「花園メリーゴーランド」―リビドーあふれる秘境の民俗エロティック・サスペンス

どっかで見たことある?なんて思われるのではないでしょうか。エッチ風味な電子書籍ストアの広告で見かける「あのマンガ」。柏木ハルコさんの「花園メリーゴーランド」です。

閉鎖的だがどこか淫靡な雰囲気を醸し出す集落で、大人の階段を登る少年描くエロティック・サスペンス。約20年ほど前の漫画ですが、今読んでも面白い!小学館ビッグコミックスピリッツ連載で、全5巻完結済みです。

この記事は読むのに4分もかかりません。

「花園メリーゴーランド」感想

あらすじ

中学を卒業した相浦基一は、先祖代々に伝わり現在は行方不明の刀「烏丸」を探すため、父の故郷の村へ。しかし目的のバス停留所で降り損ね、道に迷ってしまう。

途方に暮れる相浦くんを救ったのは、原付でたまたま通りかかった少女・澄子。彼女の家に泊めてもらうことになり、「柤ヶ沢(けびがさわ)」と呼ばれる集落へ向かう。

澄子の一家と囲んだ食事で、美人の母親から謎の食べ物「サクラタケ」を振る舞われる相浦くん。その夜、寝付けないところへ、妖艶な笑みを浮かべながら母親が。そのネグリジェの下にはふくよかな乳房が透けて―

少年が迷い込んだ謎の集落

実は澄子の家は民宿で、一泊後に料金を請求される相浦くん。しかし財布を落としたことに気づき、実家から送金待ちの身に。その間にヒロインである澄子との心の交流が起こり、いい雰囲気になったりならなかったり。

「花園メリーゴーランド」では、そんな二人の甘酸っぱい青春が…だけじゃない!もっと踏み込んだ「大人の世界」が、ねっとりと描かれていきます。

よくよく見ると美人揃いの「柤ヶ沢」は、殿様が美人ばかりをさらって住まわせた「隠れ里」の名残、という話。人里離れた閉鎖的な集落の各家庭や神社では男性器が祀られ、女性たちは性に対して独特な価値観を持ちます(男性は出稼ぎ中で不在)。

集落で相浦くんに構ってくる女性たちは、彼の股間を見ようとしたり、または自分のを見せようとしたり。澄子の母親も、相浦くんの寝床に夜這いをかけたりで、性的な行為に対する考え方が一般社会とは少し異なるようで…?

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集落の「秘事」に巻き込まれ…

一刻も早く「烏丸」を見つけて帰りたい相浦くん。しかし様々な悪条件が重なり、擬似的な閉鎖空間となる柤ヶ沢に閉じ込められることに。

その中で相浦くんは何人かの女性と関係を持つのですが、そこに至るまでの過程、盛り上げ方がドラマティック。そして「描写」が非常に濃い!

年輩女性が年頃の男子に女性経験をレクチャーする、という集落の秘事。偶然にもそこに居合わせてしまった相浦くんは、口封じの意味も込めてそれに参加、図らずも筆おろしをすることに

しかしいざコトに及ぶに至り、一般常識とのギャップに戸惑いを隠せない相浦くん。そんな彼を巧みに、優しくリードしていく年上女性。

明らかに意識に差がある二人が、その接点を図りつつ、暗闇の中で束の間の結合を果たす。この過程が良い意味でいやらしい…!「花園メリーゴーランド」は一般紙に掲載された漫画ですが、エロ漫画以上のエロさを感じさせてくれます。

民俗学が生み出す濃厚な淫靡さ

「閉鎖的な空間でのエロ展開」を描いた漫画は数多くありますが、この「花園メリーゴーランド」が特異なのは、実際の文化・風習など民俗学的な要素を反映しているところ。

5巻巻末には民俗学関連の参考文献が多数記載され、民俗学者・岩田重則氏による解説も収録。その解説でも作者の柏木ハルコさんが、かつての日本に存在していたであろう民俗事象についての豊富な知識を基に本作を描いている、ということに触れられています。

そんなわけでこの漫画、その源泉にあるのは、日本のどこかで生きてきた人々の、命の営み。こうやって脈々と生命を紡いできたんだな、という力強さを、物語のそこかしこから感じます。

しかしそれは相浦くんが持つ感覚のように、現代においては不道徳とされる部分もあるもの。その背徳感が集落の醸し出す卑猥な雰囲気と相乗効果を生み出して、エロ漫画とはまた異なる異質な淫靡さを伝えてきます。

終盤は緊迫の展開へ

しかし異様にフレンドリー過ぎる女性たちも、相浦くんが集落の「核心」に触れようとする時、急によそよそしく、むしろ怒りの形相を持って彼を遠ざけようとする。それはこの風習こそが、文字通り集落の「秘部」であり、本来は他所者に触れさせてはいけないものだから。

そこに深く入り込み過ぎてしまった相浦くんは、後半の「ある展開」によって、絶対絶命のピンチに。ネタバレになるので深くは触れませんが、そこからは緊迫のサスペンス展開に突入。これがドキドキで怖い…!

澄子との行き違いなどにより、日常に戻る機会を何度も逃した相浦くん。閉鎖された社会の禁忌に触れた彼は、目的の烏丸を見つけ出し、集落を脱出することができるのか…?

男女の濃密な絡み合い、からの、鬼気迫る脱出行の行方は果たして!最終5巻は漫画部分だけで約260Pを超える大ボリュームですが、一気読み必至。柤ヶ沢における不思議な冒険を体験してみてください。

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まとめ

以上、漫画「花園メリーゴーランド」全5巻の感想でした。作者の柏木ハルコさんは、現在はドラマ化までされた「健康で文化的な最低限度の生活」を絶賛連載中。一般層にも勧められるメジャーな漫画を描かれています。

ですがもともとはデビュー連載「いぬ」や、2000年代前半に描いた短編集「愛・水族館」に収録の短編など、コミカルなドラマの中にフェティッシュな性の営みを織り込む作風が持ち味。

本作「花園メリーゴーランド」は、その魅力がグッと凝縮され、花開いた一作。この濃密な全5巻で、柏木ハルコさんの本性(?)を覗いてみてください。

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