。彼らの歩む道もまた、「クロスボーン・ガンダム」で見逃せないポイント。

木星帝国の地球侵攻を知り、出身母体からの支援を受けるためにあえて「ベラ・ロナ」を名乗るセシリー。

彼女を守るために、自身も「キンケドゥ・ナウ」と名を変えるシーブック。

それぞれ「仮の名」を名乗る二人は、戦いの果てに元の名を取り戻す=F91時代のセシリーとシーブックに戻ることができるのか?というのも、ドラマティックな見どころ。「F91」の決着編とも言える展開が待っています。

迫力あるMS戦を描きながらも、その根底にあるのはトビアやシーブックらに代表される人間味あふれるキャラクターの生き様。

長谷川裕一さんらしさあふれる人間くさい、ドラマティックなストーリーは、長谷川裕一さんでなければ描けない「ガンダム」。最初は戸惑うかもしれませんが、読みすすめるうちに熱い気持ちが胸の内に湧き上がってくるから不思議。

未体験の方は、「機動戦士クロスボーン・ガンダム」からぜひクロスボーン・サーガの世界へ飛び込んでみてください。

機動戦士クロスボーン・ガンダム(1) (角川コミックス・エース)長谷川 裕一,富野 由悠季,サンライズ ほか:KADOKAWA

クロスボーン・サーガのさらなる展開

というわけで長谷川裕一さんの「機動戦士クロスボーン・ガンダム」感想でした。

「ガンダム」でありながら、それ以前のどのガンダムとも似ていない、しかし独特の世界観を築き上げたガンダム漫画

アムロとシャア以後のガンダム世界を見事に作り上げた長谷川裕一さん。その素晴らしい手腕に拍手です。

なおトビアたちとクラックス・ドゥガチの戦いは、ひとまずこの全6巻で完結。ですがクロスボーン・ストーリーは、以後も新たな展開を見せていきます。

  • 機動戦士クロスボーン・ガンダム(全6巻)
  • 機動戦士クロスボーン・ガンダム -スカルハート-(全1巻・短編集)
  • 機動戦士クロスボーン・ガンダム 鋼鉄の7人(全3巻)
  • 機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト(全12巻)
  • 機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST(1~11巻、以下続刊)

以上が2020年末における、クロスボーン・シリーズの流れ。この中でトビアが主役を務めるのは「鋼鉄の7人」まで、です。

その次の「クロスボーン・ガンダム ゴースト」ではザンスカール帝国時代に入り、新たな主役・フォントが登場します。

機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト(1) (角川コミックス・エース)長谷川 裕一,矢立 肇,富野 由悠季 ほか:KADOKAWA

この「機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト」が、ものすごく!面白い作品

超オススメ!なのですが、それも初代クロスボーン・ガンダムからの流れやキャラクター、新たな歴史が積み上げられて来たからこそのおもしろさです。

キンケドゥ、トビアらが歩んできたクロボン・サーガを受け継ぎ、新たな時代を作っていくフォント。トビアは無印クロボン・鋼鉄の七人とは違った形で彼と関わっていくのですが、キンケドゥもゲスト出演したりして…?

この辺のやり取りはちょっとシビレルので、ぜひ本作「機動戦士クロスボーン・ガンダム」から追ってみてください。読んだものだけが感動を味わえる!

コメント

タイトルとURLをコピーしました