漫画『ブルーピリオド』―美術の世界で成長する青年描くアート系青春ストーリー

人生をそつなくこなすが、どこか満たされない高校二年生は、偶然の出会いから「美術の世界」へと足を踏み入れていくー

山口つばささんの漫画『ブルーピリオド』。奥深き美術の世界に魅入られ、厳しい道を進んでいく青年描く、アート系青春ストーリーです。講談社アフタヌーン誌連載で2022年5月現在、単行本が11巻まで刊行中。

『ブルーピリオド』感想・レビュー

あらすじ

勉強も遊びも器用にこなす、高校二年生の矢口八虎(やぐちやとら)。友人たちと楽しい毎日を送るが、人生に「手ごたえのなさ」を感じている。

そんなある日美術室で、巨大なカンバスに描かれた「絵」に目を奪われる八虎。さらに美術の授業で自分の感じた「渋谷の街の青さ」を表現、その感覚が人に伝わったことに感銘を受ける。

そこから「アート」に対する興味が湧き上がるが、一方「こんなの時間の無駄だ」と思う気持ちも。

しかし自分の中に芽生えた情熱を捨てきれない八虎は、美術部へ入部。そして「合格倍率実質200倍」である東京藝大への進学を決意し、美しくも過酷な「美術の世界」へと本格的に足を踏み入れていくー。

美術に出会った青年の成長譚

見た目いかにもチャラいが、隠れた努力を惜しまず、それゆえ周囲の評価も高い青年・八虎。しかし人生にどこか満たされぬものを感じる彼が、偶然の出会いから「美術の世界」にのめり込んで行くことに。

その第一段階の目標となるのは、見方によっては「東大に入るよりも難しい」と言われる、藝大への入学。美術部で基礎を経験、そして合格に近づくために、八虎は「美術予備校」へ通い始めます。

そこでちょっとインパクトのある講師や、自分の先を行く同級生と出会うのですが、その中でも「天才的な絵画センス」を持つ高橋世田介との邂逅は、彼に大きな影響を…?

気づきと挫折を繰り返しながら、持ち前の優秀さと前向きな心で、少しずつ成長していく八虎の姿が非常に印象的。また時に群像劇風に描かれる、サブキャラクターのストーリーも興味深い内容。『ブルーピリオド』の面白さの一つとなっています。

アートに対すて徹底的に真摯な姿勢

その物語の中で徹底的に貫かれるのが、アートに対する「真摯過ぎる」姿勢

劇中で美術「初心者」である八虎はあらゆることに疑問を抱きまくるのですが、プロ・アマ取り混ぜた実際の絵画作品を例に、絵画の基礎的な技法から応用テクニック、歴史やその背景などを解説。

アートに不得手でも美術の世界に入り込めるつくり、八虎と一緒に学び成長していく感じがあり、面白みを感じます。

また「芸大受験」という一般入試とは全く異なる受験の世界や、普通のアート漫画ではそこまで描かないであろう、という内容も盛り込まれる『ブルーピリオド』。それらが藝大を目指す若者たちの成長や葛藤と絡み合い、読み応えのある内容となっています。

藝大入学後が本格的に面白い!

そして悩み・苦しみ、成長の過程を経て、八虎は念願の藝大に合格。花のキャンパスライフを満喫!

…とはいかず、むしろ大学生となってからの方が受験より辛い展開になるのですが、ここからのドラマが本格的に面白い!

教える方も、学ぶ方も、芸術に対してひとかたならぬ思いを抱く者たちが集う場所・藝大。そこで「受験に合格するための絵画」を辛うじてこなしてきた八虎は、これまでに無い屈辱・挫折を味わうことに

周囲との圧倒的な差を痛感し、「本気の涙」を何度も流す八虎。「自分が『藝大生』を名乗るなんて嘘をついてるみたいだ」とまで追い込まれてしまう、その悔しさ・焦燥感が胸に刺さる…!

しかし挫けそうになりながらも、周囲に刺激を受けながら、美術、そして己に対して向き合っていく彼。その姿勢と成長に感じる「熱」がスゴイ!気づくと物語の中にどっぷり没入しています。

そんな八虎の物語。彼が芸術に触れ、学んでいく中で、最終的にたどり着く場所はどこなのか…?読み始めると、その歩みから目が離せなくなっていくでしょう。

まとめ

以上、山口つばささんの漫画『ブルーピリオド』の感想・レビューでした。

読み始めるとわかるのですがこの漫画、ビックリするくらい地味で、マジメな内容。主人公の見た目から軟派なイメージがあるかもしれませんが、むしろ硬派過ぎ!な感じ。

しかし芸術に対して非常に「真っ直ぐ」で、だからこそ生まれる迫真のドラマが、じわじわと胸に染み渡ってくるような。アートに詳しくなくても楽しめる、熱い青春ドラマです。

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