漫画『ハイパーインフレーション』―無限の贋札で世界を変えろ!

迫害される少数民族の少年は父母を失い、今また最愛の姉を奪われんとする。その時!神は彼に「紙幣を生み出す能力」を与えた!しかしその紙幣にはある問題がー?

住吉九さんの漫画『ハイパーインフレーション』。尽きることのない人間の欲望を訳のわからない迫力とちょっとの性癖(笑)を絡めて描く、異色の経済ファンタジーサスペンス(?)です。

連載は集英社のWeb漫画メディア『ジャンプ+』。2022年1月現在、単行本が3巻まで刊行中。

『ハイパーインフレーション』感想・レビュー

あらすじ

幼い頃、ヴィクトニア帝国の奴隷狩りで両親を失った、ガブール人の少年ルーク。両親を見殺しにした神に恨みを抱く彼は、民族の宝から低純度の金貨=贋金を作成。ヴィクト人と取引をすることで村に作業を興すことを目論む。

その彼が作った金貨を模造品と見抜いた、大奴隷商人グレシャム。禁止されている奴隷貿易を行うために、別のガブール人部族に協力。ルークと巫女である姉ハルは囚われの身に。その際に殴られ、ルークは気を失ってしまう。

その時、彼の意識にガブール神が降臨。「カネが欲しいッ!!世界を買えるカネをよこせッ!!」強く願うルークに、生殖能力と引き換えにヴィクトニアの紙幣「一万ベルク札」を生み出す力を与える。

体から無限に金を作れるようになったルーク!しかしその金は、なんと通し番号がすべて同じだった!ルークは「贋札」で姉を助け、さらに野望を成し遂げることができるのか…?

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「無限の贋札」による駆け引きが面白い!

かくして生殖能力と引き換えに、神から「無限の贋札」を作る力を与えられたルーク。知恵を使って有象無象と渡り合っていく様が、『ハイパーインフレーション』では描かれていきます。

しかし「贋札」じゃあ、何にも出来ないんじゃ?と普通は思うところ。が、贋札には贋札の「使い方」がある!

ルークが出せるのは、ベルク札としては高額な「一万ベルク札」。帝国の一般労働者の月収が4万ベルクの世界で、一枚でも大きな価値を持つそれ。複数使わなければバレない!と賄賂に使ったり。また通し番号を見られない工夫をしたり。

まがい物だが、アイデアによっては「本物以上の価値」を生み出す贋札を、知恵と度胸によって有効に使っていくという駆け引き・ギミックが非常にユニーク。ちなみに瞬間的に大量に出して、防御に使ったりも。そんなんアリかい(笑)。

アクの強すぎるキャラクター

しかし金のパワーは、あらゆる力を吸い寄せる!『ハイパーインフレーション』ではルークの能力を巡り、アクの強すぎる奴らが登場

その行動原理は「カネを得ること」だけ。「大きな赤ちゃん」というあだ名を持つ奇怪な風貌をした奴隷商人・グレシャム。

その忠実にして有能な部下で、ルークとは意外な友情を育んでいくフラペコ。

そしてガブール人でありながらどこか違和感が…高い知能と驚異的な行動力を持つ超人・レジャット。

彼らが神から与えられた特殊能力を使うルークと、時に敵対、時に協力関係を築きながら、駆け引きと頭脳バトルを繰り広げる様が面白い!バイオレンスでありながらどこかコミカル、奇妙な迫力を持つ展開に、知らず識らずの内に引き込まれていきます。

予想不能な個性と個性の衝突!

そんな『ハイパーインフレーション』。その面白さの源は、くっきりはっきりしている各キャラクターの行動原理

ルークは帝国本土に連れ去られた姉を取り戻し、ガブール人を救うために帝国と対等に渡り合いたい。

グレシャムはとにかくカネ!「いくら儲かるか?」でその進むべき道を決めていく。

そしてレジャットは、全ての人間は世界をより良くする義務を負っている!だがそれを行うのは高い能力を持っている俺だ!俺が世界を守る!の男。

それぞれが妥協できない信念・欲望を持ち、それらがぶつかり合うことで、予想不能なストーリーが繰り広げられます。この個性と個性、欲望と欲望の衝突が、有無を言わせぬ迫力を生み出して実に面白い…!

またそれらが、物語のベースにある「経済的価値観」と絡み合っていく様も本作の大きな見どころ。「無限の贋札」を生み出すルークの能力がもたらすものは、幸福なのか世界の破滅なのか。果たして…?

まとめ

以上、住吉九さんの漫画『ハイパーインフレーション』の感想・レビューでした。

ややフェティッシュな表現、変態的なキャラクター、まあまあ過激なバイオレンスを含みながらも、ド直球なタイトルに違わぬ経済的要素が物語の根底に鎮座、それらが奇跡的に融合している、実に不思議な漫画です。

ちょっとクセが強いのですが、一度読み始めると止まらぬ面白さ。その独特な世界観を味わってみてください。

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