ホラー漫画で「ともだち」って、怖いイメージしかないよね(笑)。
楽しみにしていた、那州雪絵さんのホラー短編集「私のともだち」を読みました。
那州雪絵さんはホラー専門の漫画家さんではありませんが、「魔法使いの娘」「魔法使いの娘二非ズ」で、恐ろしくも楽しいホラーの世界をファンに届けてくれました。
その那州さんが描くホラー漫画の短編集。これは期待さざるを得ない!
「私のともだち」レビュー
収録作品
本書「私のともだち」には、6つのホラー短編を収録。
- 私のともだち(2007)
- 誰かが待っている(2008)
- 花地獄(2011)
- 冷蔵庫の思い出(2012)
- かいだんのかいだん(2013)
- 水にうつる思い出(2017)
カッコ内は発表年。いずれも新書館Wings(ウィングス)誌、およびその付録冊子での掲載です。
本書では表題作「私のともだち」以降、足掛け10数年に渡って発表されたホラー漫画を収録しています。
以下、「私のともだち」各話の簡単な紹介と感想を、ネタバレしない程度にご紹介。
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私のともだち
旧校舎のトイレで「出る」と噂の怪物。学校でハブられている少女がそこで出会ったのは、人形のような外見の「ピョン子」。少女はピョン子と友達になるが…。
「学校の七不思議」「トイレの花子さん」を那州雪絵さんがアレンジしたら…的なホラー短編。
思春期の少女たちのイヤな部分、怖い噂の「ルール」、そして結末。じわじわと読者を恐怖に誘う、話の運び方が素晴らしい。
誰かが待っている
「トガイ カツコ」を呼び出してくれ、という客が来たら、必ずその呼び出しをしなければならない。
デパートの「伝説の呼び出し」に興味を持った女性。「トガイ カツコ」の名を呼ぶアナウンスを聞き、受け付けを覗く。が、「トガイ カツコ」はあらわれず。
しかしその瞬間から、彼女の恐怖が始まった。
こちらは「デパートの怖い話」系。不思議な話に興味を持ってしまったがために、恐怖の体験をする女性の顛末が描かれます。
妙なリアリティのある「トガイ カツコ」という名前、何故か脳裏に焼き付きます。「世にも奇妙な物語」でドラマ化して欲しい一編。絶対怖い。
花地獄
職場の既婚男性に、一方的な思いを寄せる女性。男性の後をつける最中、朝顔のトゲが腕に刺さる。やがて彼女の体に異変が…。
ジワジワと自分の体に恐ろしい変化が…、というのは想像するだけでイヤなものですが、そんな恐怖がねっとりと描かれます。幻想的なビジュアルにも注目。
本作のカバー絵は、この「花地獄」のイメージです。
冷蔵庫の思い出
幼稚園時代の幼馴染が語った思い出。それは少し変わった女の子を、空き地の冷蔵庫に閉じ込めてしまった、という話だった…。
「冷蔵庫」の「思い出」というと、ロクなことを思いつきませんw。その期待を裏切らず、しっかりと怖い話。
本編もさながら、冒頭でいきなり冷蔵庫の話を語りだす幼馴染が、なんだかコワイ。
かいだんのかいだん
ページ数の短いお話なので、詳細は割愛。他作品とちょっと毛色の異なる作品。もちろん怖いです。
水にうつる思い出
いつも一緒にいる双子の少女。その一人は病気で死んでしまうが、幽霊として生きつづけることに。
生き残った方はしかし、成長するにつれ、その存在が疎ましくなるように…。
双子というのは、そうでない人間から見ると、不思議な存在感を感じる時があります。そんな双子に起こった悲哀を、恐ろしく描いたホラー。
「私のともだち」同様、じっくりと恐怖に迫っていく描き方。読み応えがあります。
まとめ
以上、那州雪絵さんのホラー短編集「私のともだち」のレビュー・感想・レビューでした。
愛読していた連載作品「魔法使いの娘二非ズ」が終わって以降、この「私のともだち」の発売を心待ちにしていたのですが、満足。そしてしっかりと怖がらせてもらえました。
本書の随所で、各作品に対する那州雪絵さんのコメントが掲載されていて、それもまた興味深いところ。
かつて少女マンガ誌にのっていたような、30ページ程度で、でもとんでもなく怖い作品。そんなホラー漫画を目指したそうです。
確かに読んでみると、懐かしくも新しい、少女マンガ的正統派怪奇マンガ、という感じを受けます。
少女マンガになじみのある方ならば、懐かしい雰囲気を感じることができるのではないでしょうか。
全体的には、どちらかと言えばジワジワと読者を追い詰めていく形式のホラー漫画なので、えげつない表現が苦手な方でも大丈夫(多分)。
「怖そうだけどどうしようかな…」と読むのを迷っている方にも、手にとって欲しい作品です。
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