「ダンジョン飯」―モンスターを調理して自給自足の迷宮攻略ファンタジー

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魔物を倒し、トラップを解除し、迷宮の奥深くへ進むパーティ。そして冒険を支えるのは、食料。その食料を、現地調達したモンスターをその場で調理することでまかなう、というありそでなかった新感覚ファンタジー「ダンジョン飯」。

作者の九井諒子さんは数多くの短編を輩出していますが、本作が初の長編。単行本は記事作成現在、8巻まで刊行。大人気につき KADOKAWA エンターブレインの「ハルタ」誌で絶賛連載中です。

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「ダンジョン飯」レビュー

あらすじ

かつて栄華を誇り、そして滅びた黄金の国。地下深くでその国を囚え続ける「狂乱の魔術師」を倒せば、そのすべてを得ることができる。

…という噂で攻略者の絶えないダンジョンにて、冒険者・ライオス一行はレッドドラゴン(炎竜)との戦いで全滅の危機に。妹・ファリンの魔法で地上に帰還するも、ファリンはレッドドラゴンの胃の中に。

ダンジョン下層に取り残された彼女を救うべく、再び深部を目指すライオスたち。しかし先立つ物の無い彼らは、迷宮内に生息するモンスターを倒し、調理し、食べて、奥へ進むという自給自足の道を選ぶことに。

果たしてモンスターはウマイのか?そして彼らはファリンを救うことができるのか?

ダンジョン飯 1巻 (HARTA COMIX)九井 諒子:KADOKAWA

グルメ漫画風味ファンタジー

ってな感じで開幕の「ダンジョン飯」。

  • ライオス(トールマン=人間):戦士
  • マルシル(エルフ):魔法使い
  • チルチャック(ハーフフット):?盗賊的な役回り

これら主なメンバーに、モンスター料理に異様に詳しいドワーフのセンシが加わり、ファリンの救出に向かいます。

その中で随所に登場するのが、倒したモンスターを調理する、タイトル通りのダンジョン飯。これがただ単に取って食う、だけではない。第一話の料理は、「大サソリと歩き茸の水炊き」。

  • 材料 3~4人分
  • 大サソリ…1匹
  • 歩き茸…1匹
  • 茸足…2本
  • 藻(花苔・イシクラゲ)…適量
  • サカサイモ…中5本程度
  • 干しスライム…お好みで
  • 水…適量

のように、現実世界では全く役に立たないレシピをグルメ漫画よろしく、詳細な調理過程とともに掲載。パロディ風味がシュールな笑いを誘います。

必然的にリアルなファンタジー描写

コメディ的な要素の多い「ダンジョン飯」ですが、しかし適当なファンタジーかと言うと、そうではない。むしろ、世にあふれるファンタジー漫画の中でも、群を抜いて本格的。

なぜなら、作品の中心に「食べる」という行為が存在しているから。ドラゴンほか、スライム、バジリスク、ウンディーネなど、おなじみのモンスターたちが多数登場する世界観。それを「倒して終わり」ではなく、「調理して食う」までを描く物語。どの部位が食えるのか、どうやったら美味しく食えるのか、が非常に重要になり、必然的に描写がリアルに。

このリアル加減が、絶妙におもしろい。ただ肉を焼いて食えば良い、野菜を取れば良い、という訳ではなく、栄養バランスや見た目も考えた「ダンジョン攻略のための体づくり」を目指した食事。それがファンタジーの世界で行われている、というシュールさに、思わず笑いが。

ちなみに主人公ライオスは見た目はまともだけど、かねてより魔物食いに興味津々の変わり者(愛読書は「迷宮グルメガイド」)。センシは迷宮での自給自足のエキスパート。それに対して魔物食に抵抗のあるマルシルが激しく抵抗する、しつつも食う、というのがお約束の笑いどころ。

ファリンを救出するも…

モンスター調理についつい話題がいきがちですが、ドラゴンに食われたファリン救出が「ダンジョン飯」の目的。ちょっとネタバレ気味ですみませんが、その目的は4巻で達成。救出、というか、すでに消化されてしまった彼女を、魔法で蘇生することに成功します。

が、レッドドラゴンが「狂乱の魔術師」の創造物であったこと、そして蘇生の方法に問題があったことが、事態をややこしく。

詳しいことは本編でお楽しみいただきたいので割愛しますが、ライオス一行はファリン救出に失敗し、さらに彼女は狂乱の魔術師の支配下に。大きなダメージを追った彼らは、やむなく一時撤退を余儀なくされます。

新たな展開へ

すったもんだの挙げ句、ファリンを助けて大団円かな、と個人的には思っていたのですが、「ダンジョン飯」の物語は、予想していなかったさらなる深みへ。これがゾクゾクするような、緊迫の展開。

2巻で登場し、ライオス一行を(いろいろ行き違いもあって)危険な存在と認識する冒険者・カブールや、ライオスのパーティにかつて属していた元・仲間たちとの交流(?)。そしてライオスたちをマークするようになった迷宮の主・狂乱の魔術師の、不穏な動向。

さらに、迷宮の異変を察知した某種族の軍団が介入。迷宮事態の存続にも危機が…?ライバル風味だったカブールが物語のキーを握るいい役回りになってきて、グッとおもしろくなってまいりました。

その中でも、そっち方面の動きはつゆ知らず、しっかりメシを食って「ダンジョン飯」してるライオスたち(笑)。物語の本質を外さない、一貫したおもしろさがあります。

まとめ

以上、九井諒子さんの「ダンジョン飯」のレビューでした。クオリティの高いファンタジー漫画と言えば、「ベルセルク」のようなハードな作品が注目されがちですが、まったく対象的なテイストながら、それに負けじ劣らじのおもしろさ。

九井諒子さんは「ダンジョン飯」以前は多くの短編を輩出。「竜のかわいい七つの子」のように、七編全てタッチが異なる作品を描き、そのどれもが素晴らしくウマイ、というスゴイ漫画家さん。その手腕は、本作でも如何なく発揮されています。

ビジュアルもストーリーもハイレベルなファンタジー・コメディ。巻数も揃ってきて、読み頃の一作です。

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