「魔法使いの娘ニ非ズ」全7巻―恐怖と物語性が両立したオカルト・ホラー

那州雪絵さん描くオカルト・ホラー漫画「魔法使いの娘」全8巻。その主人公・初音と、パートナーとなった兵吾、二人の活躍を描く正統な続編が「魔法使いの娘ニ非ズ」。全7巻で完結済みです。

「魔法使いの娘」のおもしろさはそのままに、よりオカルト濃度を深めた「魔法使いの娘ニ非ズ」について、本記事ではその魅力をご紹介します。なお続編の内容ということで、一部「魔法使いの娘」のネタバレが含まれます。

未読の方はぜひこちらを先にご覧ください。

「魔法使いの娘ニ非ズ」レビュー

概要

前作「魔法使いの娘」では、主人公・初音の身の回りに起こる怪奇現象を中心に、物語が展開。終盤では初音の出生の秘密に関わる、初音と無山の対決で幕を閉じました。

その続編となる「魔法使いの娘ニ非ズ」では、少し成長し、自身が陰陽師となった初音と、かつては無山の弟子、現在は初音の公私に渡るパートナーとなった兵吾、二人の活躍が描かれます。


[那州雪絵 著 新書館「魔法使いの娘ニ非ズ」1巻より引用]

「魔法使いの娘」では初音の日常が中心でしたが、「魔法使いの娘ニ非ズ」ではゲストキャラクターが遭遇するオカルト現象に、初音たちが陰陽師として絡んでいく、という物語形式が増えているのが大きな特徴。

なお「魔法使いの娘」は、陰陽師の娘である初音を指すものですが、「魔法使いの娘ニ非ズ」というタイトルは彼女自身が陰陽師になったこと、また無山との関係性が変化したことをあらわしています。

練り込まれたストーリーとホラー感

「魔法使いの娘ニ非ズ」では物語全体に関わる目的があるのですが(後述)、基本は一話完結もしくは前後編のホラーストーリー。人々が日常で遭遇する心霊・怪奇現象や物の怪に、初音・兵吾が陰陽師として関わっていくという形式。


[那州雪絵 著 新書館「魔法使いの娘ニ非ズ」1巻より引用]

この一話一話の物語が、良く練り込まれていておもしろい。グロい表現やビックリドッキリな展開で読者を怖がらせるのではなく、設定とストーリーでじわじわと読者を恐怖の淵に追い詰めていくタイプのホラー漫画

高齢者健康施設に現れる謎の子供。タクシーの中から消える正体不明の客。15年前の合宿で失踪した運動部員。といったような、「いかにも」な恐怖話。ストーリー漫画を多数輩出されている那州雪絵さんならではの、読み応えのある物語が展開されます。


[那州雪絵 著 新書館「魔法使いの娘ニ非ズ」1巻より引用]

そしてどの話にもきっちりと組み込まれている「恐怖」。初音・兵吾らキャラクターを物語に組み込みつつ、毎回しっかりとホラーストーリーを成立させているのは流石。細かい部分にも手抜きが無く、読み込む楽しみもあります。

初音と兵吾の関係性

またシリーズものということで、初音と兵吾の前作とは異なる関係が丁寧に描かれているのも、「魔法使いの娘ニ非ズ」の大きな魅力。

成り行きながら自らが陰陽師となり、霊能者として闇の世界に関わっていく初音。一方、「魔法使いの娘」では無山の弟子という立場、そして「ある縛り」により初音に逆らえなかった兵吾。本作ではその縛りが解けたにも関わらず、初音のパートナーとして、彼女の進む道をサポートしていきます。


[那州雪絵 著 新書館「魔法使いの娘ニ非ズ」4巻より引用]

二人は結婚しているのですが、単に恋愛をして結びついた、というよりは、それぞれ因果を背負って運命共同体となった、という感じ。義父の霊能力の後始末を付けようとする初音。しかしまだまだ未熟な彼女を、陰に日向にサポートしていく兵吾。

イチャイチャラブラブするシーンはほぼゼロ、という二人。しかし気丈な初音は時に兵吾を精神的な支柱とし、また根無し草だった兵吾も、初音を「帰る場所」としていく。そんな様子が全7巻を通じてじっくり描かれていくのが実に心地よい。「魔法使いの娘ニ非ズ」全体の大きな見どころです。

ちなみに兵吾は「魔法使いの娘」第一話で、初音を◯そうとした人間だったりします。そんなことを思い出しながら読むと、より感慨深いものが。

怒涛の最終巻

物語全体の最終目的は、無力化されている無山の強大な霊能力を、それを収める器に閉じ込めること。1~6巻までは前述のような個別の怪奇物語が展開されるのですが、最終7巻で一気に話が進行。緊迫の展開に。


[那州雪絵 著 新書館「魔法使いの娘ニ非ズ」7巻より引用]

霊力を無効化するホーリーパワーを持つジュニアの元で、更生(?)修行をしていた無山。しかしある出来事をきっかけにジュニアの管理下を離れ、その力が暴走。果たして初音は、強大な無山の力とどのように対峙するのか?

ネタバレしないようにだいぶボカしてますが、概ねこんな感じの第7巻。初音の式神・小八汰、無山の弟弟子・無畏、その秘書(?)・操名など、おなじみの準レギュラーの活躍、そして「魔法使いの娘」含む全15巻の歴史から意外なキャラクターも再登場。シリーズの集大成とも言える迫力・充実の物語が、ラストまでノンストップで描かれる最終巻です。

まとめ

以上、那州雪絵さんのオカルト・ホラー漫画「魔法使いの娘ニ非ズ」のレビューでした。前作通して全15巻という長寿シリーズ。しっかりと立ったキャラクターたちと、練り込まれたストーリー、そして手抜きの無いホラー展開。ホラー漫画の枠を超えたおもしろさを持つ作品です。

細かい描写や伏線など、随所に読み込み要素があるのもさすがのベテラン漫画家・那州雪絵さんならではのクオリティ。何度読んでも飽きないおもしろさがあります。グロ表現は控えめなので、ホラー漫画が苦手な方でもきっと楽しめるはず。多くの漫画ファンに読んで欲しい、オススメの漫画です。

魔法使いの娘ニ非ズ(1) (ウィングス・コミックス)著者:那州雪絵出版社:新書館発行日:2011-02-25

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