これまでに読んだスポーツ漫画の中で、個人的にナンバー1の作品。塀内夏子さんのサッカー漫画「Jドリーム」。3シリーズあるのですが、その中で「飛翔編」が一番好きです。
「飛翔編」は、プロサッカーの世界を描く「Jドリーム」において、若手中心のユース大会を描いたシリーズ。主人公・赤星鷹と仲間たちの若さ、そして彼らが結束し、世界の頂点を目指す姿が魅力のスポーツ漫画です。
「Jドリーム 飛翔編」は、もとは講談社より少年マガジンコミックス全10巻が刊行されていた作品。現在は電子書籍レーベル「電書バト」より、電子書籍版全5巻が刊行されています。
「Jドリーム 飛翔編」感想・レビュー
「Jドリーム」シリーズについて
「飛翔編」紹介の前に、「Jドリーム」全体について。
Jドリームは、週刊少年マガジンに1993年から1999年にかけて連載された、塀内夏子さんのサッカー漫画。若き天才サッカープレイヤー・赤星鷹を中心に、Jリーグを舞台にしたリーグ戦、そしてワールドカップに臨むA代表(全日本チーム)の戦いが描かれます。
シリーズは、「Jドリーム」「Jドリーム 飛翔編」「Jドリーム 完全燃焼編」の三部作。そのうち「飛翔編」では、若きサッカー選手たちがワールドユース日本代表として集い、世界の頂点を目指してフレッシュな戦いを繰り広げます。
シリーズ共通の主人公・赤星鷹は、とび職出身のプロサッカープレイヤー。天才的なバランス感覚とボールコントロールを持ち、浦和レッズに入団、のちに若干16歳でA代表に選ばれるという、日本サッカー界期待の新星(にして問題児)というポジションです。
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「飛翔編」に集う鷹と仲間たち
年上でもタメ口の実力主義、いろんな意味で常識破り(≒常識が無いとも言う)の鷹。「Jドリーム」では大人に囲まれて、基本「少年」的なポジションでした。
しかしこの「飛翔編」では一転、同世代の選手たちとチームメイトに。前作とは異なる人間関係の中心に置かれます。
前作「Jドリーム」のラストでは、代表戦を終えたあとに行方不明となった鷹。その後、スペインで鳶の仕事をしていた(笑)ところを、ワールドユース本大会出場を決めた日本ユース代表に招集されます。
そこには予選大会を引っ張ったFW・迫丸、海外帰りの屈強なDF・立浪、アルゼンチン出身の日系GK・浜本(シン)、そして鷹がスカウトした俊足の高校生・中居らが集結。
過酷な試合を重ね、世界の頂点を目指していくユースメンバー達。孤高の存在・鷹が異なる関係性の中で成長していく姿が、これまでのシリーズに無い魅力を持っています。
また鷹だけではなく、それぞれ個性を持つチームメイトが、鷹に負けじと切磋琢磨していく様子。A代表とはまた違う、「緊張感の中にある爽やかさ」が「飛翔編」にはあります。
世界の強豪とのリアルな戦い
「飛翔編」で登場するライバルチームは、スウェーデン・アルゼンチン・イタリアといった、世界の強豪。選手たちもトップリーグで活躍するプロばかり。
「Jドリーム」では、必殺技も超人的な選手も登場しません。それゆえに際立つ、リアルなサッカーの世界。屈強な世界の猛者相手に、戦術やテクニック、そしてチームプレイを武器に、日本代表が戦っていきます。
スポーツ漫画に定評のある作者・塀内夏子ならではの読み応えで、迫力・スピード感のあるサッカーが楽しめます。
仲間、そして敵との絆
試合と共に描かれるのは、鷹と仲間たちの絆。
病気の母を残して大会に臨む迫丸、亡き兄の想いを抱いてもう一つの祖国・アルゼンチンと戦うシンなど、それぞれの背景を背負ったチームメイト。それまで同世代の仲間を持たなかった鷹が、彼らとぶつかりあいながらも一つにまとまり、ワールドカップA代表への気持ちを高めていきます。
またもう一人の主人公とも言える、中居の成長も見もの。鷹の舎弟的な存在だった彼が自らのアイデンティティーを得て、やがてサッカープレイヤーとして独り立ちする様子が、心に残ります。
そして仲間だけではなく、敵チーム選手との間にも友情が。特にイタリア代表で、セリエAのトップチームでも活躍するロッシ。言葉は通じないけれど、サッカーを通して認めあっていく鷹とロッシの姿。スポーツマンらしいさわやかさを感じさせてくれます。
必見の番外編
サッカー漫画「Jドリーム 飛翔編」。ワールドユースを描く本編はもちろんですが、実は番外編が面白い。
番外編はいくつかあるのですが、特にオススメなのは、連載終了後に描かれた「会いたい気持ち」「恋のドンキホーテ」の2編(いずれも5巻収録)。
ワールドユース終了後、Jリーグで伸び悩むシンと中居。気分転換のため、レアル・マドリードに移籍した鷹に会いに、一路スペインへ。その道中、トラブルに遭いながらも二人が心を通わせていく「会いたい気持ち」。
チームを転々とし、田舎のアマチュアチーム「ラ・マンチャ」に所属していた鷹。Bリーグ落ちしそうなチームを救うために、中居・シンを助っ人に迎えて、得失点差マイナス15をひっくり返そうとする様子が、シンの恋模様をまじえて描かれる「恋のドンキホーテ」。
鷹・シン・中居を中心に描かれる番外編2編。激しい戦いを描く本編とはまた違う、ドラマティックな内容が印象的なストーリーです。
ワールドユースで結ばれた絆なくしてはありえない話だなぁ、なんて思いながら読むと、彼らがたどってきた道が浮かんで、胸の中に広がるさわやかな気持ち。心地よい読後感があります。
日本代表を描くリアルなサッカー
というわけで「Jドリーム 飛翔編」の感想・レビューでした。若者らしい爽やかさと、世界とのシビアな戦いが描かれるサッカー漫画。塀内夏子さんならではのリアルなスポーツ描写は、手に汗握るおもしろさと迫力があります。
そして「飛翔編」前後の無印「Jドリーム」と「完全燃焼編」で描かれるのは、ワールドカップを目指すA代表の戦い。プロ選手として、国を背負った代表として、過酷な戦いに挑むサッカー戦士たちの姿。テレビで見るだけではわからない、迫真の思いが伝わります。
また恩師である女性教師・竹中先生と鷹の交流も、感涙モノ。サッカー以外の人間ドラマにも見どころの多い作品。今もなお色褪せない、サッカー漫画の名作です。
「Jドリーム」シリーズは現在、電子書籍が「伝書バト」レーベルより刊行中。「Jドリーム」(無印)全7巻、「Jドリーム 飛翔編」全5巻、「Jドリーム 完全燃焼編」全4巻が、お手頃価格で楽しめます。
またKindle Unlimitedでも、Jドリーム全巻が読み放題対象となっています。一気読みしたい!という方はそちらもチェックしてみてください。
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