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「作者そのもの」が詰まった漫画『67歳の新人 ハン角斉短編集』

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漫画『67歳の新人 ハン角斉短編集』。67歳の作者の初単行本、というタイトルそのまんまの一冊。これがなかなか味わい深い内容で…

新人賞を受賞した『山で暮らす男』などの短編を収録。小学館ビッグコミックスより全1巻が刊行。

『67歳の新人 ハン角斉短編集』感想・レビュー

概要

『67歳の新人 ハン角斉短編集』はタイトル通り、作者・ハン角斉さんの短編をまとめた全1巻の短編集。

  • 山で暮らす男
  • 親父のブルース
  • 黒い蝶
  • 眠りに就く時…
  • 案山子峠
  • 模様

以上、小学館の漫画雑誌「ビッグコミックスペリオール」に、2020年~2022年に渡って掲載された短編を収録しています(『模様』のみ描き下ろし)。

作者は「67歳の新人」とのことですが、冒頭「ごあいさつ」によると、漫画家になる夢を高校生で挫折するも、45歳で再びそれを目標に。仕事の傍らに漫画を描き続け、67歳で初の単行本刊行と相成った、という異色の漫画家さんです。

この辺の経歴や創作の背景については、「ごあいさつ」や各話終わりのコメントに、興味深い内容が綴られています。詳しくは本文でどうぞ。

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感想・レビュー

山で一人、気ままに暮らす男は、食料を求めて人里へ。しかしそこで自分が指名手配されていることを知り、出会った人間たちから猟銃を向けられる。

逃げ出すも腹部を撃たれた男。遠い目をしながら、ある母娘と出会った3ヶ月前の出来事を語りだす…

…という冒頭作『山で暮らす男』が、すごいインパクト。物語運びがものすごくスムーズなのですが、どこかしら違和感を覚えるストーリーに、知らず知らず引き込まれていきます。

ほか、

  • 余命宣告を受けた男が、季節外れの「黒い蝶」を見つけ、不思議な体験をする『黒い蝶』
  • 誘拐された娘を探す母親が「山の精霊」に出会い、ある選択を迫られる『案山子峠』

など、写実的な絵柄に幻想的な要素を絡めて紡がれる短編が、講談社系の漫画雑誌で見られるような、荒々しさとリアルさを併せ持つタッチで表現されていきます。

独創的で独特の風味がある各短編は、ちょっとクセが強いけど、洗練された物語運びで予想外の読みやすさ。そして単行本一冊を読み終わって感じるのは、この一冊全体が「『ハン角斉』というコンテンツ」であること。

どの短編からも伝わるのは、「作者そのもの」。ストーリーや設定、キャラクターの表情・感情に、生々しいまでの人間味を感じます。

さらにそれを増幅するのが、冒頭の「ごあいさつ」と、各話終わりの作者コメント。そして何より、『67歳の新人 ハン角斉短編集』という単行本のタイトル

いや、おかしいじゃないですか、このタイトル(笑)。別に『山で暮らす男』でもいいわけで。

そこをあえて「67歳の新人!」「ハン角斉!」とすることで、一冊全体が「ハン角斉」そのものに。そして否が応でも作者そのものを意識せざるをえなくなる。これはタイトルの付け方がウマいわ…

短編そのものを楽しんだあと、不思議と作者の人生に思いを馳せてしまう、奇妙な読後感のある一冊です。

『67歳の新人 ハン角斉短編集』まとめ

以上、漫画『67歳の新人 ハン角斉短編集』の感想・レビューでした。

まあ何というか、世に出た時から「サブカル確定」のような短編集ですが(笑)、いい意味でアクの強い漫画。一度読むと忘れられません。

ちょっと個性的な漫画にチャレンジしてみたい、という方にオススメです。

コメント

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