ある日とつぜん不思議な友達があらわれたら、それはファンタジックな毎日の始まり!
普通の中学生・ユウコと謎の少女「このは」、二人の日常を描いた漫画「新月を左に旋回」です。
作者はポップでライトな絵柄が魅力の衿沢世衣子(えりさわ・せいこ)さん。個人的に大好きな作家さんです。
単行本は秋田書店A.L.C. DX もっと!より全1巻が発売中。
「新月を左に旋回」レビュー
あらすじ
中学生のユウコは父・姉との三人ぐらし。しかし姉のアサコが突然、謎の留学をしてしまう。
部屋が広くなって嬉しいような、さみしいような気持ちになるユウコ。
そんなユウコはある日、夜の神社で樹上から降ってきた謎の少女・このはと出会う。
迎えに来た父は、何やらこのはのことを知っているよう。
彼女を「このはずく様」と呼ぶなど、不思議な態度を取る。
わけがわからないまま姉のいなくなったスペースに、自然と収まるこのは。
この日から、ユウコとこのはのちょっと不思議な毎日が始まった―。
ユウコと「このは」の不思議な日常
ユウコとこのはの出会いを発端に、二人のちょっとだけ不思議な日常が基本一話完結形式で描かれます。
衿沢世衣子さんの漫画の魅力はライトでゆる~い雰囲気、そしてその中で「フッ」とつい笑ってしまうコミカルさ。
「シンプルノットローファー」や「ちづかマップ」といった過去作で現実世界を描いて来た衿沢さんですが、本作「新月を左に旋回」ではその空気にファンタジック風味をプラスしています。
※衿沢さんは後に、漫画「うちのクラスの女子がヤバい」で「無用力」という超能力を登場させています。
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衿沢世衣子的「藤子マンガ」
この「普通の主人公の元にある日とつぜんあらわれた不思議な存在」という設定、漫画好きならば潜在意識をくすぐられますよね。
そう、藤子不二雄作品の構図です。
のび太くんとドラえもん、ヒロシくんと怪物くん、ケンちゃんとハットリくん、正ちゃんとオバQ。
枚挙にいとまがありませんが、「二人が揃えば今から不思議な冒険が始まる!」そんな予感を抱くのは、マンガ好きに埋め込まれたDNAです。
「ブッポーソー!」と雄叫びを挙げ、サイダーを飲んで「しゅわわ~」と体を震わせるこのは。
なんとも愉快なキャラクターで、至って普通のユウコの生活に不思議成分を与えてくれます。
自由気ままなこのはと、彼女に振り回ながらも笑顔の絶えないユウコ。二人の触れ合いがなんともほっこり。
そんな中、このはのライバル的な存在(藤子作品で言えばケムマキ)も登場。
ちょっとだけダークな?展開もあって衿沢世衣子さんの漫画としては独特な読後感あり。印象的です。
まとめ
というわけで漫画「新月を左に旋回」。話としてはこの1巻で完結しているようですが、続編も作れそうな終わり方。またいつの日か、ユウコとこのはのささやかな冒険を読みたいものです。期待。
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