「ザ・ファブル」―休業中の殺し屋。その平穏でない日々

仕事を休んで、一年間大阪で普通に暮らせ―。

そんな変わった命令を受けた伝説の殺し屋を描いた漫画が、南勝久氏描く「ザ・ファブル」。

ヤングマガジンに連載中で、現在は単行本が9巻まで刊行されています。

スポンサーリンク

あらすじ

超人的な能力を持つ伝説の殺し屋。裏社会に生きる彼は、「寓話」という意味を持つ「ファブル」と呼ばれていた。

東京で大きな仕事を終えた彼は、相棒の女と共にボスから命令を受ける。

「一年間、大阪で誰も殺さずに一般人として平和に暮らせ」

プロとして成長するために、知らない土地で初めての事を経験しろ。バイトするもよし、友達や恋人を作るもよし。普通に生きる人間を学べ。

そして二人は「佐藤明」と「佐藤洋子」という兄妹として大阪へ。ボスと取引のある組のはからいで生活をはじめる。

しかし彼の素性に疑問を抱く組幹部は、ファブルの周辺に探りを入れはじめ―。

「ザ・ファブル」感想

8巻まで読了。「ザ・ファブル」の感想です。

あらすじだけ見るといかにも殺伐とした裏社会もの。ですがこの「ザ・ファブル」、独特な魅力を持つ漫画です。

まず主人公である明=ファブル。幼少より過酷なの訓練を受け、眉一つ動かさずにターゲットを仕留めるプロ。一重でややタレ目。基本的に無表情…なのですが、「ジャッカル富岡」というお笑い芸人の大ファン。彼の映像を見ると大爆笑。

人間的な感情が無いかというとそうでもなく、近しい人を助けたいという気持ちをあらわすことも。「ペットを飼え」というボスの指令で買ったのは19万円のインコ。消した人間の数は軽く数十名を超えるが、決してシリアルキラーではなく、無益な殺生はしない…という何ともとらえどころのないキャラクター。

「妹」という設定の洋子はファブルのサポート役。美人で酒豪。飲み屋で言い寄ってきた男たちを酔い潰させて、情けない様子を見て爆笑する、というこれまた特異な趣味を持つ。

この二人が「一年普通に暮らそう」と努力する様にコミカルさを感じるのですが、そこは嗅覚の鋭い裏社会。ファブルが異質過ぎるがゆえにさけられないトラブルが起きてしまう。「殺し屋が普通の生活を送ろうとする」というギャップから生じる笑いと、その裏に常に漂う殺伐さが表裏一体となり生み出す独特の緊張感。これこそが「ザ・ファブル」が読者を引きつける魅力。おもしろいです。

自分に良くしてくれた女性や職場の仲間に対して、人間らしさを垣間見せるファブル。ボスの指令の表向きの理由は地下に潜ることですが、実はその裏には別の目的があって―。そのあたりは6巻で描かれますが、知ってしまうとますますファブルの行く末が気になります。

8巻では彼を先生と慕う若手と森にこもるファブル。なんと野生のクマとバトル開始。一方留守番の洋子はチャラい兄ちゃんとバーでゴングを鳴らす。並行して起こる戦いの結末は…。正直めっちゃ笑いました。おもしろすぎる!

というわけで「ザ・ファブル」、一度読み始めたら止まらない、独特の魅力を持つ漫画。表紙が怖い…と敬遠していた方も、ページをめくればそのおもしろさにやみつきになること請け合いです。おすすめ。

漫画データ
タイトル:ザ・ファブル(1) (ヤングマガジンコミックス)著者:南勝久出版社:講談社発行日:2015-03-06