このヒロインはクセになる、っていうかクセが強い!
ナナシさん描くちょっと変わったラブコメ漫画『イジらないで、長瀞さん』。
「長瀞さん」の読みは「ながとろさん」。名前だけでも覚えて帰ってください。単行本は2023年現在、16巻まで刊行中。
『イジらないで、長瀞さん』感想・レビュー
趣味でファンタジー漫画を描いている、高校2年生のセンパイ男子(パイセン)。図書室で一年生の陽キャ女子4人組に、漫画をからかわれてしまう。
さらにその内の一人、長瀞さんに女性描写を手ひどく揶揄され、思わず目に涙が…。
そのパイセンを見て、「キモいっスね」とドSな笑みを浮かべながらも、ハンカチを差し出す長瀞さん。
しかしパイセンは「後輩の女子に泣かされた…!」とショックを受けるのであった。
…という、なかなか救いようのない(笑)「イジらないで、長瀞さん」第一話。以降、高校2年生のセンパイ男子(パイセン)とその後輩である長瀞さん、二人のイジりイジられ関係が描かれます。
ジャンルとしては一応ラブコメ、なのであろう『イジらないで、長瀞さん』。1対1の男女関係の中に、オトコ心をくすぐる展開を挟んでくるタイプの漫画。
広義に捉えれば、山本崇一朗さん・ゆずチリさん・しろまんたさんらによる漫画の系譜に属するもの、とも言えます。
が、それらに較べて本作はヒロインの性格が非常に特殊。
イジられてタジタジのパイセンを見てゾクゾクと喜びに震える、真正のドSであるというのが、物語の核となるぐらい特徴的。
陽キャである長瀞さんが、女子どころか男子の友達もいないぼっちのパイセンを、時に逆セクハラ的な肉体接触も駆使して、からかい、イジり倒す。
特に1巻序盤で描かれるその様子は、ドン引きするほどえげつない。自分がパイセンの立場になったら泣くわ…。
序盤から痛々しい展開が続くので、最初の方で「イジらないで、長瀞さん」から離脱した人も多いのでは?と想像します。
が、1巻終盤で長瀞さんが見せる行動で、物語の趣きがちょっと変化。
美術部であるパイセンに協力し(っていうか、からかうために)、強引に絵のモデルになった長瀞さん。
しかし良い出来に仕上がった絵に何を思ったか「意外なご褒美」を…。
なんや、カワイイやないか(笑)。
このエピソード以降、二人の関係性が微妙に変化。とともに、読者の長瀞さんのイメージもアップ(笑)。
彼女は以降も変わらずパイセンをイジり続けるのですが、不意のボディタッチに照れたり、消極的なパイセンをマジメに心配したりといった、時折見せる意外な表情が、以前よりずっと魅力的に見えて来ます。
黒髪のストレートロング、健康的な日焼け(水泳部の助っ人部員)、ネコ的な表情と、そもそものルックスがかなりキュートな長瀞さん。
さらに劇中で見せる、コロコロと変化する魅力的な表情。読んでいるうちに、「長瀞さんは次にどんな顔を見せてくれるのか?」と気になって仕方なし。
ちょっとパイセンに気があるのかも…?と思わせぶりなのも、男子の気持ちを微妙に刺激してきます。
一方のパイセンも最初は気弱だったけど、長瀞さんに焚き付けられてオトコらしい行動を取ったりして、ちょっとした成長を見せるのも頼もしい。
けどそれはどうでもいい(笑)。シンプルに長瀞さんの小悪魔的な(というには過ぎるぐらいだが)輝きを楽しんでいきたい、そんな漫画です。
『イジらないで、長瀞さん』まとめ
以上、ナナシさんのラブコメ漫画『イジらないで、長瀞さん』感想・レビューでした。
長瀞さんのイジりがキッツいこともあり、なかなか人を選ぶ漫画だとは思うのですが、慣れてくるとジワジワとおもしろくなってくるから不思議。
「なんだかんだ言ってお前ら楽しそうやんか(笑)」という嬉し恥ずかしい雰囲気になってきます。
3巻あたりからは、長瀞さんの悪友たち「長瀞フレンズ」がイジりに本格参加。さらに5巻終盤~6巻にかけてはパイセンをピンチに陥れる新キャラクターが登場したりもして、パイセンの受難もヒートアップ。
しかしパイセンがイジられればイジられるほど、対比的に輝きを増すのが長瀞さん。ドタバタの中で果たして二人の関係に変化はあるやなしや?
なお『イジらないで、長瀞さん』は一部の巻に「特装版」があるので、これから読んでみようという方はご注意を。
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