人生をそつなくこなすが、どこか満たされない高校二年生は、偶然の出会いから「美術の世界」へと足を踏み入れていくー。
山口つばささんの漫画『ブルーピリオド』。奥深き美術の世界に魅入られ、厳しい道を進んでいく青年描く、アート系青春ストーリーです。
連載は講談社の漫画雑誌「アフタヌーン」。2024年12月現在、コミックス1~16巻が刊行中です。以下、『ブルーピリオド』の主なあらすじや見どころなどをご紹介します。
『ブルーピリオド』あらすじ
勉強も遊びも器用にこなす、高校二年生の矢口八虎(やぐちやとら)。友人たちと楽しい毎日を送るが、人生に「手ごたえのなさ」を感じている。
そんなある日美術室で、巨大なカンバスに描かれた「絵」に目を奪われる八虎。さらに美術の授業で自分の感じた「渋谷の街の青さ」を表現、その感覚が人に伝わったことに感銘を受ける。
そこから「アート」に対する興味が湧き上がるが、一方「こんなの時間の無駄だ」と思う気持ちも。しかし自分の中に芽生えた情熱を捨てきれない八虎は、美術部へ入部。
やがて「合格倍率実質200倍」である東京藝大への進学を決意し、美しくも過酷な「美術の世界」へと本格的に足を踏み入れていくー。
『ブルーピリオド』のココが面白い!
美術に出会った青年の成長譚
見た目いかにもチャラいが、隠れた努力を惜しまず、それゆえ周囲の評価も高い青年・八虎。
しかし人生にどこか満たされぬものを感じる彼が、偶然の出会いから「美術の世界」にのめり込んで行くことに。
その第一段階の目標となるのは、見方によっては「東大に入るよりも難しい」と言われる、藝大への入学。
美術部で基礎を経験、そして合格に近づくために、八虎は「美術予備校」へ通い始めます。
そこでちょっとインパクトのある講師や、自分の先を行く同級生と出会うのですが、その中でも「天才的な絵画センス」を持つ高橋世田介との邂逅は、彼に大きな影響を…?
気づきと挫折を繰り返しながら、持ち前の優秀さと前向きな心で、少しずつ成長していく八虎の姿が非常に印象的。
また時に群像劇風に描かれる、サブキャラクターのストーリーも興味深い内容で、『ブルーピリオド』の面白さの一つとなっています。
アートへの徹底的に真摯な姿勢
その物語の中で徹底的に貫かれるのが、アートに対する「真摯過ぎる」姿勢。
「美術初心者」の八虎は、あらゆることに疑問を抱きまくるのですが、『ブルーピリオド』ではプロ・アマ取り混ぜた実際の絵画作品を例に、絵画の基礎的な技法から応用テクニック、歴史やその背景などを解説。
アートに不得手でも美術の世界に入り込める物語構成で、八虎と一緒に学び成長していく感じに、面白みを感じます。
また「芸大受験」という一般入試とは全く異なる受験の世界や、普通のアート漫画ではそこまで描かないであろう、という内容も盛り込まれる『ブルーピリオド』。
それらが藝大を目指す若者たちの成長や葛藤と絡み合い、読み応えのある内容となっています。
藝大入学後が本格的に面白い!
そして悩み・苦しみ、成長の過程を経て、八虎は念願の藝大に合格。花のキャンパスライフを満喫!
…とはいかず、むしろ大学生となってからの方が受験より辛い展開に。ここからのドラマが本格的に面白い!
教える方も、学ぶ方も、芸術に対してひとかたならぬ思いを抱く者たちが集う場所・藝大。そこで「受験に合格するための絵画」を辛うじてこなしてきた八虎は、これまでに無い屈辱・挫折を味わうことに。
周囲との圧倒的な差を痛感、「本気の涙」を何度も流す八虎。「自分が『藝大生』を名乗るなんて嘘をついてるみたいだ」と追い込まれてしまう。その悔しさ・焦燥感が胸に刺さる…!
しかし挫けそうになりながらも、周囲に刺激を受けながら、美術、そして己に対して向き合っていく彼。その姿勢と成長に感じる「熱」がスゴイ!気づくと物語の中にどっぷり没入しています。
そんな八虎は芸術に触れ、学び、そして最終的にどの場所に立つのか…。読み始めると、その歩みから目が離せなくなっていきます。
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感想・レビューまとめ
以上、山口つばささんの漫画『ブルーピリオド』感想・レビューでした。
読み始めるとわかるのですがこの漫画、ビックリするくらい地味で、マジメな内容。主人公の見た目から軟派なイメージがあるかもしれませんが、むしろ硬派過ぎ!な感じ。
しかし芸術に対して非常に「真っ直ぐ」で、だからこそ生まれる迫真のドラマが、じわじわと胸に染み渡ってきます。アートに詳しくなくても楽しめる、熱い!青春ドラマです。
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