「魔法を使うには 二つ約束がある」
魔法使いの男性と、彼にさらわれた少年。二人の交流を描く漫画「魔法のつかいかた」を読みました。
作者は草間さかえさん。新書館発行のWingsにて連載されています。
「魔法のつかいかた」のオリジナルは、草間さかえさんが同人で出していたBL作品。本作はそれをリメイクしたものだそうです。
単行本は2018年5月現在、3巻まで刊行中。
「魔法のつかいかた」レビュー
あらすじ
現代に生きる「魔法使い」塚上泉太郎(つかがみ・せんたろう)は、公園のブランコからわざと落ちようとする少年・春生(はるき)に出会う。
魔法を使って彼を救った泉太郎。しかし春生は、複雑な家庭環境により死を望んでいた。
そんな彼に泉太郎は問う。
「君は僕に誘拐されても構わない?」
一週間生き延びたら弟子として迎えに行く、という約束をして別れる二人。
そして一週間後、春生のもとを訪れた泉太郎は、彼にメモを渡す。
「今夜さらう」
魔法使いと少年の二人暮らし
本ブログの構造上、本作のカテゴリをホラーにしております。が、正確にはホラーではなくオカルトの部類に入るでしょうか。漫画「魔法のつかいかた」。
問題のあった家庭を、望んで離れた少年・春生。彼をさらって弟子とした、魔法使い・泉太郎。
その二人暮らしを軸に、「魔法使いの日常」が描かれます。
なお「魔法使い」は「とんがり帽子に杖」といったステレオタイプのものではなく、呪術的なものを使いこなす職業、という役割です。
魔法使いのルール
魔法使いが魔法を使うには二つの約束がある、というルールが存在します。
一つ目は「使える魔法は一人で二つ」。一人の魔法使いが使えるのは、「契約した相手が持っている魔法の内の一つ」と「探し物の魔法」だけ。
二つ目は「どちらの魔法も自分のためには使えない」というもの。
何でもかんでも魔法で解決する、という類のお話ではなく、泉太郎や同業者である絹子とその弟子・雅、そして彼らの属する「組合」周辺で、ひっそりと魔法が使われている、という世界観です。
独特のおもしろさ
さて、この「魔法のつかいかた」。面白いんですが…。
このおもしろさをどうやって伝えたらいいかわからない(笑)。
基本的には、泉太郎と春生のアットホームな生活が中心。そしてそのバックグラウンドとして、ところどころに描かれる魔法使いの世界に、すごく謎が多い。
「魔法使い」とはおそらく、呪術的にいろいろなものを操作したり、時には人をあやめたり、といった感じの職業のよう。
ですが組合の全貌も含めて、モヤモヤしてくっきりはっきりしない感じ。
男同士の、ほのぼの生活をふんわり楽しんでいたと思ったら、次の瞬間にドス黒くきな臭い魔法の世界が描かれたり。
詳細もボヤかして描かれている感じなので、読者も想像力が要求されます。
が、それがいい!
草間さかえさんの独特な絵柄とコマ割り、丁寧に描かれる人物描写、そして全てを語らない思わせぶりなストーリー展開。
全体の雰囲気が独特で、気づくと「魔法のつかいかた」の世界にどっぷりハマる感じがあります。
絶妙な人間関係
読み応えがあるのは、やはり人間関係。
泉太郎と春生、泉太郎と絹子、絹子と雅、春生と雅、などなど。
それぞれの人間性や距離感の描き方が絶妙で、繰り返し読んでも飽きない魅力があります。
その時々で、キャラクターがどんなことを考えているのか?を推し量るこの楽しさ。
個人的には、泉太郎と絹子の関係が面白い。
朴訥とした泉太郎に対して、キビキビとモノを言う絹子。そして2巻で描かれる、若かりし二人の印象的な出会い。
対象的な性格の魔法使いでありながら、良いコンビ感を醸し出す二人の関係性に注目しています。
まとめ
以上、草間さかえさんの漫画「魔法の使い方」のレビューでした。
明快な説明と理屈が示される漫画が好き、という人には向かないかもしれませんが、雰囲気・世界観に浸ることができればその不思議な魅力にどこまでもハマれる。そんな作品。
オカルティックなドラマが好きな方にオススメの漫画です。
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