「報いは報い、罰は罰」上下巻―山奥の洋館で起こる恐怖の惨劇

六年は長い

目も開けられなかった赤ん坊が
報いを求めるほどに

(森泉岳土「報いは報い、罰は罰」上巻P39より)

森泉岳土(もりいずみ・たけひと)さんの待望の新刊、「報いは報い、罰は罰」上下巻を読みました。

2016年刊行の2冊「うと そうそう」と「ハルはめぐりて」とは打って変わって、本作はゴシック・ホラー。広大な邸宅を舞台に展開される恐ろしい惨劇が、その独特な画法であやしく描かれています。

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あらすじ

アメリカから帰国した清水真椿(しみず・まつばき)大学教授・小田道之の元に嫁いだ妹・真百合(まゆり)が半年前に失踪していたことを知り、小田家を訪れる。


[森泉岳土 著 KADOKAWA「報いは報い、罰は罰」上巻より引用]

祖先・ヴィクトリアがイギリスから移築したという小田邸。山奥に位置するその広大な屋敷には当主・道之はじめ、前妻の娘・狭霧(さぎり)その弟・多紀理(たきり)狭霧の息子・那美(なみ)道之の愛人・邦加(くにか)、そして道之と真百合の娘・葛野(かづの)が住まう。

一様に異様な空気を漂わせる小田家の住人たちと、ただならぬ不気味さを醸し出す屋敷。所在なく真百合の爪痕を探す真椿は、ようやく姪である葛野と面会する。

「今日の夜、ひとりで来て」

真椿の耳元で囁く葛野。とまどう真椿。そして惨劇が幕を開ける―。

「報いは報い、罰は罰」レビュー

サスペンス感のあるゴシック・ホラー

本作の存在を知ったのは単行本化が発表されてから。ほぼ予備知識無しで読んだのですが…。

最高!でした。素晴らしい。

ジャンルとしては、サスペンス感も含んだゴシック・ホラー

ちなみに「ゴシック・ホラー」とは

小説や映画のジャンルの一つ。ヨーロッパのゴシック風の古城や寺院などを舞台に、超自然的な怪奇を描いたものを指す。

です(コトバンク「ゴシックホラー」より引用)。

イギリスの古屋敷そのものである小田邸で展開されるストーリー。まさに「ゴシック・ホラー」という表現がピッタリです。

恐怖を産み出す独特な画法

本ブログでも何度かご紹介していますが、森泉岳土さんは水と墨、楊枝と割り箸といった画材を使って漫画を描かれる作家さん。

本作「報いは報い、罰は罰」の制作過程ツイートが、掲載誌であるコミックビーム編集部さんによってまとめられています。

作画はアナログ、組み立てはデジタル、なんですね。

ほかに類を見ないその描画方法によって描かれた「報いは報い、罰は罰」。これまでに発表されたファンタジックな作品群と較べると、圧倒的な「黒」が印象的

本作に近い雰囲気としては、ホラーではありませんが過去作「祈りと署名」の「[イリーナ]シリーズ」でしょうか。「報いは報い、罰は罰」は同作をより洗練させて、恐怖へと近づけたようなイメージです。

広大な洋館で起こる恐怖の惨劇

妹を探して山奥の屋敷へと足を踏み入れた真椿。

広大で荘厳なその雰囲気と、世俗からはずれた異質な人々

屋敷の奥へ奥へと進むと同時に、闇へ、狂気へと一歩一歩近づいていく

そして彼女を暗闇から見つめる一対の眼―。


[森泉岳土 著 KADOKAWA「報いは報い、罰は罰」上巻より引用]

読んでいるうちに主人公・真椿と同化し、気づくとその空間から二度と抜け出られないかのような恐怖感の虜に。ゾクゾクが半端ないです。

またホラーでありながらサスペンス的な空気もあり、一周・二周と読み返すうちに新たな発見があるのも本作の魅力。繰り返し読むことによって物語への理解、そして恐ろしさが深まってきます。

恐ろしくも美麗な描写

「報いは報い、罰は罰」の世界を形づくっているのは、何と言っても森泉さんの巧みな筆致

人物はもちろん、屋敷内の緻密な描写、荘厳な屋敷の外観、そしてそれらを囲む風景に至るまで、微細にして美麗。コマ・ページ・見開き、それぞれにハッする美しさがあり、何度読んでも目を惹きつけられる魅力があります。


[森泉岳土 著 KADOKAWA「報いは報い、罰は罰」上巻より引用]

…とまあ、文章でそのおもしろさ・恐ろしさを何とか表現しようと頑張ってきましたが、ここらが限界です(笑)。

興味のある方は、まずは試し読みなどで雰囲気を味わってみてください。

冒頭、屋敷の入り口を探し、不安げな表情で周囲をめぐる真椿。多紀理に会い、真椿とともに小田邸の扉をくぐったその瞬間―。

読者はきっと後戻りのできない「闇」に囚われるでしょう。

まとめ

以上、ゴシックホラー「報いは報い、罰は罰」上下巻のレビューでした。

実は本作、お値段ちょっと高め。上下各巻とも紙書籍で1,350円、電子書籍で1,250円という価格。私も買う前はさすがに少し躊躇しました(笑)。

しかし!読んだあとは大変満足。価格以上の読後感を得ることができました。最初は試し読みでも良いので、ぜひその作風に触れてみてください。

「報い」とは何か?「罰」とは何か?

ホラー漫画好きのみならず、多くの人に読んで欲しい、オススメの作品です。

報いは報い、罰は罰 上 (ビームコミックス)著者:森泉 岳土出版社:KADOKAWA / エンターブレイン発行日:2017-10-12

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