那州雪絵さんのホラー漫画『魔法使いの娘』の続編、『魔法使いの娘ニ非ズ(まほうつかいのむすめにあらず)』全7巻。
数々の恐怖案件に、主人公・初音とそのパートナー・兵吾が関わっていく、オカルト・ホラー漫画です。
前作のストーリーを引き継ぎながら、ホラー・オムニバス的な形式となった『魔法使いの娘ニ非ズ』。読み切りホラー的な面白さが楽しめます。
なおご紹介の都合上、『魔法使いの娘』のネタバレに触れるのでご注意を。
『魔法使いの娘ニ非ズ』感想・レビュー
あらすじ・概要
主人公・初音と、その義父である陰陽師・無山。二人の周辺で起こる怪奇現象を中心に物語が展開された前作『魔法使いの娘』。
終盤では二人の親子関係の秘密が絡んだ、初音と無山の対決で幕を閉じました。
その続編となる『魔法使いの娘ニ非ズ』では、成長した初音自身が(不本意ながら)陰陽師に。
無山の弟子だった兵吾を公私に渡るパートナーとし、数々のオカルト案件を解決(?)していきます。
作中における「陰陽師」は「除霊・退魔に関わる能力者」のことで、「魔法使い」はその比喩。
そしてタイトルの『魔法使いの娘』は、最強の陰陽師・無山の娘である初音を指します。
なお『魔法使いの娘ニ非ズ』から読書される場合は、
- 初音…義父・無山の跡をついで陰陽師に。
- 兵吾…無山の元弟子で初音のパートナー。依り代体質。
- 小八汰…初音の式神。普段は少年の姿をしているが…
- 無畏(むい)…無山のおとうと弟子で、初音の上司的存在。
というキャラクターの基本を抑えておけばOK。興味を持った時に前作を読んで、ストーリーの全体像に触れてみてください。
練り込まれたホラー・ストーリーが面白い!
初音や無山の日常が中心だった『魔法使いの娘』。
続編『魔法使いの娘ニ非ズ』ではその形式が変更。ゲストキャラクターたちが遭遇するオカルト事案が物語の中心に。
- 高齢者用の健康施設に現れる、謎の子供
- オフィスビルを動き回る不気味なダンボール箱
- タクシーの中で消失する、正体不明の客
- 15年前の合宿で失踪した運動部員
- 関わったものを死に至らしめる謎の家
といった心霊・怪奇現象に初音・兵吾・小八汰らが関わっていく、一話完結~前後編のホラーストーリーが展開されていきます。
この短編形式のオカルト・ホラー話が、良く練り込まれていて面白い!
グロ表現やビックリドッキリ描写で怖がらせるのではなく、設定とストーリーでじわじわと読者を恐怖の淵に追い詰めていく「いかにも」な恐怖話。
どの話もゾッとする怖さを味あわせてくれます。
ストーリー漫画としての読み応えも
そんなホラー感にストーリー漫画としての読み応えを併せ持つのが、『魔法使いの娘ニ非ズ』ならではの面白み。
物語全体で大きな見どころとなるのが、初音と兵吾の前作とは異なる関係。
成り行きながら自らが陰陽師となり、魔の世界に関わっていく初音。
一方「魔法使いの娘」での「ある縛り」が解け、自由の身となったにも関わらず、初音のパートナーとなることを選んだ兵吾。
二人は婚姻関係にあるのですが、恋愛をして結びついたというよりは、それぞれ因果を背負って運命共同体となった、という感じ。
気丈にふるまう初音は時に兵吾を精神的な支柱とし、また根無し草だった兵吾も初音を「帰る場所」としていく。
全7巻でじっくり描かれるその様子に、思わず感情移入。魅力的なキャラクターと手抜きの無いホラーストーリーが融合し、深み・読み込み要素を持つ物語に仕上がっています。
ちなみに兵吾は『魔法使いの娘』第一話で、初音を◯そうとした人間だったりします。そんなことを思い出しながら読むと、より感慨深いものが。
怒涛の最終巻。物語の結末は…?
そんな『魔法使いの娘ニ非ズ』。1~6巻までは個別の怪奇物語が展開され、本筋の進行はゆるやか。
しかし最終7巻で一気に話が進展。物語の最終目的「義父・無山の強大な霊能力を封じ込めること」に関連して、緊迫の展開が!
準レギュラーのほか、『魔法使いの娘』『魔法使いの娘ニ非ズ』合計15巻の歴史から「意外なキャラクター」も再登場。
シリーズの集大成となる物語の決着が、ラストまでノンストップで描かれます。
その過程で決断を迫られる初音。彼女が取る道は…?
『魔法使いの娘ニ非ズ』まとめ
以上、那州雪絵さんのオカルト・ホラー漫画『魔法使いの娘ニ非ズ』感想・レビューでした。
通して全15巻という長寿シリーズ。しっかりと立ったキャラクターたちと、練り込まれたストーリー、そして手抜きの無い恐怖展開。
ホラー漫画の枠を超えたおもしろさを持つ作品です。
細かい描写や伏線など随所に読み込み要素があるのも、ベテラン漫画家・那州雪絵さんならではのクオリティ。
グロ表現は控えめなので、ホラー漫画が苦手な方でもきっと楽しめるでしょう。オススメのオカルト・ホラー漫画です。
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