「魔法使いの娘」全8巻―オカルティック・ホラーの隠れた名作

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那州雪絵さんの「魔法使いの娘」。オカルト・ホラー漫画ジャンルの隠れた逸品。個人的に大好きな作品です。

「魔法使いの娘」は2002年~2009年まで「月刊ウィングス(のち隔月刊化し「ウィングス」)」に連載され、単行本全8巻で完結。続編に「魔法使いの娘二非ズ」があり、こちらも全7巻で完結しています。

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「魔法使いの娘」レビュー

あらすじ

「最強の陰陽師」として名高い義父・鈴の木無山(すずのき・むざん)と二人暮らしをする、女子高生・鈴の木初音(はつね)。国家的な仕事にも関わる退魔のプロフェッショナルだが、ズボラで生活力の無い無山のせいで、家事に奔走する毎日。

そんなある日、二人の若者が自宅を訪れる。見知らぬ彼らに戸惑う初音のもとに、無山は電話で「二人のうち一人は、初音の命を狙う鬼。もう一人は、それを防ぐ自分の弟子だ」と告げる。


[那州雪絵 著 新書館「魔法使いの娘」1巻より引用]

それは初音を後継者にしたい無山が、彼女を焚きつけるために仕掛けた試練だった。陰陽師を継ぐ気はさらさらない初音だが、しかし鬼を見分けないことには自分の命が危うい。やむなく無山からの課題に向き合うが…。

基本一話完結の退魔ストーリー

…以上が「魔法使いの娘」第一話のあらすじ。以下、物語の全体に触れますが、そのためには第1話の結末について、ネタバレしてしまう可能性あり。知りたくない!という方は先にコミックス1巻をご覧ください。

…いいですか?

…続けますよ?

では続きを。

「魔法使いの娘」のメイン登場人物は4人。

  • 初音…主人公。強い霊感を持つ高校生。のち高校を卒業し、専業主婦(鈴の木家の家事手伝い的立場)に。
  • 無山…初音の義理の父。バツイチ。生活能力はゼロだが、鈴の木流当主にして最強の陰陽師。
  • 兵吾…無山の弟子。長身のイケメンで霊感を持つ。故あって鈴の木家のドレイ。
  • 小八汰(こやた)…無山の式神。見た目は少年だが、本当の姿は…。

話が進むに従い、さらにユニークなキャラクターも登場しますが、序盤はこのような人間関係で物語が進行。


[那州雪絵 著 新書館「魔法使いの娘」1巻より引用]

ちなみに「陰陽師(おんみょうじ)」とは、占術や祭祀を司り、時に退魔業も行う職業。陰陽師と言えば安倍晴明が有名ですが、本作では退魔に加え、呪術師的な能力も持つ、という存在です。

霊や物の怪を見たり触れたりする以外にも、霊道を通ることで空間移動をしたり、わりと何でもありな能力を持つ陰陽師は、いわば「魔法使い」的な存在。本作のタイトル「魔法使いの娘」も、そこに起因しています。

1話完結形式のカラッとしたホラー

物語は基本的に1話完結形式の「魔法使いの娘」(前後編パターンもあり)。霊感を持つがプロの陰陽師ではない初音が、無山のいい加減(?)行動に由来する「とばっちり」を受けて、兵吾らとドタバタする、というのが各話のパターン。

物語の全体的なテイストは、那州雪絵さんのサラリとした絵柄と相まって、オカルト・ホラー漫画としてはカラッとした、比較的ライトなイメージ。

恐ろしい一面も持つけど、人としてはマヌケな無山と、それに神経を尖らせている初音、そして初音に弱みを握られている兵吾の、コミカルなやり取り。キャラクターの楽しい掛け合いが、作品の大きな魅力となっています。

怖い話は容赦なく怖い

「魔法使いの娘」はオカルト・ホラー漫画でありながら、グロ描写は控え目。というかほとんどありません。が、時折、オカルト系の怖い話が容赦なくぶっ込まれてくるから侮れない。


[那州雪絵 著 新書館「魔法使いの娘」4巻より引用]

マンションに出る怖いオバケ「おかあさん」を描く第14話(4巻収録)、自動車教習所に通う初音が路上教習で恐怖体験をする第22話(6巻収録)など、恐ろしい怪奇系の話、ゾッとする話が随所に仕込まれています。

えげつない表現に頼らずに、ジワジワと読者を恐怖に追い詰める話。オカルト・ホラー漫画好きも納得の怖さがあります。メインキャラクターのやり取りや、物の怪が絡むユニークな話とのコントラストも相まって、怖い話がより怖く。

魅力的なサブキャラクターたち

「魔法使いの娘」の魅力の一つは、キャラクターの個性。メインキャラクターはもちろん、サブキャラクターも個性派揃い。

  • 無山の兄弟弟子・無畏(むい)。無山とは因縁があるようで…
  • 無畏のお付き(?)で生意気な少女・操名(あやな)。その正体は…
  • 一見ヤ◯ザな超ホーリーパワーの持ち主・Jr.(ジュニア)

といった準レギュラーたちが、物語の世界観を支えます。

オムニバスのホラー漫画とはひと味ちがう、全8巻という長編漫画ならではのキャラクター構成。「怖い」だけではない、ストーリー漫画としてのおもしろさがあります。

ちなみに彼らをはじめ、劇中で登場した人物の一部は、続編である「魔法使いの娘二非ズ」にも出演。思わず「ニヤリ」とするキャラクターの登場も。

初音と無山の親子関係の謎

そんなまったり(?)退魔ライフ。恐ろしくも、ゆるゆるな雰囲気が続くのか…と思いきや、物語は終盤で大きく加速します。

そもそも気になるのは、初音と無山はなぜ「義理の親子」なのか?ということ。初音の出生の秘密、無山と親子となった経緯、などの謎要素が、「魔法使いの娘」の根底にあります。


[那州雪絵 著 新書館「魔法使いの娘」7巻より引用]

やがて自らの生い立ちを知り、自身の運命に立ち向かっていく初音。果たして彼女が見る「真実」とは?序盤から張り巡らされてきた伏線も回収され、7~8巻で物語は息つく暇もない、怒濤の展開に。そして迎えるラストは…?

まとめ

以上、オカルティック・ホラー「魔法使いの娘」全8巻のご紹介でした。キャリアのある漫画家・那州雪絵さんならではの物語運びは、読めば読むほど味わいの出る、飽きのこないおもしろさがあります。

そして話は続編「魔法使いの娘二非ズ」へ。一応の収束を見た初音と無山の物語とは少し趣きを変え、少し成長した初音が陰陽師となって、怪異現象にあう人々に関わっていくという構成に。

この「魔法使いの娘二非ズ」が、実に洗練されたオカルト・ホラー漫画に仕上がっており激烈にオススメなのですが、そちらを楽しむために、まずは「魔法使いの娘」でその世界観にどっぷり浸ってみてください。怖い系の漫画ですが、過激な表現が無いので、怖い話が苦手な方でもきっと楽しめるでしょう。

魔法使いの娘(1) (ウィングス・コミックス)著者:那州 雪絵出版社:新書館発行日:2003-09-25

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