「解体屋ゲン」―こわし屋が創り上げるあたたかな世界

壊すだけが解体業の仕事じゃない!壊したあとにこそ、創り上げられるものがある。

漫画「解体屋ゲン」は、建築物の解体を生業とする大男・ゲンさんが主役を張る、異色の漫画。ゲンとその仲間たちの生きざまが、解体の仕事を通して熱く描かれます

「解体屋ゲン」の「解体屋」は、「かいたいや」ではなく「こわしや」と読みます。原作は星野茂樹さん、作画は石井さだよしさん。連載は芳文社の週刊漫画TIMESで、単行本は電子書籍にて35巻まで刊行、以下続刊です(記事作成現在)。

スポンサーリンク

「解体屋ゲン」レビュー

爆破解体のエキスパート

主人公は零細の工務店「朝倉工務店」を営む朝倉厳(あさくら・いわお)38歳、通称ゲン。腕っ節が強い大男。一見粗雑な感じを受けますが、実は日本では珍しい爆破解体のエキスパート。そして恋人を建築現場の事故で亡くす、という悲しい過去を持っています。


[星野茂樹・石井さだよし著 Benjanet「解体屋ゲン」1巻より引用]

彼とコンビを組むヒロインは、大手企業・三友重機リースのやり手社員・大月慶子33歳。ゲンに町工場の解体を依頼したことをきっかけに、以後、朝倉工務店と協力して数々の現場をこなします。

バラエティ豊かな現場とドラマ

解体、と言えば都市部でのそれをイメージします。ですがゲンたちが活躍する現場は街中だけにあらず。山奥の廃ホテルの爆破解体や、座礁したコンテナ船の船底に接する岩盤を水中爆破したり。ありとあらゆる場所での解体仕事が描かれます。


[星野茂樹・石井さだよし著 Benjanet「解体屋ゲン」3巻より引用]

また物語に登場するのは解体作業のみならず。各話で発生する人々の困りごとをゲンや仲間たちが解決したり、仕事のやりがい・プライド・厳しさが語られたり。ほかにも談合や下請けイジメ、手抜き工事など、建設業界ならではの出来事が、ゲンたちの活躍を交えながら描き出されます。

難題を如何にして乗り越えるか?

曲がったことは大嫌い。一本、芯の通ったこわし屋・ゲン。彼がおもしろいのは、様々な難問を知恵と工夫で解決するところ。例えば先述の廃ホテルの解体では、イヌワシの生態を脅かさない爆破が求められます。


[星野茂樹・石井さだよし著 Benjanet「解体屋ゲン」1巻より引用]

音も光も出さない爆破。そんな無茶な、な案件です。ですがゲンは熟考の末、「あるタイミング」で爆破解体を行うこと思いつき、難題をクリアー。クライアントの要求に応えます。

爆破解体と言えば一見、力技のように見えますが、それを日本で実行するためにはいろいろと工夫が必要。現場の数だけ存在する難問を、ゲンたちがどのように乗り越えるか?が「解体屋ゲン」の見どころです。ちなみに映画の爆破シーンに協力したり、爆発物によるテロ事件に遭遇したり、といったユニークなエピソードも。

実は「創造」に魅力のある物語

そんな「解体屋ゲン」。タイトルこそ「こわし屋」ですが、ダイナミックな解体だけではなく、ゲンが創り上げていくものに魅力を感じます。

その一つは、解体のあとの創造。解体作業終了後、そこを次にどのように利用するか。自然の障害物を破壊したあと、どのように自然の回復につなげるか、などなど。そんな「破壊のあとの再生」、新しいものを創り上げる道への配慮に、ハッとする気づきがあります。

またもう一つは、ゲンが慶子はじめ、ファミリーとも呼べる仲間との関係を創り上げていく様子。

職人・ロクさん、クレーン操縦者・ヒデ、元グラビアタレントながら各種操縦免許を持つ光など、多くの仲間を朝倉工務店(のち五友爆破株式会社)に迎え入れ、自身も慶子と結婚、子どもを設けるゲン


[星野茂樹・石井さだよし著 Benjanet「解体屋ゲン」21巻より引用]

当初は一匹狼で仕事を続けていた彼が、仲間との信頼を紡ぎ、父親となっていく様子が、実に温かい。「解体屋ゲン」、物語全体の大きな見どころです。

現場では解体の「その次」を見据え、そしてゲン自身も仲間との絆を紡ぎ、ファミリーを創り上げていく。物語全体でゆっくりと、しかししっかりと描かれる創造に、「解体屋ゲン」ならではの魅力が詰まっています。

75巻を目指して電子書籍化

というわけで漫画「解体屋ゲン」のレビューでした。爆破解体という異色の題材ながら、仕事に人間描写に手抜きなし!の濃厚な作品。解体以外にも街や自然の再生が描かれバラエティ豊か。飽きないおもしろさがあります。

ちなみにこの「解体屋ゲン」。2002年の連載開始から通算700話を数える人気作品ながら、これまでコンビニコミック数巻以外は単行本化されていなかったという、これまた異色の経歴を持つ漫画。

現在は2017年より配信、75巻の刊行を目指す電子書籍版にて、その魅力を余すことなく楽しめます。他にも原作者である星野茂樹さんのnoteで、「解体屋ゲン」の一部を読むことが可能。ゲンたちが萌えゲーにハマったことで話題になった第655話「秘密の花園」も読めます。

星野茂樹|note
漫画原作者星野茂樹です。現在『週刊漫画TIMES』にて「解体屋ゲン」(作画:石井さだよし)、『ネムキ+』(朝日新聞出版社)にて「ことなかれ」(作画:オガツカヅオ)を連載中。

また単行本は一冊540円ですが、26巻からは270円というサービス価格。ページ数も多く、試し読みも通常の漫画より多めです。また全巻揃える余裕が無い!という方は定額読み放題の「Kindle Unlimited」でも読めるので、ぜひその世界に触れてみてください。

※価格およびKindle Unlimited対象については変更になる可能性がありますので、サービス利用時に詳細をご確認ください。

解体屋ゲン 1巻著者:星野茂樹出版社:Benjanet発行日:2017-07-07

「解体屋ゲン」の原作者である星野茂樹さんは、ホラー漫画「ことなかれ」も手がけられています。こちらもオススメ。

コメント