壊すだけが解体業じゃない!壊したあとにこそ、創り上げられるものがある。
職業・解体屋を主人公に据えた異色の漫画「解体屋ゲン」。作中で描かれるのは、建築物の解体をするプロフェッショナルたち。
大男・ゲンとその仲間たちの生きざまが、解体の仕事を通して熱く描かれます。
原作は星野茂樹さん、作画は石井さだよしさん。連載は芳文社の週刊漫画TIMESで、単行本は電子書籍のみの刊行。巻数も50巻を超え、以下続刊です。
なおタイトルの「解体屋」は「かいたいや」ではなく、「こわしや」と読みます。「こわしやゲン」の読みだけでも覚えて帰ってください。
「解体屋ゲン」感想
爆破解体のエキスパート
主人公は零細解体業「朝倉工務店」を営む、朝倉厳(あさくら・いわお)38歳。通称ゲン。
腕っ節が強い大男で、一見粗雑な感じのあるゲン。実は日本では珍しい爆破解体のエキスパート。また恋人を建築現場の事故で亡くす、という悲しい過去を持っています。
彼とコンビを組むヒロインは、大手企業・三友重機リースのやり手社員・大月慶子33歳。町工場の解体をゲンに依頼し、以後、朝倉工務店と協力して数々の現場をこなすことに。
バラエティ豊かな現場とドラマ
解体、と言えば都市部での建物解体などをイメージするのではないでしょうか。
ですがゲンたちが活躍する現場は、街中だけではありません。山奥にある廃ホテルの爆破解体や、座礁したコンテナ船に接する岩盤の水中爆破など、ありとあらゆる場所での解体仕事が描かれます。
また物語で描かれるのは、解体作業のみならず。人々の困りごとをゲンや仲間たちが解決したり、仕事のやりがい・プライド・厳しさが語られたり。仕事内外の人情ストーリーも。
ほかにも談合や下請けイジメ、手抜き工事など、建設業界ならではの、ひいては社会問題にもかかわる出来事が、ゲンたちの活躍を交えながら描き出されます。
難題を如何にして乗り越えるか?
曲がったことは大嫌い。一本、芯の通ったこわし屋・ゲン。その魅力は、様々な難問を知恵と工夫で解決するところ。
例えば廃ホテルの解体では、イヌワシの生態を脅かさない爆破が求められます。音も光も出さない爆破。そんな無茶な、な案件。
ですがゲンは熟考の末、「あるタイミング」で爆破解体を行うこと思いつき、難題をクリアー。クライアントの要求に応えます。
爆破解体と言えば一見、力技のように見えますが、それを日本で実行するためにはいろいろと工夫が必要。
現場の数だけ存在する難問を、ゲンたちがどのように乗り越えるか?が、「解体屋ゲン」の見どころです。
ちなみに映画の爆破シーンに協力したり、爆発物によるテロ事件に遭遇したり、といったユニークなエピソードもあり、その内容はバラエティに富んだものです。
実は「創造」に魅力のある物語
そんな「解体屋ゲン」。タイトルこそ「こわし屋」ですが、ダイナミックな解体だけではなく、ゲンが創り上げていくものに魅力を感じます。
その一つは、解体のあとの創造。
解体作業終了後、そこを次にどのように利用するか。自然の障害物を破壊したあと、どのように自然の回復につなげるか。
そんな「破壊のあとの再生」、新しいものを創り上げる道への配慮に、ハッとする気づきがあります。
もう一つは、ゲンが慶子はじめ、ファミリーとも呼べる仲間との関係を創り上げていく様子。
職人・ロクさん、クレーン操縦者・ヒデ、元グラビアタレントながら各種操縦免許を持つ光など、多くの仲間を朝倉工務店(のち五友爆破株式会社)に迎え入れ、自身も慶子と結婚、子どもを設けます。
当初は一匹狼で仕事を続けていたゲン。そんな彼が仲間との信頼関係を構築し、伴侶を得て、父親となっていく様子が、実に温かい。「解体屋ゲン」全体を通しての大きな見どころとなっています。
現場では解体の「その次」を見据え、そしてゲン自身も仲間との絆を紡ぎ、ファミリーを創り上げていく。
物語全体でゆっくりと、しかし着実に描かれる創造に、「解体屋ゲン」ならではの魅力が詰まっています。
75巻を目指して電子書籍化
というわけで漫画「解体屋ゲン」の感想でした。
爆破解体という異色の題材ながら、仕事に人間描写に手抜きなし!の濃厚な作品。解体以外にも環境問題や社会問題、時事問題などが取り上げられ、各話バラエティ豊かな内容。飽きないおもしろさがあります。
ちなみにこの「解体屋ゲン」。2002年の連載開始から通算700話を数える人気作品ながら、電子化されるまではコンビニコミック数巻以外は単行本化されていなかったという、これまた異色の経歴を持つ漫画。
現在は2017年より配信、75巻の刊行を目指す電子書籍版にて、その魅力を余すことなく楽しめます。
他にも原作者である星野茂樹さんのnoteで、「解体屋ゲン」の一部を読むことが可能。ゲンたちが萌えゲーにハマったことで話題になった、第655話「秘密の花園」も読めます。

全巻揃える余裕が無い!という方も、定額読み放題の「Kindle Unlimited」を利用すると、リーズナブルに読むことができます。
50巻を超えてますます、物語に深みをましてきた「解体屋ゲン」。その世界にどっぷり浸かってみてください。
※価格および読み放題サービスの対象については、変更になる可能性があります。サービス利用時に詳細をご確認ください。
「解体屋ゲン」の原作者である星野茂樹さんは、ホラー漫画「ことなかれ」も手がけられています。こちらもオススメ。
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