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漫画『解体屋ゲン』感想―壊すだけが解体じゃない!「こわし屋」の破壊と創造

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壊すだけが解体業じゃない!壊したあとにこそ、創り上げられるものがある

職業・解体屋を主人公に据えた異色の漫画『解体屋ゲン』。筋の通った大男・ゲンとその仲間たち、建築物の解体をするプロフェッショナルの生きざまが、彼らの携わる仕事を通して熱く描かれます。

原作は星野茂樹さん、作画は石井さだよしさん。芳文社の週刊漫画TIMESに連載中で、単行本は電子書籍のみの刊行となっています。

なおタイトル「解体屋」の読みは、「かいたいや」ではなく「こわしや」。『こわしやゲン』の読みだけでも覚えて帰ってください。

『解体屋ゲン』感想・レビュー

『解体屋ゲン』概要

『解体屋ゲン』の主人公は、零細解体業「朝倉工務店」を営む朝倉厳(あさくら・いわお)38歳、通称ゲン

ヘルメットに汚い作業着、無精髭に突き出たお腹と、その外見からは一見粗雑な感じのする大男です。

そんなゲンは、実は日本では珍しい「爆破解体のエキスパート」

恋人を建築現場の事故で亡くすという悲しい過去を持ちながら、目指すは「日本一の解体業者」。確かな実力と大きな目標を持つ、一流の職人です。

その彼とコンビを組むヒロインは、大手企業・三友重機リースのやり手社員・大月慶子33歳

ゲンに依頼した町工場の解体案件を皮切りに以後、朝倉工務店と協力して数々の現場をこなすことに。

慶子のほかにも、物語が進むにつれ新たな仲間・協力者を得たゲンが、様々な現場やより難易度の高い解体案件に挑んでいく様子が、社会問題・時事問題、時に人情話などを絡めて描かれていきます。

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バラエティ豊かな解体案件

「解体」でパッと思い浮かぶのは、都市部の建物解体や、住宅地の家屋解体などではないでしょうか。

もちろんそれもゲンたちの業務の一部ですが、彼らが活躍する現場は街中だけにあらず

  • 山奥にある廃ホテルの爆破解体
  • ロープウェーの撤去作業
  • 座礁したコンテナ船に接する岩盤の水中爆破

など、ありとあらゆる場所での解体仕事が描かれます。

また純粋な解体作業以外にも、

  • 映画用の一回きりの橋脚爆破
  • 建物に仕掛けられた爆弾の解除・取り外し
  • 家屋を壊さずに移動させる「曳き家(ひきや)」案件

といった、ゲンや仲間の技術を活かした面白いエピソードがてんこ盛り

人々の困りごとをゲンや仲間たちが解決したり、といった仕事内外の人情ストーリーもあり、飽きのこないストーリーが展開されていきます。

難題を如何にして乗り越えるか?

そんなバラエティに富んだ案件の数々を、ゲンたちが「知恵と工夫」で解決していくのが、『解体屋ゲン』の大きな見どころ。

例えば1巻収録の『イヌワシの聖地』では、廃ホテルの爆破解体に際して「イヌワシの生態を脅かさない」という条件を付けられます。

爆破するけど音も光も出すな!という、非常に無茶な話。

ですが「音のしない爆破だろうがなんだろうが、やってやろうじゃねェか!!」と啖呵を切ったゲン。

熟考の末「あるタイミングで爆破解体を行う」ことを思いつき、難題をクリアー。クライアントの要求に応えます。(※内容はコミックで見てね!)

爆破解体と言えば一見、力技のように見えますが、それを日本で実行するためにはいろいろと工夫が必要。

現場の数だけ存在する難問を、ゲンたちがどのように乗り越えるか?が『解体屋ゲン』の面白みのひとつ。

またその過程で描写される、「最先端の爆破技術を使った解体」も見ものです。

さらに物語では解体案件だけではなく、談合や下請けイジメ・手抜き工事など建設業界、ひいては社会問題にもかかわる内容も題材に

「お仕事マンガ」として充分過ぎる読み応えを与えてくれます。

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実は「創造」に魅力のある物語

そんな『解体屋ゲン』。タイトルこそ「こわし屋」ですが、「壊す」だけではなく、壊したあとにゲンたちが創り上げていくもの、「解体のあとの創造」にその魅力の本質があります

解体作業の終了後、その場所をどのように利用・活用するか。自然内にある障害物を破壊したあと、そこからどのように自然の回復につなげるか。

そんな「破壊のあとの再生」、新しいものを創り上げる道への配慮に、ハッとする気づき・面白みがあります。

そしてその創造の中で、ゲンたちがもう一つ作り上げていくものが、ファミリーとも呼べる仲間との関係

曳き家職人・ロクさん、クレーン操縦者・ヒデ、元グラドルながら各種操縦免許を持つ光など、多くの仲間を朝倉工務店(のち五友爆破株式会社)に迎え入れ、自身もやがて慶子と結婚、子どもを設けます

当初は一匹狼で仕事を続けていたゲンですが、解体を続けるうちに仲間との信頼関係を構築し、伴侶を得て父親となっていく様子が、実に温かい。

現場では解体の「その次」を見据え、そしてゲン自身も仲間との絆を紡ぎ、ファミリーを創り上げていく。

物語全体でゆっくりと、しかし着実に描かれる創造に、『解体屋ゲン』ならではの魅力が詰まっています。

『解体屋ゲン』まとめ

以上、漫画『解体屋ゲン』の感想・レビューでした。

「爆破解体」という異色の題材ながら、仕事に人間描写に手抜きなし!の濃厚な作品。

環境問題や社会問題・時事問題など、解体以外の内容も非常に興味深い内容で、飽きないおもしろさがあります。

ちなみにこの『解体屋ゲン』。2002年の連載開始されたにも関わらず、コンビニコミック数巻以外は単行本化されていなかったという、異色の経歴を持つ漫画

ですが現在は電子書籍化が進み、2023年にはついに!単行本100巻を達成。その圧倒的ボリュームを余すところなく楽しめます。

他にも原作者である星野茂樹さんのnoteで、『解体屋ゲン』の一部を読むことが可能。ゲンたちが萌えゲーにハマったことで話題になった、第655話「秘密の花園」も読めます。ぜひ試し読みしてみてください。

星野茂樹|note
漫画原作者星野茂樹です。現在『週刊漫画TIMES』にて「解体屋ゲン」(作画:石井さだよし)を連載中。他に『ことなかれ』(作画:オガツカヅオ)など。

なお『解体屋ゲン』は最新巻の「ひとつ手前の巻」ぐらいまで、Amazonの定額読み放題「Kindle Unlimited」の対象となっています。

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※価格および読み放題サービスの対象については、変更になる可能性があります。サービス利用時に詳細をご確認ください。

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