「ザ・ファブル」―表と闇の狭間に生きる伝説の殺し屋

仕事を休んで、一年間大阪で普通に暮らせ―。

そんな変わった命令を受けた伝説の殺し屋を描いた漫画が、描く「ザ・ファブル」。

これがバツグンにおもしろい!

作者は南勝久さんで、講談社ヤングマガジンに連載中。

単行本も10巻を超えて刊行され、人気の漫画です。

本記事前半では漫画「ザ・ファブル」の紹介と感想を、後半では刊行されている全巻のレビューをお伝えします。

あらすじ

超人的な能力を持つ伝説の殺し屋。裏社会に生きる彼は、「寓話」という意味を持つ「ファブル」と呼ばれていた。

東京で大きな仕事を終えたファブル。相棒の女と共にボスから命令を受ける。

「一年間、大阪で誰も殺さずに一般人として平和に暮らせ」

プロとして成長するために、知らない土地で初めての事を経験しろ。バイトするもよし、友達や恋人を作るもよし。普通に生きる人間を学べ―。

南勝久「ザ・ファブル」1巻
[南勝久 著 講談社「ザ・ファブル」1巻より引用]

ボスの命に従い、「佐藤明」と「佐藤洋子」という兄妹となった二人。大阪へ向かい、組織と取引のある組のはからいで、一般の生活をはじめる。

しかし彼の素性に疑問を抱く組幹部は、ファブルの周辺に探りを入れはじめ―。

「ザ・ファブル」レビュー

伝説の殺し屋が送る日常

プロスポーツや芸術家など、どんなジャンルにもいる天才。それは裏社会にも存在する。プロとして突出した能力を持つ殺し屋・ファブルと、その相棒である女性。二人が稼業を一年間休業し、大阪で過ごす様子を描く漫画が「ザ・ファブル」です。

1巻冒頭、目出し帽をかぶり、超人的な身体能力でターゲットの組関係者を次々と始末していくファブル。相棒の待つ車に乗るやいなやテレビを見始め、好きなお笑い芸人のネタに爆笑する。

そんな二人のボスは、「今年は仕事をやりすぎたので一年ほど休業してもぐる」と告げる。取り分5千万を渡された二人は、兄妹という設定で一路大阪へ―、という出だし。

のっけから掴みどころのない、ファブルというキャラクターに引き込まれます。

ファブルのユニークなキャラクター

この「ザ・ファブル」、何と言ってもファブル=佐藤明のキャラクターがユニーク。

幼少より過酷なの訓練を受け、眉一つ動かさずにターゲットを仕留めるプロ。一重でややタレ目。基本的に無表情…なのですが、「ジャッカル富岡」というお笑い芸人の大ファン。彼の映像を見ると大爆笑。

仕事の時は無慈悲で冷徹。淡々と任務をこなす「プロ」であるファブル。一般人とはそもそも感覚・感情のポイントが異なるよう。ですが人間的な感情が無いかというとそうでもなく、時おり独特の感情を示すことも。

南勝久「ザ・ファブル」2巻
[南勝久 著 講談社「ザ・ファブル」2巻より引用]

そして平穏に暮らすために、一般の感覚を身につけようと「努力」する。消した人間の数は軽く数十名を超えますが、殺人に快楽を覚えるシリアルキラーではなく、あくまでもプロ。

無益な殺生はしない…という、何ともとらえどころのない人物です。

妹・洋子も強烈

そんな兄・ファブルに負けず劣らず強烈なキャラクター性を持つのが、「妹」という設定の洋子。

年齢は20代前半?ファブルのサポート役で美人、そして酒豪な彼女。飲み屋で言い寄ってきた男たちを酔い潰して、情けない様子を見て爆笑する、というこれまた特異な趣味を持ちます。

裏社会に生きる彼女も、その生い立ちには悲しい過去があり、それが劇中で少しずつ明かされていきます。

南勝久「ザ・ファブル」4巻
[南勝久 著 講談社「ザ・ファブル」4巻より引用]

が、そんなことはどうでもいいぐらい、彼女の飲みバトルがおもしろい(笑)。ファブルが緊迫感のある闘いをしている裏で行われる、洋子のバーでの闘い。毎回爆笑します。

そして気になるのは彼女の真の実力。洋子自身は殺し屋なのか?洋子は強いのか?11巻にてその片鱗が明かされます。要注目。

この二人が「一年普通に暮らそう」と努力する様が、コミカルで実におもしろい。普通の感覚を持つ洋子はともかく、「殺しのスペシャリスト」として育てられたファブル。

世の中には知らないことだらけなのですが、それを天性・天才的なセンスで乗り越えていく様から目が離せません。

真黒組との関わり

平穏に暮らせとの命令で大阪に来たファブルたち。仕事でつながりのある真黒組に住居を提供され、そこで一般人としての生活をスタートします。

が、ファブルたちが「伝説の殺し屋ではないのか」、との噂は隠しようもなく、組の人間との軋轢が否応もなく展開。

特に若頭は、ファブルたちが来たことにより起こる揉め事を懸念。部下に命じてファブルの周辺を探らせますが、やがて緊張が高まり―?

その性質ゆえ、普通に生活することもままならないファブルたち。彼らが望むと望まざるとに関わらず、裏社会との接触は避けられない。コミカルさと表裏一体になった緊張感があります。

時給800円の殺し屋

そんなファブル。揉め事が一段落したあと、若頭の勧めから一般人としてアルバイトを始めることに。

南勝久「ザ・ファブル」3巻
[南勝久 著 講談社「ザ・ファブル」3巻より引用]

能力はあるのですが、その特異な性格ゆえに、なかなか仕事が決まらないファブル。偶然顔見知りになった女性・ミサキの紹介で決まったのは、彼女も働く小さいデザイン会社の雑用係。

その時給は800円なり。

不平不満を言うこともなく淡々と働き、ユニークな感性を発揮して。会社でも意外な活躍を見せていくファブル。その様子もまた趣があって、殺伐としたシーンとは対照的なおもしろさ。

迫力のアクション

しかし裏社会の超人を、世の中の方が放っておけない。

ボスの命令もあり、ファブル自身は決して揉め事を起こそうとしないのですが、「強い」という、それだけで事件に巻き込まれていくファブル。やがてミサキの会社でも不穏な事件が起こり―。

南勝久「ザ・ファブル」6巻
[南勝久 著 講談社「ザ・ファブル」6巻より引用]

そして否応無しに展開されるアクションが勃発。そこで披露される、ファブルの暗殺者としての独特の戦闘方法。ただのドンパチではないおもしろさがあります。

日常パートとのギャップも手伝い、息を呑む迫力。「静」と「動」が絡み合い、より物語に深みを産み出します。

まとめ

というわけで「ザ・ファブル」、一度読み始めたら止まらない、独特の魅力を持つ漫画。表紙が怖い…と敬遠していた方も、ページをめくればそのおもしろさにやみつきになること請け合いです。

そしてそのおもしろさの源は、「オモテとウラの狭間感」。裏社会に生きる超人が、突然日の当たる場所に身を置く。表社会で一見普通に生活しながらも、一歩、足を斜めに向けると待っているのは、日常としての裏社会。

「殺し屋が普通の生活を送ろうとする」というギャップから生じる笑いと、その裏に常に漂う殺伐さが、表裏一体となり生み出す独特の緊張感。

クルクルと回るコインがどちらに倒れるかわからない、先の読めないおもしろさがあります。「ザ・ファブル」、読んで絶対損の無い、オススメの漫画です。

ザ・ファブル(1) (ヤングマガジンコミックス)著者:南勝久出版社:講談社発行日:2015-03-06

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