漫画「銀と金」―裏社会を泳ぐ悪党ども描く福本伸行の傑作サスペンス

裏社会のフィクサーである男と、文無しだが心に「芯」を持つ男。二人が出会った時、日本社会の歯車が静かに動き出す…!福本伸行さんの「銀と金」あらすじ紹介&感想です。

「アカギ」「カイジ」など、ギャンブル漫画に定評のある福本伸行マンガ。本作「銀と金」は同様にギャンブル要素を持ちながら、他にも政治・金融・果ては命のやり取りまで多彩な要素を詰めこんだ、バツグンに面白い裏社会サスペンスです。全11巻完結済み(※未完)。

「銀と金」感想

あらすじ

競馬でスカンピンとなった青年・森田鉄雄は、眼光鋭い中年男性・平井銀二に声をかけられ、「日当10万」の仕事を頼まれる。

翌日、重たいダンボール数十箱をボロアパートへ運び込む森田。そのダンボールには銀二が「不正融資の横取り」で得た十億円分の札束が詰まり、そこに融資を申し込む人々が群がる。

さらに融資の残りを「特別な利率で大銀行に預ける」という異様な光景を目の当たりにし、銀二が裏社会のフィクサーであることを知った森田。圧倒される森田に、銀二は五千万の札束を前にして問いかける。

「人をひとり、殺してもらいたい―」

悪党たちの饗宴

「金と引き換えに人を殺す」はとどのつまり適正テストであり、それに合格した森田は晴れて、銀二の仲間として迎え入れられることに。以降、株の仕手戦を皮切りに、裏社会の「ヤバい金儲け」に関わっていきます。

金儲け、と言っても真っ当なビジネスではもちろん無く、かと言って強盗や殺人など凶悪性の高いものでも無い。巨額の金が絡む非合法案件を、銀二らが己の頭脳と才覚だけを頼りにこなしていく、というのが「銀と金」の醍醐味。

一流企業や政治家たちが輝く表社会の裏側で、汚れ仕事を引き受ける悪党たち。その頭である銀二の目的は、「一国を買えるほどの金を得る」こと。スケール感の大きい「悪事」が展開されていきます。

その中でとりわけ光るのは、その悪党たちの饗宴に裸一貫で飛び込んでいく森田。何も持たない彼が、何も持たないが故に、己の身体と知恵を最大限に駆使して逆境を切り開いていく。果たして森田は、国を動かす「真の悪党」になれるのか…?というのが大きな見どころです。

バラエティ豊かなサスペンス案件が最高に面白い

そんな森田が時に一人で、時に銀二ら仲間たちと共に、「巨額の金が動く裏社会案件」に関わっていくのですが、この「案件」が実に突飛、バラエティ豊かなもの

ボンボンとの青天井ポーカー、巨大企業創業者との奴隷をかけた麻雀など、福本伸行マンガお得意のギャンブル勝負はもちろん、ギャンブルの枠にはまらないサスペンスが最高に!面白い。

その一つが2~3巻で描かれる「殺人鬼の監視」。暴力団が保護した連続殺人鬼を、事務所内で監視することになった森田。部屋の中で一対一となり、殺人鬼を交代で見張るだけ。楽勝かと思われた仕事だが、「殺しのプロ」である殺人鬼は予想を上回る狡猾さを見せ…?

心理的な駆け引きはしっかりフクモト漫画しつつ、「恐怖」が織り込まれた異質なエピソード。他の作品にはない、「銀と金」ならではの緊張感に、グッと引き込まれます。

狂気漂う、物語最大の山場「神威編」

そして後半の最大の山場であり、「銀と金」の中でも最高に面白いエピソードが、7~9巻で描かれる「神威編」。

とある県の一地方を牛耳る神威一族。その家長である神威秀峰からSOSを受けた銀二は、森田に病院に監禁されている秀峰の救出を指示。無事に救出を完了した森田は、秀峰と共にオープン前の巨大ホテルへ。

しかしそこには厳しい家父長制に反対する三人の息子たちが待ち受け、秀峰に自決を迫る。そこを辛くも脱出した森田たちは、明かりの消えたフロアに籠城するが…?という緊迫のサスペンスが展開されます。

相手は暴力団の協力を得て飛び道具を持つ一方、森田たちは徒手空拳。絶体絶命のピンチ…!が、秀峰の狂気的な発想から場は混乱。さらに両者にとって全く予想外の出来事が…?

一族の怨嗟が渦巻き、狂気に支配された巨大構造物の中で展開される、死ぬか生きるかのサバイバル。福本伸行さんお得意の心理戦、命を掛けた駆け引きに、手に汗握ること必至…!

残念ながら未完…だが面白い!

そんな「銀と金」、読みだしたら止まらない面白さのある全11巻なのですが、実は「未完」の漫画。

少しネタバレになってしまうのですが、実は森田は神威編で物語より退場。10巻~11巻では数百億をかけた非合法の競馬勝負が描かれるのですが、それは森田抜きで行われます。(※そのエピソード自体は最後まで描かれます。)

森田と銀二は袂を分かったまま、物語は一区切りを迎え、銀二が森田に期待していた「ある可能性」という伏線も未回収に終わります。

しかし本作は、未完であることを知った上で読んでも、なお魅力の褪せない漫画。福本伸行氏の代表作である「アカギ」や「カイジ」は進行の遅さが気になることもありますが、それと比較するとこの「銀と金」は、テンポ良く物語が進み、また濃縮された面白みが詰まっています。

1~2巻程度のボリュームで各案件を消化。サスペンスやギャンブル勝負が適度なスピード感で展開され、未完であることが気にならない面白さ。読み終えると、きっと満足感が残るでしょう。

まとめ

以上、福本伸行さんの漫画「銀と金」感想でした。全11巻に裏社会がギュッ!と詰め込まれたサスペンス。ほかのフクモト漫画とはひと味もふた味も違った魅力を持つ作品です。

上記でご紹介したサスペンス・エピソードのみならず、作者ならではの独特なギャンブル勝負も手に汗握る面白さ。森田と銀二の冒険にぜひ、触れてみてください。

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