大石まさるさんの『ライプニッツ』シリーズ。地球外へ居住地域を広げていく人類の姿を時にシリアスに、時にコミカルに、不思議な宇宙ネコ「ライプニッツ」を絡めながら卓越した漫画表現で描くSF漫画です。
『ライプニッツ』シリーズは、大きく3つの漫画から成る構成。本記事ではシリーズの概要と各巻のあらすじ、ネタバレなしレビューをご紹介します。
SF漫画『ライプニッツ』シリーズ・概要
SF漫画『ライプニッツ』は、「人類が宇宙へと進出し火星や小惑星帯などにも生活圏を拡げていく(いる)」という世界観のもとで展開される物語。現在は以下の3作品がリリースされています。
- ライプニッツ(全1巻)
- キラリティ(全1巻)
- マーチャンダイス(全3巻)
『ライプニッツ』『キラリティ』『マーチャンダイス』の各ストーリーに繋がりはありませんが、「猫のライプニッツが登場する」という共通要素があります。
ちょっとおデブなライプニッツは人の言葉を解し、時空や場所を超えて出現する不思議な存在。
その正体は謎ですが、超越的な存在とも、物語のマスコット的な生き物とも取れる、シリーズの共通性を演出するキャラクターとして認識してください。
SF漫画『ライプニッツ』シリーズ・各巻レビュー
ライプニッツ
海洋生物学者として、木星の衛星エウロパへの探査行メンバーに迎え入れられたニーナ。そこはかつて、父と母が命を落とした場所だった。
大いなる冒険、そして多少の陰謀をはらむその旅路で、ニーナ(と何故か同道するライプニッツ)は何を見るのか?
記念すべきシリーズ第一作『ライプニッツ』。月・火星を足がかりに宇宙へと進出し始めた人類。その延長線上にある木星への探査行で起こる、リアルかつファンタジー風味のあるSFストーリーです。
行動力バツグン、色んな意味で自由な主人公・ニーナがとても魅力的。大石まさる作品には生命力あふれる女性キャラクターが多数登場しますが、その存在感の大きさを存分に味わえるでしょう。
キラリティ
月、火星、そして火星ー木星間の小惑星帯(アステロイドベルト)にも人間が住む時代。
ベルター第3世代の双子であるキラとラリティは、コロニー曳航船ドゥルガー10に身分を偽って乗り込む。その目的とは―。
近未来を描いた『ライプニッツ』からは、おそらく相当の時間が経っているであろう世界観の『キラリティ』。ナンバリングされていますが全1巻完結です。
やや太めの線で描かれた前作とは大きくタッチが変わり、洗練されたリアル指向の作画に。これが作中のSF観と大きくマッチ。美麗な絵を眺めているだけで、楽しさを感じます。
もちろん本格的なSFストーリーも大きな魅力。巨大なコロニーの一部を曳航する宇宙船の中で展開される、「双子の主人公」という設定を活かしたライトなコメディ・サスペンス。
恋愛模様も混じった爽やかさに、心地よい読後感のある全1巻SF漫画です。
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マーチャンダイス
火星最古の都市「ユピテル」にある長期滞在型シェアアパート「マーチャンダイス」を舞台にした『マーチャンダイス』全3巻。
そこに集う人々の悲喜こもごもを、コミカル・サスペンス・ちょいエロなど多角的・群像劇風に描くSF漫画。
地球と火星の重力の違い(地球の1/3程度)から、地球人と火星人に筋力差があったり、都市を地下に地下にと掘り下げて作っていったり、といったリアルなSF設定・描写。
加えて元気いっぱい一癖も二癖もあるキャラクターたち、そして大石まさるさんの緻密にして美麗な作画など、多方面に見どころのあるSF作品。
その中でも物語を大きく牽引するのが、アパートの大家兼・仮面の賞金稼ぎであるラーテル=ハニーバッジャーと、一攫千金を目指して火星に降り立った地球人・マチコ。
パワーあふれる二人の女性の破天荒な行動が、とにかくおもしろい!「火星」という未知の世界で暴れまわる彼女たちの活躍に、圧倒されます。
レビューまとめ
以上、SF漫画『ライプニッツ』シリーズのネタバレなしレビューでした。
基本は『ライプニッツ』から読み始めるのが筋ですが、先述の通りシリーズの共通点は猫のライプニッツが出る、ということだけ。
よってどこから読んでも楽しめると思いますが、その中でもオススメは『キラリティ』と『マーチャンダイス』。
まずは手頃な1巻完結から、という方は『キラリティ』。ガッツリSFを楽しみたいという方は『マーチャンダイス』をどうぞ。
この2作は絵柄がリアル指向のタッチになり、それが「宇宙」「火星」などの舞台と物凄くマッチ。
緻密なSF設定、元気いっぱいのキャラクター、奇想天外なストーリーを楽しんだあと、ページ・コマの一つひとつを眺めて作者・大石まさるさんの超絶な表現力に浸ってください。
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