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漫画『恋は雨上がりのように』―女子高生とファミレス店長、恋の結末は?

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冴えないファミレス店長と、彼に恋をした女子高生。そんな二人の恋模様を描いた眉月じゅんさんの人気漫画『恋は雨上がりのように』。全10巻で完結となりました。

連載は小学館のビッグコミックスピリッツ。テレビアニメ化され、また実写映画も公開される、人気の作品。完結を受けて、ネタバレしない程度に感想など。

『恋は雨上がりのように』感想・レビュー

あらすじ・概要

アキレス腱を断裂、短距離の道を断念した元陸上部の女子高生・橘あきら。現在はファミレスでアルバイトに勤しむ。

そのあきらが片思いをしているのは、バツイチ子持ちの冴えない店長・近藤(45歳)。かつて客として訪れた時、優しく接してくれた彼に心を奪われ、以降その思いを募らせていく。

一方の近藤、年齢差のあるあきらの好意に戸惑いつつも、その若さゆえの真っ直ぐな心に刺激を受け、一度は諦めた文学の道へ再び気持ちを寄せていくことに。

目標を失った少女と、人生停滞気味な中年男性。そんな二人の揺れ動く心情、そして再生が、歳の差恋愛を軸に全10巻で描かれていきます。

最終巻の感想

「恋は雨上がりのように」が残り2話で完結、という情報がネットメディアなどで流れました。9巻が出ていた時だったので、10巻で完結する計算。

まず感じたのは

「おいおい、この展開であと1巻で完結できるのか…?」

という心配。

そして最終10巻を読んだ感想は…

良かった、と思います。

ネタバレは無しなので詳細は書きませんが、随所に「恋は雨上がりのように」らしい爽やかさ・実直さがあり、またあきらと近藤の心情が、冒頭から丁寧に描かれていたのも印象的。物語の締めくくりにふさわしい、胸に響く「想い」が詰まっていました。

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賛否両論も

しかし、というかやはり、ラストまたは物語全体について、賛否両論はあるようです。

Amazon:恋は雨上がりのように(10)カスタマーレビュー

納得・満足という感想もあれば、不完全燃焼という意見も。

私はラストについては良かったという感想ですが、「恋は雨上がりのように」全10巻という物語を通してみると、枝葉を広げすぎたな、という印象です。

あきらと店長「以外」の物語、特に陸上部の友人・はるかとの関係を描いた部分は、本作に無くてはならないものだと思います。ただその他については、個々の部分で読み応えはあったけど、それほど掘り下げなくても良かったんじゃないか、と。

既刊を読んでいる最中から、無事に物語をたためるのか、という心配がありました。終盤はキレイにまとまりましたが、全体を振り返ると消化不良な部分も

これが作者・眉月じゅんさんが本当に描きたかったものなのか、それとも人気が出たことを受けての編集サイドの意向なのか、それは読者としては分かりません。しかし本筋以外の部分から中途半端な印象を受けることも事実。

9巻までのペースを維持するのであれば15巻ぐらい欲しかったし、むしろ本筋を中心に5~6巻程度にまとまるぐらいだったなら、より濃縮された物語になったような気がします。勝手な感想ですが。

「恋は雨上がりのように」の輝き

では「恋は雨上がりのように」は駄作なのか、というと決してそうではなく、漫画作品として輝く部分があるのも確か。

読んでいて個人的にスゴイな、と感じたのは、セリフに頼らずにキャラクターの仕草・表情だけで、読者にその気持ちを想像させる、想像せずにはいられない、そんな表現力を随所で見せつけてくれること。

例えば1巻、第1話の終盤で、部活をやめたあきらが後輩と会話するシーン。部活動に励む後輩と、怪我で陸上を諦めたあきら。この次のページで「バイト行こ。」という心の中のセリフが入りますが、あきら自身の、きっと複雑な胸の内を表すセリフは描かれません。また以降の物語でも、その寡黙なキャラクター性もあるでしょうが、あきらの心中はセリフではほとんど表現されない。

眉月じゅんさんはこういう表現がめちゃくちゃウマイ。「今、あきらは何を考えているんだろう?」ということを読者が想像したくなる絵を描く。セリフではなく、コマで何かを語るような。

この絶妙なセンスこそが、「恋は雨上がりのように」をヒットさせた源であり、またこの作品が輝きを持つ大きな要因であると、個人的には感じています。

キャラクターの思いをセリフや説明で語らせる漫画が多い中(それが悪いわけじゃないけど)、セリフに頼らずにキャラクターの心情を表現する稀有な作品。「漫画の凄さ」を感じさせてくれます

自分が読んだ中では、押見修造さんの「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」、白山宣之さんの短編集「地上の記憶」収録の「陽子のいる風景」「ちひろ」と同様の凄みを、この「恋は雨上がりのように」から受けました。

志乃ちゃんは自分の名前が言えない押見 修造:太田出版
地上の記憶 (アクションコミックス)白山宣之:双葉社

まとめ

というわけで「恋は雨上がりのように」全10巻。全体的には「惜しい…!」と感じる部分も多々ありますが、随所で作者・眉月じゅんさんの凄さを見せつけられた漫画です。

青年誌連載ということで「女子高生に惚れられる中年という夢」のような見方をされることもありますが、読めばそうでないことは一目瞭然。丁寧に描かれる高校生の、そしてかつて青年だった中年の「青春」が心に残ります。眉月じゅんさんの次回作にも期待。

しかし吉澤くんの最後は何だか不憫だな(笑)。

コメント

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