名門大学で「学問としての数学」につまずいた青年。留年を経て再起の道を目指すが、その道は険しく―?
絹田村子さんの漫画『数字であそぼ。』。大学で「考えること」の壁にぶちあたった理系青年が、ちょっと変わった仲間たちと送るキャンパス・ライフを描く、数学コメディ漫画です。
連載は小学館の漫画雑誌「月刊フラワーズ(flowers)」で、コミックスは1~12巻が刊行中(2024年12月現在)。以下、『数字であそぼ。』の主なあらすじや見どころなどをご紹介します。
『数字であそぼ。』あらすじ
奈良・吉野で育った青年・横辺建己(よこべたてき)は、持ち前の超人的な記憶能力で京都の名門・吉田大学理学部への入学を果たす。
しかし授業初日の「微分積分学」で授業内容が全く理解できず、自分に「考える能力」が無いことに気づいてしまう。
人生初めての挫折から大学へ行けなくなり、下宿先に引きこもること2年…。
そこから「長期在学者」への連絡をきっかけに、建己は再履修を決意。数学教授から「友達を作りなさい」とのアドバイスを受け、同じく2留の北方と意気投合、友人となる。
だが北方と話すうちに、彼の留年理由がスロットにハマったこと、そして数学に理解があることを知り、自分とは根本が異なることを理解。再び絶望の淵に。
果たして建己は大学を卒業できるのか―?
『数字であそぼ。』のココが面白い!
挫折から始まるキャンパス・ライフ
「キャンパス・ライフ」の始まり、と聞くとハツラツ新生活!なイメージ。
ですが『数字であそぼ。』の主人公はいきなり挫折、しかも留年を2回かましちゃった建己くん。いきなり雲行きが怪しい(笑)。
そもそも記憶力だけで「天才」の評価を受けていた彼は、「理解する学問」である大学数学でついに「勉強の壁」にぶち当たる。
しかも考えることが得意では無いために、学友たちとの差は開くばかり。
卒業を目指して必死に数学に喰らいきますが、わからないが過ぎるために小学一年生の参考書に手を出したりして、その迷走っぷりが不憫なほど笑えます。
「数学脳」を持つ理系大学生たちが面白い
そんな建己くんの力になるのが、大学で友人となった仲間たち。
同じく二留の天然ギャンブラー・北方、アコギな過去問販売野郎・猫田、そして無自覚なマウントで建己の留年を決定づけた天才女性・まふゆなど、非常に個性の強い面々。
ユニークなのは、彼ら(建己のぞく)が身の回りに起こる出来事や困りごとを、とにかく「数学脳」で理解・解決しようとすること。
生活苦を商店街の福引で解消するために、当たりくじの確率を計算して「引き時」を求めたりと、一般の学生とは異なるアプローチで世の中を渡ろうとする様。
舞台となる京都の風情とも相まって、不思議なおかしみが生まれます。
「数学センス」の無い主人公の葛藤と前進
そんな『数字であそぼ。』、読んでいて気づくのが建己と友人たちとの「決定的な違い」。
記憶力は高くても数学的センスが無い建己に対し、友人たちは「数学がわかる人」。
授業に対する難しさを感じていても、その中身は次元が異なっていたりして、そこには埋められない溝が…!
そして時の流れとともに、否応無しに迫りくる系登録(数学・物理・地学などの選択)。
悩みに悩んでテンパった建己は「数学が知りたいのに難しくて先に進めない!みんなにはこの不安な気持ちがわからないだろう!」と爆発。
しかし友人たちや教授と話すうちに、実は自分が「数学が好き」になっていることに気づく建己。前を向いて本格的に数学の道に進むことを決意します。
「好きこそものの上手なれ」の精神で、学問と真摯に向き合っていくその姿は、これぞ大学生!
…なのですが、どう考えても数学向きではない建己。個人的には違う進路に進むべきだと思うのですが(笑)。
さて果たして彼はどこへ行き着くのか?その最終的な進路に興味が尽きることがありません。
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感想・レビューまとめ
以上、絹田村子さんの漫画『数字であそぼ。』感想・レビューでした。
「数学」という一般人にとってはある意味、特殊な世界で生きる学生たち。その少し変わった生態とそこで揉まれる主人公の、ギャップから生まれる笑いが魅力の作品です。
また本作は女性向け漫画雑誌である「月刊フラワーズ」連載ということもあり、青年誌のキャンパス・ライフものとは少し変わった感覚の漫画。
特に男性が読むと新鮮な読後感があるでしょう。女性向け漫画を普段読まない方にもオススメ。
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