女性考古学者・レイは、今日も世界を駆け巡る。日記を残して失踪した祖父の足跡をたどって―。
岡崎武士さんの「EXPLORER WOMAN RAY(エクスプローラーウーマン・レイ)」。学研の漫画雑誌「コミックNORA(ノーラ)」に1980年代終わりに連載されていた、冒険活劇漫画です。全2巻完結。
「EXPLORER WOMAN RAY」感想・レビュー
あらすじ・概要
考古学教授にして冒険家である杵築麗奈(きづき・れいな)=レイは、双子の大学生・橘舞(格闘担当)と橘真魅(頭脳担当)を助手に、一冊の日記帳を残して失踪した祖父・杵築太平洋(きづき・ひろし)を探し、世界を駆け巡る。
しかしその行く先々には、遺跡を食い物にする企業「FLCL」と、その尖兵である青年リグ・ヴェーダが待ち受ける。彼らの手から遺跡を守りつつ、レイは祖父のもとへたどり着くことが出来るのか…?
…という物語。シリアス風味にコミカル要素やライトなSFを織り交ぜた、少年~青年向けの漫画です。
なお作者の岡崎武士さんは、近年ではヤングマガジン系列で「レッツ☆ラグーン」を連載されていた漫画家さん。
遺跡をめぐるアクション・ドラマ
物語のスタートとなる第一話「アショカの門」で、祖父がかつて訪れたインド王アショカの遺跡の前に経つレイ・舞・真魅。そこをリグ・ヴェーダと配下の部隊が急襲、遺跡に眠る「知識」を奪い合うことに。
リグ・ヴェーダに捕まったレイは、「アショカ王が門を作った本当の意味をもう一度考えてみることね」と言い残し落とし穴へ。のちに門を開いたリグは、その言葉の意味を身を以て知る…といった感じで、祖父の軌跡をたどる冒険が各話で展開されていきます。
「遺跡」という神秘要素と、レイ・舞・真魅がリグの配下である「チープ・ヘッド」部隊と繰り広げるアクションが、本作の面白み。また岡崎武士さんの美麗な絵柄も大きな魅力。絵柄的には萩原一至さん・麻宮騎亜さん辺りの、スクリーントーンを多用したタッチを想像してもらえるとわかりやすいかも(実際に交流があったよう)。
ライバル登場!怒涛の終盤へ
さらに物語が進むと、祖父が「自分だけの遺跡」を作ろうとしていたことが判明。しかし彼の高度な遺跡知識を狙うFLCL、2巻では「新たなライバル」となる人物をレイに差し向けてきます。
命も奪いかねない強引な手法を取る相手に、レイはどのように立ち向かうのか?そしてリグとの関係は?祖父・太平洋を見つけることができるのか?といったストーリーが一気に動き、緊張感MAX!怒涛の終盤へ。
今読むと懐かしさを感じる絵柄や、時折挟まれるオチャラケ要素に戸惑いも感じますが、端正で美麗なキャラクターたちによるドラマやアクション、岡崎武士さんの上手さが発揮されていてなかなか読ませます。っていうか若干20歳ぐらいでこれ描いてたのスゴイ…。
心に残るエピソード「祖父の刻印」
そんな「EXPLORER WOMAN RAY」、ユニークな話が多数収録されてるのですが、特に印象に残るエピソードが1巻終盤収録の「祖父の刻印」前後編。
実はレイとリグ・ヴェーダはかつては恋人関係にあり、共に祖父・太平洋と冒険をした仲間。しかし6年前の太平洋の失踪を機に、袂を分かつことに。
その二人の思い出を絡めながら、太平洋の関わったチベット山奥の遺跡で展開されるアクション、そしてドラマ。これがせつないようなもどかしいような、ちょっとした映画を見ているような読後感。余韻がいつまでも心に残る物語を味わってみてください。
まとめ
以上、岡崎武士さんの漫画「EXPLORER WOMAN RAY(エクスプローラーウーマン・レイ)」感想・レビューでした。
粗さもありますが、全2巻をまとめて読むと短い巻数で手堅くまとまっている、という印象。「昭和のラストに描かれた漫画」という観点から見ても、面白みがあると思います。
なお「EXPLORER WOMAN RAY」の電子版は、主要な電子書籍ストアではebookjapanでの配信となっています。下記リンクよりチェックしてみてください。
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