ちょっと気になるけど、なぜか入りにくいお店、ってありますよね。
そんな「あの店」に作者・松本英子さんが勇気を出して入ってみると…。
という実録レポを漫画で読めるコミックエッセイ、「謎のあの店」を読みました。2017年12月発売の3巻で完結です。
実は本記事を書いている現在では1巻しか読んでいないので、1巻の内容を中心にご紹介。
そして2巻・3巻は必ず読みます。なぜなら1巻がめちゃくちゃ面白かったから!
「謎のあの店」レビュー
気になるお店を体験する実録レポ漫画
「謎のあの店」は先述の通り、作者・松本英子さんがその人生で気になっていた「あの店」に入り、実際にお店を体験してみるというレポ漫画。
1巻に収録されている全話のタイトルは以下の通り。
- あのケーキ屋
- あの美容室
- あの占い
- あの旅館
- あのレストラン
- あのガード下の居酒屋
- あの柳原商店街
- あの浅草観音温泉
- あの小料理屋
- あの草津温泉
- あの立石仲見世
- あの青汁屋
- あのキャバレー
- あのラーメン屋
- あのハンバーガー屋
- あの喫茶店
- あの前世療法
- あのドイツビアレストラン
- あの猛禽カフェ
- あの立ち呑みバー
以上20軒の店舗に訪れた体験漫画と、「おまけまんが」として一部店舗について「その後のあの店」が描かれています。
心の片隅に引っかかる「あの店」
- 何をしているのかよくわからない店。
- 独自ルールのある店。
- 変わったメニューを掲げている店。
- 独特の佇まいから入るのに躊躇してしまう店。
- 営業してるのか、してないのか、あやふやな店。
街を歩けば、誰しもそんな「謎の店」の一つや二つに出会ったことがあるでしょう。
そしてそのままその店の敷居をまたぐことなく何年も経過し、知らないうちに店自体がなくなってしまう。
本作ではそんな「心の片隅に残っている不思議なお店」に、松本英子さんが時に一人で、時に友人や担当と実際に入店。その店の「真実」を確かめ、読者に漫画で伝えてくれます。
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飲食店だけが「あの店」じゃない
そんな「気になるあの店」の数々。大多数の人は「飲食店」を想像すると思うのですが、本書で描かれる店は飲食店とは限りません。
1軒目こそ「あのケーキ屋」ですが、2軒目からいきなり「あの美容室」。さらに占い、旅館、と続きます。
ああ、確かに不思議なお店というのは業態を選ばずに存在するものです。
そしていくつかの飲食店を挟みながら、やがて現れる謎のワード。
「あの前世療法」って何だw。
謎のバーチャル感
本作を読んでて感じたのはバーチャル感の強さ。
体験しているのは松本英子さん自身で、コミックエッセイということでその姿も作中に主体として登場します。
ですが肝心な所では「視点」が松本さんのもの=読者のものになり、何だか自分が「あの店」に入ったような気に。
この不思議な臨場感。回数を重ねると何だかクセになってきます。
店内やお店の人、店であった出来事の描写も、独特の作風ながら写実的で読みやすい。
各話を読み終わった後には、すっかり自分がその店から出てきたような気持ちになっています。
「あの店」を楽しむ心
「謎のあの店」の良いところは、決して「いい話」にまとめていないこと。
店に入った結果、「意外に良かった」話もあれば、「外見通りのお店だった」話も当然あり。
でも残念な結果も、松本さん独自の視点と落ち着いた語り口で描かれると、何だか魅力的に見えてくるから不思議。
松本さんも残念なお店をくさすこともなく、むしろ「勇気を出して入った自分」に満足し、「その結果のスッキリ感」を楽しんでいる感じ。
確かにモヤモヤが解消すると、あとはスッキリするしかない!
そしてその根底にあるのは「『あの店』を愛し、楽しむ精神」。読後にそれが伝わってきて、何だかこっちも不思議とさわやかな気持ちになります。
印象的だった「あの店」
そんな「謎のあの店」で紹介されているお店の数々。どれもおもしろく読めたのですが、印象的だったお店をいくつか。
・あの旅館(4軒目)
松本さんが二十余年、気になり続けてきた旅館(一泊一人4千円)に泊まってみた話。一見普通の和風宿泊施設だが、やっぱり…な展開。しかしそれを楽しんでいる松本さんに笑える。
・あのレストラン(5軒目)
子どもの頃から気になっていたレストランに30年後、ついに入ってみた松本さん。そこにはテーブルに並べられた豪華な食事の数々が…!しかしさらに2年後に訪れた時、そこには…?不思議な話ですが、読み終わると何だか薄ら寒さを感じる、珠玉の作品。ネムキらしい?
・あのハンバーガー屋(15軒目)
これは有名な店らしい、手作りのバーガー自販機やオリジナルバーガーを販売している「立岩バーガー」を訪れた話。バーガーの内容もさることながら、松本さんと、仲良くなった店主さんのやり取りが楽しい一作。(※店舗名は作中のもの。また現在は別のお店になっているよう。)
・あのドイツビアレストラン(18軒目)
松本さんが担当さんと訪れたビアレストラン。しかしそこにはドイツ風?とも言うべき独自の習慣があり…。雰囲気に呑まれてはじける松本さんの様子に笑えるw。いいなぁ、こんなお店に行ってみたい。
「あの店」に入る勇気
他にも楽しいあの店、面白い体験がいっぱいあるのですが、本記事ではこの辺で。とにかく独特な雰囲気がクセになる漫画「謎のあの店」でした。面白かったです。
残念ながら「謎のあの店」は全3巻で完結とのこと。ですが読み終わると、気になっていた「あの店」に入る勇気をが湧いてくるような気持ちになります。「謎のあの店」の続きを作るのは読者自身、なのかもしれません。
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