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漫画『LOST(ロスト)-失踪者たち-』感想―雀荘という名の「戦場」描く異色の麻雀漫画

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「雀荘」っていうと、仲間内で打つ貸卓ぐらいでしか利用したことのない元・ヌル雀士ですが、そこは麻雀好きが集まり、日夜しのぎを削る場所。

そんな雀荘を舞台に、底辺に落ちた男の生きざまを描く全1巻完結漫画がこちら。「LOST(ロスト)-失踪者たち-」です。

原作は自身も麻雀漫画を描かれる押川雲太朗さん。作画は江戸川エドガワさんが担当されています。失礼ながら地味な内容ではあるのですが、これがずっしりと心に残る漫画でした。

「LOST(ロスト)-失踪者たち-」レビュー

訳あり雀荘ボーイ

主人公はわけあってとある街に流れ着き、雀荘に勤め始めた男・山田一郎(仮名)。そこでボーイとして働き、メンバーとして雀荘に集う人々と卓を囲みながら、今日も人生という名の「戦場」を生きる。そんな山田の生きざまが1話完結形式で描かれる、シリアスな人間ドラマです。

ロスト失踪者たち (近代麻雀コミックス)押川雲太朗,江戸川エドガワ:竹書房

元々は一般誌向けの読み切り作品

竹書房「近代麻雀コミックス」から刊行の本作。元々は一般誌向けの読み切り漫画だったそうです。

『「LOST -失踪者達-」   (漫画)   押川』
「LOST(ロスト)-失踪者達-」。私が原作を描き、江戸川エドガワさんに作画してもらい近代麻雀に載った読み切り作品です。この話は元々一般紙に載せようとして書い…

原作者・押川雲太朗さんのブログにその経緯がつづられています。

そのため、麻雀で巨額な金銭や命のやり取りをする、といったタイプの漫画ではなく、また牌譜もストーリーにほぼ影響しません。

また元が一般誌向けなため、麻雀の基礎的なルールも随所で解説。ルールを知らなくても楽しめる、ドラマ性重視の漫画です。

ちなみにタイトルは「LOST(ロスト)-失踪者たち-」ですが、裏社会・闇社会を描いた作品ではありません。

過酷な1000円のバイト

主人公・山田(30歳前後?)は雀荘のボーイ。ボーイと言ってもただ単に給仕をするだけでなく、人数が欠けた卓の「メンバー」として、客と卓を囲みます。その時給は1000円。

知らない者同士が麻雀をする場所・雀荘。劇中では1回のゲーム代が一人500円。さらに1位から4位までの順位が付き、ラス(4位)になると諭吉×2ぐらいの負けになります(これは少々高めという設定)。

仕事として卓に付くのだから、メンバーは負けても痛くないのでは?と思われるかもしれませんが、なんと負ければ自腹。真っ当な人間がするものではない、過酷な仕事です。

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雀荘は「戦場」

サービス業とは言え、サービスばかりもしていられないその仕事。

第一話で、山田は常連の客に「(テンパイしたら)リーチを賭けろ」、つまり暗に「勝たせろ」とプレッシャーをかけられます。

しかし山田の取った行動は…リーチをせずに、平然とその客からアガリ。当然客は怒りますが、山田にも理由があります。彼の時給で十二時間働いても日給1万2千円。ラスになると当然赤字になるので負けられない

ここは戦場だ

戦場で戦わない者は

殺されるしかない

(P27より)

落ちるところまで落ちたが、しかし戦うことはやめない。雀荘を最後の砦・戦場とみなし、不退転の決意で「戦い」に臨む山田。全ては生きるために―。

山田の眼を通した人間模様

以降、雀荘に集まる人間たちの様々な想いが、山田の眼を通して描かれます。時に対戦を見ながら、時にその中に加わりながら、信念を持って生きざまを貫く山田

麻雀漫画と言えばアカギや哭きの竜、ケイ(凍牌)などが頭に浮かびますが、この山田一郎(仮名)、不思議と存在感を感じ、そして心に残るキャラクター。

各話を読む度に、彼の心の底に秘めた固い決意が、ずっしりと読み手に伝わってくる。独特の迫力を感じる漫画です。

まとめ

というわけで「LOST(ロスト)-失踪者たち-」のレビーでした。ホントに派手さは無い作品なんですが、主人公の静かな迫力に呑まれ、思わず息をすることを忘れてしまうような、独特の凄みがある漫画です。

第3話ではちょっとした事件が起き、「ああ、そんなこともあるんだろうな」と思っていると、終盤で意外な回収が

作画も上手く、またストーリー運びもスムーズで読みやすい、全1巻の漫画としてなかなか読み応えのある作品です。ぜひ手に取ってみてください。

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