オカルト・ホラー漫画漫画感想・レビュー

漫画レビュー『ゆうれい談』山岸凉子の実話系オカルト・エッセイ

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山岸凉子さんのオカルト・ホラー系の単行本6冊が、2023年7~8月にKADOKAWA・講談社より電子書籍化されました。

ゆうれい談 (角川ホラー文庫)

本記事ではその内の1冊で、「角川ホラー文庫」レーベルの『ゆうれい談』全1巻をご紹介。6冊中唯一の実話系オカルト・ホラーです。

『ゆうれい談』概要

漫画『ゆうれい談』では、少女漫画誌やホラー漫画誌など、様々な媒体で発表されたエピソード5編を収録。

  • ゆうれい談(1973年発表)
  • 読者からのゆうれい談(1983年発表)
  • 蓮の糸(1993年発表)
  • ゆうれいタクシー(1992年発表)
  • タイムスリップ(1993年発表)

山岸凉子さん自身や家族の体験、漫画家・アシスタントから聞いた話を漫画化。コミックエッセイ風に、「身近で遭遇した怖い or 不思議な出来事」が綴られていきます。

『ゆうれい談』感想・レビュー

「少女漫画の制作現場発」怖い体験談

『わたしの人形は良い人形』『鬼』などのオカルト・ホラー短編から、『レベレーション(啓示)』のような長編作品まで、多彩なストーリー漫画を生み出す山岸凉子さん。

わたしの人形は良い人形 (モーニングコミックス)

本作はそれらとは趣が異なる、コミックエッセイ形式。定番の「幽霊話」から「予知夢」のようなオカルト系まで、「不思議な体験」が作者自身の目線で描かれます

第一話『ゆうれい談』では山岸プロの制作現場を中心に、著名な漫画家やアシスタントが登場。オカルト話だけではなく、1970年代の少女漫画界隈の様子もまた、興味深いところ。

まあ楽屋ネタ・内輪話的なところに若干の読みにくさもあるのですが、第一話が「『りぼん』の付録収録」で、本誌とはあえて差別化しているのだろうと考えると納得。

夭逝した女性漫画家の遺志とは…?

そんな『ゆうれい談』ですが、1990年代に描かれた後半の3作が、深みがあってとても面白い!(そしてちょっと怖い!)

第一話から20数年の間に「確かに起きたと言える」体験を集めた『蓮の糸』。そのトップで描かれるのは、若くして亡くなった女性漫画家・Kさんのお話。

ゆうれい談 (角川ホラー文庫)

激務で仮眠を取っていた山岸さんの枕元に、なぜか「仏のような姿」で現れたKさん。満面の笑みで叫びだす。

「山岸さん!わたしのお家、溶けちゃったから今日ここに泊めて!」

非常にシュールな絵面と意味不明なセリフで、奇妙に怖い…!しかしその後、彼女の「遺志」を感じさせる出来事が起こり、何とも不思議な余韻が残る話。

ほか、「リアリストだけど幽霊をバンバン見てしまう」という、山岸凉子さんのお兄さんの体験談も「いかにもありそうな幽霊目撃談」。全体的にコミカルな描写ながら、思わずゾッとしてしまう…。

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不思議なオカルト系体験談も

また心霊系ではなく、オカルト系の不思議話が描かれる『タイムスリップ』も、奇妙な面白さを持つ一作。

バレエ漫画の取材で京都・比叡山に来た山岸凉子さん。山上の展望台からタクシーで帰り道を下るのですが、「時間は経過しているのに何度も同じ景色を見ている」気がする!

これが表題の「タイムスリップ的現象」なわけですが、これは山岸凉子さんの思い込みという可能性もある(本人もそう感じていた)。ですが周囲の人に話して見ると、他にも同様の体験談が…!

中にはタクシーの運転手さんが「この辺はこんなことがよくあるんですよ」なんて言ってるケースもあったり。そんな証言の積み重ねで、「あれ、こういうことって本当にあるのかも…」と思わせる、物語運びが流石の一言。

軽妙な語り口にのせられて、気づくと日常からズレた不思議な世界に片足を突っ込んでいるような、そんな読後感がユニークなオカルト・ホラー体験談です。

感想・レビューまとめ

以上、山岸凉子さんの漫画『ゆうれい談』感想・レビューでした。

多くの不思議体験をされているという作者ですが、ことさらオカルトを強調し過ぎるでなく、多くの「談」を連綿と描くことで作られる世界観に、読みながら引き込まれます。

「ほんとにあった怖い話」的なものに懐疑的な人も、本作を読み終える頃には「こんな出来事がホントにあるのかも…」と思わずにはいられない…?

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