「マイ・ブロークン・マリコ」―親友の遺骨を奪って向かうは、海

この記事は約5分で読めます。

2019年7月に第一話が公開されるやいなや、爆速で話題になった「マイ・ブロークン・マリコ」。待望の単行本化です。

作者は平庫ワカさんで、全1巻完結。「マイ・ブロークン・マリコ」全4話ほか、読切「YISKA-イーサカ-」を収録。

なお本記事最後に、「マイ・ブロークン・マリコ」の感想・考察的なことを記載しています。ネタバレ、というか物語の内容に触れるものなので、未読の方はスルー推奨で。

「マイ・ブロークン・マリコ」レビュー

26歳のOL・シイノトモヨは、テレビのニュースで親友・マリコの自殺を知る。学生時代から父親に虐待を受けていた彼女のために、今からでも何かできることはないか…?

マリコの魂を「救う」ために、その遺骨を奪うことを決意するシイノ。「刺し違えたってダチの遺骨を救い出してやる」と包丁を胸に懐き、マリコの家でDV親父から遺骨を強奪、逃走する。

そして海に生きたがっていたマリコのために、彼女の名前が入る「まりがおか岬」へ。マリコからもらい続けた手紙とともに―。

マイ・ブロークン・マリコ
友達のマリコが死んだ。突然の死だった。 柄の悪いOLのシイノは、彼女の死を知りある行動を決意した。 女同士の魂の結びつきを描く、鮮烈なロマンシスストーリー!

↑こちらから第一話「エスケープ」が試し読みできます。

マイ・ブロークン・マリコ (BRIDGE COMICS)平庫 ワカ:KADOKAWA

シイノと、骨になってしまった親友・マリコ。「マイ・ブロークン・マリコ」ではそんな二人の海への「逃避行」の中で、かつて居たマリコという人間と、彼女を想うシイノの心の叫びが描かれます。

主人公・シイノは、黒のスーツに身を包み、くわえタバコで紫煙をたゆたわせる、ハードボイルド感あふれる女性。目を血走らせながら包丁を握りしめ、マリコの父親に「弔われたって!!白々しくてヘドが出ンだよォ!!!」と啖呵を切る。

すったもんだの末に、遺骨を抱いて裸足で駆け出すその行き先は、もちろん決まっているはずもなく。涙と、鼻水と、よだれで顔をベトベトにしながら、しかしなぜかカッコよさを感じてしまう、不思議な女性。

そのシイノの記憶から断片的に描かれていく、亡き親友・マリコ。幼い頃から暴力を受け、傷の耐えないその姿は、シイノと読者に怒りを呼び起こす。彼女はどうして死んだのか?なぜシイノに何も告げなかったのか?果たしてシイノに遺したものはなかったのか…?

シイノの脳裏に、時に殴られ腫れた顔で、時に最高の笑顔で蘇る、マリコの姿。果たしてマリコはどのような人間だったのか。それを確かめたところで、気持ちを伝える相手をもういない。この気持ちをどこにぶつければいいんだ…!

そんなシイノのやるせない、と言うには言葉が足りないほどの、怒り・悲しみ・愛が、ノンストップで展開される「マイ・ブロークン・マリコ」全4話。短いながらも閃光のように描かれる、二人の壮絶な友情が脳裏に焼き付いてはなれません。

しかし印象的なのは、とにかく主人公・シイノの躍動感。泣いて、叫んで、飛んで!身も心もボロボロになりながら、強烈な「生」の輝きを放つ彼女。そしてその生が輝けば輝くほど、よりくっきりと浮かび上がるマリコの「死」。二人のコントラストが、強烈なイメージを残す漫画です。

まとめ

以上、「マイ・ブロークン・マリコ」のレビューでした。ストーリーも強烈な作品ですが、平庫ワカさんの荒々しくも洗練された作画も、本作の大きな魅力。その作風に触れると、作者の別の漫画も読んでみたい!と思うはず。男臭さ前回のハードボイルドである併録作「YISKA-イーサカ-」も、読み応えのある一作です。

なお下記に本編の内容に触れる「マイ・ブロークン・マリコ」考察を記載していますので、未読の方はご注意ください。

「マイ・ブロークン・マリコ」考察

冒頭にも書きましたが、以下、「マイ・ブロークン・マリコ」の考察を2つほど。本編を未読の方は、先に本編をご覧になることをおすすめします。

まず、この物語は何を伝えたかったのか?これはマキオのセリフそのものなんだけど、「もういない人に会うには自分が生きているしかない」ということ。

さらにマキオのセリフとして、「あなた(シイノ)の思い出の中の大事な人と あなた自身を大事にしてください」と続くのですが、ひっくるめて自分の言葉に直すと「人(シイノ)が生き続ける限り、想い人(マリコ)もまた生き続ける」なのではないかと。

マリコはシイノに黙って命を絶ち(実際には手紙を遺している)、シイノはそんなマリコの死に絶望をし、自らもその後を追おうとします。が、ラストでは死のうという意思はなく、むしろかつて居たマリコという存在を胸に抱いて生きていこう、というように見受けられます。

また実際に(アクシデントで)崖からダイブし死を覚悟するも、生き延びてマリコの思いを感じたシイノ。自分がいなくなったら、誰がマリコの生を感じるのか、という心境になったのでは。

自分が生きることで、マリコもまた共に生きる。人の存在を記憶の中に残し続けるためには、生き続けなければならない。そんなメッセージをシイノとマリコ、そしてマキオから受け取りました。

さてもう一つ。果たしてマリコが遺した手紙(シイノがラストで読んだ)の中には、何が書かれていたのか?

このシイノ宛の手紙は、おばちゃん(マリコの義母)がシイノに引き継いだものですが、マリコの遺書であったかどうかは不明です。ですがラストでシイノは、その手紙を読んで内容に同意するような素振りを見せているため、そこにはシイノが納得できる内容が書かれていたのでしょう。

すると「自分はこの世を去るけれど、今度はシイちゃんの子どもとして生まれてくるよ=また会えるよ」といった内容が書かれていたのではないでしょうか。これはマリコの遺骨がたびたび少女の姿になるイメージからも推察できますし、上記で書いた「シイノが生き続ける限りマリコもまた生き続ける」とも一致します。

「今からこの世を去ります」「今までありがとう」という内容では、きっとシイノのリアクションはラストのようにならなかったはず。

そしてこの手紙を読む前に、日常に戻っていくことを選択したシイノですが、この手紙が彼女をさらに前へ進ませるものとなり、そしてシイノは…、なんていう物語の続きを、つい想像してしまいます。

以上、「マイ・ブロークン・マリコ」考察でした。なおあくまでも個人的な考えであることをご了承のほどよろしく。

コメント

タイトルとURLをコピーしました