漫画『花園メリーゴーランド』―リビドーあふれる秘境の民俗エロティック・サスペンス

この漫画、どこかで見たことある?と思われる方も多いのでは。

電子書籍ストアのちょっとエッチな広告で見かける「あのマンガ」。柏木ハルコさんの『花園メリーゴーランド』です。

閉鎖的だがどこか淫靡な雰囲気を醸し出す集落で、大人の階段を登る少年描くエロティック・サスペンス。約20年ほど前の漫画ですが、今読んでも興奮する!

連載は小学館の漫画雑誌「ビッグコミックスピリッツ」で、全5巻完結済み。

『花園メリーゴーランド』感想・レビュー

あらすじ

中学を卒業した相浦基一は、先祖代々に伝わり、現在は行方不明の刀「烏丸」を探すため、父の故郷の村へ。

しかし目的のバス停で降り損ねた相浦くん。道に迷い、途方に暮れる…。

そこにたまたま通りかかった、原付バイクの少女・澄子。彼女の家に泊めてもらえることになり、「柤ヶ沢(けびがさわ)」と呼ばれる集落へ。

風呂で一息入れたあと、澄子の一家と夕食を囲む相浦くん。美人の母親から謎の食べ物「サクラタケ」を振る舞われる

その夜、なぜか寝付けないところへ、妖艶な笑みを浮かべながら現れた母親。

そのネグリジェの下にはふくよかな乳房が透けて―

少年が迷い込んだ謎の集落

実は澄子の家は民宿で、一泊後に料金を請求される相浦くん。しかし財布を落としたことに気づき、実家から送金待ちの身に。

その間にヒロインである澄子との心の交流が起こり、いい雰囲気になったりならなかったり。

『花園メリーゴーランド』では、そんな二人の甘酸っぱい青春が…

と思いきや、想像以上に踏み込んだ「大人の世界」が、ねっとりと描かれていきます。

よくよく見ると美人揃いの「柤ヶ沢」。殿様が美人ばかりをさらって住まわせた「隠れ里」だった、という言い伝えも。

人里離れた閉鎖的な集落、各家庭・神社では男性器が祀られ、女性たちは性に対して独特な価値観を持ちます

折しも男性たちは出稼ぎで不在の中、相浦くんに構ってくる妙齢の女性たち。彼の股間を見ようとしたり、または自分のを見せようとしたり。

澄子の母親も、相浦くんの寝床に夜這いをかけたりで、性的な行為に対する考え方が一般社会とは少し異なるようで…?

集落の「秘事」に巻き込まれ…

そんな「柤ヶ沢」を異様に感じ、一刻も早く「烏丸」を見つけて帰りたい相浦くん。

しかし様々な悪条件が重なり、擬似的な閉鎖空間となった集落に閉じ込められることに。

その中で相浦くんは何人かの女性と関係を持つのですが、そこに至るまでの過程、盛り上げ方がドラマティック。

そして「描写」が非常に濃い!

年輩女性が年頃の男子に女性経験をレクチャーする、という集落の秘事

偶然にもその場に迷い込んでしまった相浦くんは、口封じの意味も込めてそれに参加、図らずも筆おろしをすることに

しかしいざコトに及ぶに至り、一般常識とのギャップに戸惑いを隠せない相浦くん。そんな彼を巧みに、優しくリードしていく年上女性。

明らかに意識に差がある二人が、その接点を図りつつ、暗闇の中で束の間の結合を果たす。

この過程が非常に煽情的。良い意味でいやらしい…!

『花園メリーゴーランド』は一般紙に掲載された漫画ですが、そのエロさはエロ漫画以上。すごいシーンを見せてくれます

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民俗学が生み出す濃厚な淫靡さ

しかし実際のところ、「閉鎖的な空間や田舎でのエロ展開」を描いた漫画は、そんなに珍しいものでもない。

その中でこの『花園メリーゴーランド』が特異・唯一無二の漫画であるのは、実際の文化・風習など民俗学的な要素を反映しているところ。

5巻巻末には民俗学関連の参考文献が多数記載され、民俗学者・岩田重則氏による解説も収録。

その解説でも作者の柏木ハルコさんが、かつての日本に存在していたであろう民俗事象についての豊富な知識を基に本作を描いている、ということに触れられています。

そんなベースを持つ『花園メリーゴーランド』。その源泉にあるのは、日本各地で生きてきた人々の、タフな命の営み

生命がこうやって脈々と紡がれてきたのだな、という力強さを、物語のそこかしこから感じます。

しかしそれは相浦くんが持つ感覚のように、現代においては不道徳とされる部分もあるもの。

その背徳感が集落の醸し出す卑猥な雰囲気と相乗効果を生み出して、単なるエロ漫画とはまた異なる異質な淫靡さを伝えてきます。

終盤は緊迫のサスペンス展開へ

しかし異様にフレンドリー過ぎる女性たちも、相浦くんが集落の「核心」に触れようとする時、急によそよそしく、むしろ怒りの形相を持って彼を遠ざけようとする

それはこの風習が文字通り集落の「秘部」であり、本来は他所者に触れさせてはいけないものだから。

そこに深く入り込み過ぎてしまった相浦くんは、後半の「ある展開」によって、絶対絶命のピンチに

ネタバレになるので深くは触れませんが、そこからは緊迫のサスペンス展開に突入。これがドキドキで怖い…!

澄子との行き違いにより、日常に戻る機会を何度も逃した相浦くん。閉鎖された社会の禁忌に触れた彼は、目的の烏丸を見つけ出し、集落を脱出することができるのか…?

最終5巻は漫画部分だけで約260Pを超える大ボリュームですが、一気読み必至。秘境・柤ヶ沢における淫靡にして濃密な冒険に、グイグイ引き込まれます。

男女の濃密な絡み合い、からの鬼気迫る脱出行の行方は果たして!

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『花園メリーゴーランド』まとめ

以上、漫画『花園メリーゴーランド』全5巻の感想・レビューでした。

作者の柏木ハルコさんは、現在はドラマ化までされた「健康で文化的な最低限度の生活」を絶賛連載中。一般層にも勧められるメジャーな漫画を描かれています。

ですがもともとはデビュー連載「いぬ」や、2000年代前半に描いた短編集「愛・水族館」に収録の短編など、コミカルなドラマの中にフェティッシュな性の営みを織り込む作風が持ち味。

本作『花園メリーゴーランド』はその魅力がグッと凝縮され、花開いた一作です。

濃厚なエロティシズムが漂いすぎる全5巻で、柏木ハルコさんの本性(?)を覗いてみてください。

柏木ハルコさんの既刊はこちら
Kindle / ブックライブ

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