「人」がいるから「本」がある。「本」があるから「人」が集う。売るほど本がある場所に、今日も本好きたちが足を運ぶー。
児島青さんの『本なら売るほど』。青年店主が営む古書店を中心に、「本と人」にまつわるエピソードがつづられるヒューマン・ドラマです。
連載はKADOKAWAの漫画雑誌「HARTA(ハルタ)」で、2025年7月現在コミックス1~2巻が刊行中。以下『本なら売るほど』の、主なあらすじや見どころをご紹介します。
『本なら売るほど』あらすじ・概要
本好きが高じて脱サラ、古書店「古本十月堂」を開業して6年の、青年店主。
古本屋が「本好き相手の商売である」と同時に、「本に興味が無い人が本を捨てに来る場所である」ことに気づき、悶々とする日々。
今日も閉店後、不良在庫を処分しながら、やりきれない気持ちに。
「…いつまで続けられっかな…」
そんなある日、故人の蔵書整理依頼が舞い込む。「大量の本」を「当日中に査定」しなければならない、というプレッシャーの中、青年店主は「本好きの情念」に触れていくー。
『本なら売るほど』のココが面白い!
読み応えあり!の第一話
以上が第一話、『本を葬送(おく)る』の主なあらすじ。もともとは読切ですが、連載へのきっかけになった話だそうで、完成度がものすごく高い!
古本屋という職業、本を取り扱う仕事の現実、そこに集う人々の生態、などを織り交ぜながら描かれる「本と人のドラマ」。
洗練された絵柄と、巧みな表現力で紡がれるエピソードは、一度読むと忘れられないインパクト。何度も読み返したくなるような、「本好き」の心を強く刺激する魅力があります。
バラエティ豊かな物語群
第二話以降も、古書店「十月堂」を中心にストーリーが展開される、『本なら売るほど』。
青年店主以外にも、「店主に恋心を抱く女子高生」「部屋いっぱいの本棚を作る男たち」「小説の影響で着物好きになった女性」など、様々な「本好き」が話の主体に。
その人たちと本との関わりの中に、名著や奇書のエピソードや、新刊書店とは異なる古本屋事情が自然に織り込まれ、多彩な角度から「本の世界」を楽しめるつくり。
「古書店+客」だけではない幅広い物語の数々に、意外性・飽きのこない面白さを感じます。
「本と人のつながり」が心に染みる
そんな多彩なエピソードの中で、第一話と同じぐらいオススメなのが、2巻収録の『生ける人々の輪舞曲(ロンド)』。
張り詰めた顔で十月堂を訪れた、金髪ベリーショートの女性。開口一番、
「とにかく面白い本をください。読み終わるまで絶対に死ねないくらい、長くて面白い本を」
そこで店主が勧めた全3巻の小説を、女性は購入。しかしなぜか最終巻だけ、「1ヶ月後に取りにくるから」と預けていく。そこには意外な真実が…?
実在の小説『ガダラの豚』(中島らも・著)がキーになった、古書店だからこそのアットホームなコミュニケーション。そして「本と人」とのつながりを感じさせる展開が、非常に秀逸なストーリー。
読み終えると「なにか小説を読んでみたい…!」と、思わず「本」を意識してしまう、味わい深い一編です。
感想・レビューまとめ
以上、児島青さんの漫画『本なら売るほど』感想・レビューでした。
古書業界事情・古本と新刊の関係性・本のうんちくなどを背景に、「本が好きな人たち」をバラエティ豊かに描きあげる作品。本好きにも漫画好きにもオススメのヒューマン・ドラマです。
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