以前ご紹介した諸星大二郎「マッドメン」シリーズのムック本。
「文藝別冊 諸星大二郎 マッドメンの世界」に引き続き、本日2015年6月29日発売の「諸星大二郎 『妖怪ハンター』異界への旅 (別冊太陽 太陽の地図帖 31)」を購入しました。こちらです。
「妖怪ハンター」シリーズの主人公・稗田礼二郎(ひえだれいじろう)が大きくあしらわれた表紙。書籍としてお目見えするのは2014年発売の「夢見村にて 妖怪ハンター 稗田の生徒たち (1)」以来です。
おもな内容
本書には妖怪ハンターシリーズの舞台背景や考察、各作品解説、諸星氏へのインタビュー、そして完全新作描きおろし「雪の祭」が収録されています。
「雪の祭」全16Pは、稗田と雑誌編集者がとある山村の「雪神祭」を取材に訪れ、不思議な体験をするー、というお話。派手さはありませんが、日本古来の怪異を題材にする同シリーズらしいエッセンスの詰まった短編です。
注目は諸星先生がこれまでのシリーズを振り返って、作品の成り立ちや背景を解説してくれるインタビュー。山や里のネタが尽きてきたから海の方へ話を持っていった、とか、もう稗田は出なくてもいい、などショッキング?な発言があって興味深い。
また巻末には諸星氏の一言コメントつき「妖怪ハンターシリーズ」全作品リストを掲載。リストを見たところ…良かった、読み漏らしは無いようです(笑)。まだ本書の全ての内容に目は通せていませんが、これからじっくり読み進めていく予定。
「妖怪ハンター」シリーズとは?
話はさかのぼって本編について。このシリーズは、考古学者・稗田礼二郎が日本各地で日本の神話に由来した不思議な出来事や怪異にであう、というお話。といっても彼は妖怪を退治するわけではなく、あくまでも傍観者。自身の生存のためにアクションを起こすことはありますが、基本的には事件に巻き込まれる人。「妖怪ハンター」とは、研究対象が異質なために異端扱いされている稗田を、学会や学生がやや揶揄気味に呼ふところから来ています。
1974年に週刊少年ジャンプに掲載された「黒い探求者」を皮切りに、ヤングジャンプ、ベアーズクラブ、ウルトラジャンプ、メフィスト、アフタヌーンなど掲載誌を変えながら40年近くに渡り続いているシリーズ。作家の京極夏彦氏が本誌冒頭にて寄せられた文章にて、諸星作品を「何処か知らない場所に連れて行かれるような」感じがある、と評されています。これは言い得て妙で、まさにそのような諸星作品の魅力が味わえる28作品(+本誌収録の一作品)が現在発表されています。うち2009年発表の「美加と境界の神」のみ単行本未収録ですが、他は全て読むことが可能です。興味を持たれた方は初期の作品をまとめたこちらの文庫本がオススメです。
まとめ
というわけで愛読している「妖怪ハンター」シリーズのムック本を購入しました、というお話でした。本書はその性質的に各話のネタバレも若干含みますので、できれば全話をチェックしてから読みたいところ。ファンの方は本書を手に入れてから未読作品がないかチェック!初心者のかたは上述の「地の巻」「天の巻」「水の巻」から是非「妖怪ハンター」シリーズに触れてみてください。
以下は2015年6月時点での全作品リスト、及び手に入りやすい単行本リストです。ご参考までに。
全作品リスト(2015年6月時点)
- 黒い探求者(1974年)
- 赤い唇(1974年)
- 死人帰り(1974年)
- 生命の木(1976年)
- 闇の中の仮面の顔(1978年)
- 海竜祭の夜(1982年)
- ヒトニグサ(1982年)
- 花咲爺論序説(1985年)
- 幻の木(1987年)
- 川上より来たりて(1988年)
- 闇の客人(まろうど)(1990年)
- 天神さま(1990年)
- 天孫降臨(1990~1991年)
- うつぼ舟の女(1991年~1992年)
- 蟻地獄(1992年~1993年)
- 黄泉からの声(1993年)
- 海より来るもの(1994年)
- 産女の来る夜(1994年)
- 六福神(1995年)
- 帰還(1995年)
- 鏡島(1995年)
- 淵の女(1995年)
- 魔障ヶ岳(2003年~2005年)
- それは時には少女となりて(2004年)
- 書き損じのある妖怪絵巻(2007年)
- 美加と境界の神(2009年)※単行本未収録
- 悪魚の海(2010年)
- 夢見村にて(2012年~2013年)
- 雪の祭(2015年)
手に入りやすい単行本
- 妖怪ハンター 地の巻 (集英社文庫)
- 妖怪ハンター 天の巻 (集英社文庫)
- 妖怪ハンター 水の巻 (集英社文庫―コミック版)
- 稗田のモノ語り 魔障ヶ岳 妖怪ハンター
- 闇の鶯 ※妖怪ハンターシリーズ以外も収録
- 夢見村にて 妖怪ハンター 稗田の生徒たち (1) (ヤングジャンプコミックス)
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