子供の頃ヒーローものの漫画を読んで、ものすごく怖いシーンを見たのが記憶に残っていました。でもそれが何の漫画だったかずっとわからなかったのですが、最近ようやく判明。
桑田次郎さんの漫画版「ウルトラセブン」です。
赤・白・黒の装幀が、美しくも強烈なインパクトを放つ電子版の表紙。全3巻のうちの2巻に、自分の記憶に残っていたシーンがありました。スッキリ!
そんな桑田次郎版ウルトラセブン。通して読むのは初めてだったのですが、これがなかなか味わい深い一作。昭和50年代の漫画ですが、レトロを通り越して新鮮さが。何より桑田次郎さんの描く線に大きな魅力があることに気づきます。
桑田次郎版「ウルトラセブン」レビュー
概要
「ウルトラセブン」は、1967~1968年にかけて放映された特撮テレビ番組。そのクオリティの高さから、ウルトラマンのシリーズでも人気の一作。私も再放送をテレビで見た記憶があります。
そのウルトラセブンをコミカライズした漫画版「ウルトラセブン」は、「少年マガジン」版と「月刊ぼくら」版の二つが存在。前者は桑田次郎さん、後者は一峰大二さんによって、それぞれ描かれています。
今回読んだのは、「8マン(エイトマン)」などで有名な桑田次郎さんによる版。なお「桑田次郎」は旧ペンネームで、現在は「桑田二郎」名義とのことです。漫画「ウルトラセブン」では作者名が「桑田次郎」となっていますので、本記事ではそれにならった表記にしています。
収録タイトル
桑田次郎版「ウルトラセブン」の収録タイトルは以下の通りです。
第1巻
- 姿なき挑戦者
- 湖のひみつ
- 金色の龍
- 海底基地を追え!
- 北へ還れ!
第2巻
- 第四惑星の悪夢
- ウルトラ警備隊西へ
- 水中からの挑戦
- 狙われた街
第3巻
- 栄光は誰のために
- 超兵器R1号
- セブン暗殺計画
- K団地の怪
- 闇に光る目※
- ノンマルトの使者※
- たおせ!アイアンロックス※
漫画版「ウルトラセブン」本編は、3巻収録の「K団地の怪」が実質最終回。※印が付いている3作は特に説明がありませんが、コピー原稿のような感じで他の13編とは体裁が異なります。
また3巻表紙のメトロン星人は、2巻収録の「狙われた街」に登場。3巻では登場しませんのでご注意を。っていうか2巻と3巻の表紙、逆だよね。
黒ベタが産み出す独特の迫力
昨今の漫画では、ほぼ見られなくなった画風。スクリーントーンを使っていないからなのでしょう。多彩な線種と黒ベタから生み出される迫力を、漫画全体から感じます。と同時に、独特の色気を感じるのが不思議ですね。
少年漫画ということで、ストーリーは悪い意味ではなく、程よい適当さを含むもの。しかしその中にも社会的なメッセージが織り込まれ、社会派のヒーローものである「ウルトラセブン」らしさがあります。
そしてウルトラセブンの描写がユニーク。一峰大二版とも共通しますが、ウルトラセブンに「眼」が描かれているのが面白い。ウルトラマンに目玉を入れると違和感があるのに、セブンに入れるとおそろしくなじみますね。不思議。
記憶に残る「怖い回」
さて私が記憶に残っていた怖い回。2編あるのですが、一つは「水中からの挑戦」、もう一つは「狙われた街」でした。
「水中からの挑戦」では、とある村で「人が溶ける」という、謎の現象が起こります。これがもう怖くって怖くって…。
今見たらそのシーンは序盤に少し描かれるだけなのですが、トラウマ的なインパクトがありました。
「狙われた街」では、メトロン星人が登場。テレビでも有名な話ですが、彼の仕組んだ罠により人々が凶暴化。その影響を受けた少女が、斧を持って両親を…ああっ!これ以上は怖くて書けない!(笑)
少年向けの漫画ですが、大人になった今見ても、ちょっとブルッと来る怖さ。これらは桑田次郎氏の「黒色」の描き方から、独特の「昏さ」が生み出されている感じ。
楳図かずお版「ウルトラマン」のバルタン星人回も、ものすごく怖かった記憶がありますが、やはりトーンを多用しない当時の画法、迫力がありますね。
まとめ
というわけで桑田次郎版「ウルトラセブン」、長年気になっていたことがわかってスッキリ!でした。今読むと、古さよりもむしろ新しさを感じる漫画。面白いので気になった方はぜひ読んでみてください。
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