「どるから」―JKに転生したK-1創始者の実践的空手道場再建ストーリー

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「なんでワシ 女子高生になってもうたんや~~~ッ!!?」

格闘技・K-1の創始者である石井和義氏。その魂がなぜか女子高生の体に入り、経営不振の空手道場再建に奔走―?

原作・石井和義さん、作画・ハナムラさんの漫画「どるから」。2020年8月現在、5巻まで刊行。以下続刊。格闘技界の大御所みずからが原作を務める本作。失礼ながらイロモノか?と思いきや、これが想定外のおもしろさ。格闘技のみならず、格闘技ビジネスの奥深さを見せてくれます。

「どるから」レビュー

主なあらすじ

石井和義さんはK-1を創始した空手家ですが、個人的には「正道会館の館長」という肩書がしっくり来る人物。その石井館長が、すったもんだの末に刑務所を出所(詳しくはWikipediaを参照してね!)、するや否や、トラックに轢かれて臨終の間際に。

しかし「助けてあげようか」と語りかける謎の白猫の力で、入院中の女子高生・一ノ瀬ケイの体に転生。病院のベッドで自分の状態に気づき、「なんでワシ 女子高生になってもうたんや~~~ッ!!?」

その後、ケイが「一ノ瀬道場」を営む空手家の父親を亡くしたこと、借金を抱えながら一人で道場を再建しようとするも断念したこと、そして自殺を図ったことを知る館長。彼女の無念さを感じ取り、持ち前のビジネス魂を発揮!

「おたくの金銭消費賃貸契約書と、道場の貸借対照表と出納帳を見せてくれまっか?」と融資担当の信金職員に相談。道場で月100万円の売り上げを生むようにするから、3ヶ月だけ返済を待ってもらう、という約束を取り付けることに成功。ここから館長の道場再建計画が始まった―!

…というストーリー。ちなみになぜ猫が館長を救ったのか?は不明。また体の持ち主であるケイの魂は、浮遊霊となって館長の周りに漂い、いらんことをしないように見張ってます。

どるから (1) (バンブーコミックス)石井和義,ハナムラ:竹書房

説得力のあるビジネス・パート

見た目はJK、中身はゴリゴリのおっさんであるケイ=館長が、前の人生で培った格闘技ビジネスの知識を持って、空手道場を立て直そうとするビジネス・ストーリーが、本作「どるから」のおもしろみであり、最大の魅力。

「空手道場はサービス業のひとつ」と言い切り、キッズ対策に力を入れるべきと主張したり。月謝を手渡しから引き落としに変えるだけで退会者が3割減る、というテクニックを披露したり。石井館長が正道会館の運営で積み上げてきた道場経営術が、実におもしろい。

そして3ヶ月という短期間での経営再建で、目指すスタイルは「スタバ空手」。その中身について、詳しくは本書でご覧いただきたいのですが、「スターバックスが売っているものを空手道場にも取り入れる」と聞けば、ピンと来る方もいるでしょう。

いい立地でいい師範がいれば繁盛する!なんていう甘っちょろい考えではなく、経験と理論で固められた再建計画。ケイの友人たちも巻き込んで動き出したそれにケイも希望を持ちますが、同時に「父の守ってきたものと違う」と反発も。その行方は果たして…?

迫力のアクション・パート

ビジネス要素に引き込まれる「どるから」。しかし忘れてならないのは、これが「格闘技マンガ」で(も)あるということ。迫力あふれる本格的な空手シーンがまた、強烈におもしろい。

女子高生ながら空手師範であったケイ。そしてその中に入っている、ゴリゴリの空手家・石井館長。二人は体格差のある男性や格闘技の天才など、様々な格闘家と相対することに。

その戦い方のひとつひとつに、ビジネスと同様、館長は説得力ある理論的な戦法を展開。ケンカ殺法とでも言うべき戦い方で、バカ正直なスタイルで挑んでくる若者たちを手球に取っていく、その姿が痛快。

時に相手のウィークポイントを突き、時にスポーツの枠から外れた「ケンカ」としての技を駆使し、テンポ良く展開される戦い。グイグイと引き込まれていきます。ちなみに館長の教え「ケンカをする時は常に脱出を考えながら!」は、叩きのめした相手が仲間を連れて戻って来た時の経験がもとになっているそうな(笑)。

知恵と工夫で生き延びる

空手ビジネスと空手アクション、2つの顔で楽しませてくれる「どるから」。それらのいずれもに共通するのは、「知恵と工夫」。その知恵と工夫に、石井館長の人生を反映させたかのような説得力が詰め込まれ、実に読ませます。

ケイの友人たちの困り事を解決したり、敵対していた格闘家を引き入れたり、道場再建のために徐々に仲間を増やしていく館長。彼らに向かって

「館長と呼ばんか~~いッ!!」

と見た目はJK、セリフはオッサンの関西弁で叫びまくるその姿は、もう石井館長そのもの。その強烈なキャラクターから目が離せません。ストーリーも格闘技ビジネスの話をはさみながら、4巻・5巻と進むに従って格闘技マンガのお約束とも言えるトーナメント戦も開催され、熱い展開に。

一方で、勝利のためには手段を選ばぬ館長の姿勢に疑問を抱き、また自身の不遇から昏い感情を募らせていくケイ。そこにつけ込んできたのは謎の黒猫。館長の周りをうろつく白猫と正反対に見えるその存在は、ケイを暗黒面に引きずり込んで、館長と敵対―?さて道場の再建や如何に!

まとめ

以上、原作・石井和義さん、作画・ハナムラさんの漫画「どるから」のレビューでした。

本作は、いわゆる一つの「転生もの」だったりするんですよね。石井館長は出所後、トラックに引かれるというお約束を通ってるし。見た目JKなのに中身は格闘技もビジネスも百戦錬磨である、というのもチートっぽい。

ですがただ無双するのではなく、時に血を流し、盛大なピンチを乗り越えて前に進んでいく、という館長の姿は、その枠におさまらない熱き心を感じます。それを形作るクオリティの高いハナムラさんの作画も、安定・安心で素晴らしい。

まあ割といい加減な展開もあったりするんですが(笑)、それをも包み込むような勢いのある展開、そして何より館長の強烈なキャラクターは、見ていて飽きないおもしろさ。5巻終盤ではさらなる新展開も見られ、続きがますます楽しみな漫画です。

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