漫画『Thisコミュニケーション』―リセットで最強の部隊を作れ!新感覚SFサスペンス

突如あらわれた謎の生物に蹂躙され、絶滅寸前の人類。希望となるのは極地の研究所で強化された少女たちと、その隊長となる軍人だった!

…というSF漫画かと思ったら、ちょっと趣が違っていて

六内円栄さんの初連載・初コミックスである漫画『Thisコミュニケーション』。集英社ジャンプSQ.連載で、単行本は2022年3月現在、5巻まで刊行中。以下続刊。

極端に「合理的」な思想を持つ軍人と、超人的な能力を持つ少女たちが、ポストアポカリプス的世界観を舞台に命を賭けたコミュニケーションを展開する、新感覚のSFサスペンス漫画です。

『Thisコミュニケーション』感想・レビュー

あらすじ

20世紀後半、突如世界に現れた巨大なナマコ状の生物「イペリット」。地球を自らが住みよい世界に作り変えるために、人類の排除を開始。やがて21世紀になり生き残ったのは、極地に隠された施設で生き延びた僅かな人間だった。

生き残りの一人である軍人・デルウハは、食料を求め長野県松本市の雪山に埋もれた施設へ。そこで研究者たちと6人の少女「ハントレス」に出会う。

イペリットを単独で倒せる戦闘力と、「死ぬ一時間前の自分」を再生する能力を持つハントレスたち。しかし協調性に欠けており、戦闘中に同士討ちをしてしまう始末。

そこで食料と引き換えに部隊長となったデルウハが、戦闘のプロとしてハントレスたちをサポートすることに。戦いの最中、同士討ちにより綻んだ人間関係を矯正するため、手始めにハントレスの一人を斧で殺害する―

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6人の超人少女「ハントレス」

文明崩壊後の極地で、巨大生物と戦う少女たち+軍人を描く『Thisコミュニケーション』。

イペリットに相対する”いちこ“・”にこ“・”みち“・”よみ“・”いつか“・”むつ“ら、6人の少女「ハントレス」は、

  • 薬漬けで改造された子ども
  • 巨大なイペリットを近接戦闘で倒せる強力な腕力を持つ
  • しかし耐久力は一般人並み
  • 一定の損傷で仮死状態になり、「死ぬ一時間前の自分」を再生する(記憶もそこまで戻る)

といった性質を持つ「世界最後の軍隊」(的な存在)。

人類を窮地に追い込んだイペリットを倒せる「超人」、人類の希望!なのですが、「それぞれ性格が異なり協調性が無い」のが難点…。

悪魔的な指揮官・デルウハ

そこに現れたのがデルウハ。砲兵士官として優秀なだけではなく、軍隊におけるコミュニケーション術に「極度に」長けた人物。

秩序および己の保身を第一に、合理的な考えのもと味方殺しも躊躇なく行う「悪魔」的な指揮官。ハントレスたちをまとめるため、彼女たちの「再生能力」を利用することに

例えば戦闘中、誤って味方を殺してしまったハントレス。その「罪の意識」を無くすために、その人物(及び事情を知る人間すべて)にデルウハ自身が手をかけ、「事態をリセット」する。

またそれがバレないよう、合理的思想により慎重に行動。リセットを繰り返すことで、最強の部隊を作り上げていかんとする。まさに悪魔的…!

SF設定下で行われるサスペンス

巧みな話術と心理操作でハントレスたちをまとめ上げ、イペリット撃退の実績を積み上げていくデルウハ。施設関係者からゆるぎない信頼を得ていくことに。

しかし!ハントレスの中には彼に疑問を持つものも現れ…

さらに!それに気づいたデルウハは、逆に彼女たちの記憶を消すために…

といった、「歪なコミュニケーション」が展開されていきます。

というわけで世界観はSFなのですが、実は「SF設定下で行われるサスペンス」というのが、この『Thisコミュニケーション』の本質。

描かれる「不死身の兵士たち」と「悪魔的な指揮官」の命を賭けた駆け引き・コミュニケーションが、新鮮・ユニークです。

その中でも秀逸なのが、全く共感のできないデルウハのキャラクター

自らの目的(食料の確保)のために、ハントレス一人ひとりの性質を掌握、コミュニケーションを取りつつも、問題が起これば躊躇なく殺し、状況をリセットすることで、自分の理想に近づけていく。

そんな彼は悪魔的ではあるけれど、悪人なのか?と考えると難しいところなのが、なんとも言えないおもしろみとモヤモヤを感じさせます。

過激なコミュニケーションの行き着く先は…?

しかしこの『Thisコミュニケーション』、描かれる世界は、あくまでも「デルウハ VS ハントレス」という状況を演出するための舞台、という印象。

なのでSF的には決して緻密ではないので、「作者が描きたいものは本格SFではなくサスペンスである」と考えて読むべきでしょう。

逆にデルウハとハントレスたちの過激なコミュニケーションや、デルウハの悪魔的な知略に魅力を感じたならば、グッとハマれるはず。

特に1巻終盤で描かれる、少し空気の読めないハントレスの特異な行動と、それに対応せんと知略の限りを尽くすデルウハの様子は、前半の大きなハイライト。

作者が「それを描くための話だった」という最後の1コマは、サスペンス感にあふれていてゾクッ!とします。

また巻が進むにつれ、ハントレス以外にもデルウハの「本質」に気づく人間が。さらに一人のハントレスの「特殊な性質」が明らかになり、物語はますます複雑怪奇な様相を見せていきます

ネタバレになるので詳細は割愛しますが、本編でそのスリルを味わってみてください。

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まとめ

以上、六内円栄さんの『Thisコミュニケーション』の感想・レビューでした。

作者さんは本作が初連載とのことで、構成などにもいろいろと試行錯誤されているよう。各話の間に挟まれる、アイデア・ノート的なコラムにも面白みがあります

その結果として生み出された物語は、既存の作品とは一線を画する「新感覚のSFサスペンス」。特異な状況下における駆け引きのおもしろさと、デルウハをはじめとしたキャラクターの魅力で、ぶっち切るほど魅力的な物語となることを期待。

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