オカルト・ホラー漫画漫画感想・レビュー

ホラー漫画「常世幽世 GHOST EATER」―いわくつき物件の霊を「喰う」ギャル霊媒師

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不動産の取り扱う「いわくつき物件」。その処理を請け負うギャルの除霊方法は、「霊を喰う」こと―

伊藤静さん描くオカルト・ホラー漫画「常世幽世 GHOST EATER」。「常世幽世」は「とこよかくりよ」と読みます。少年画報社ヤングキングBULL連載で、単行本は1巻が刊行中。

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「常世幽世 GHOST EATER」感想・レビュー

概要

「常世幽世 GHOST EATER」の主人公、鈴(りん)。キャンピングカーで一人暮らし、右肩にバクのタトゥーが入ったギャル風の彼女は、「獏人(ばくと)」と呼ばれる人魂を口から「呑んで」除霊する霊媒師。

不動産屋の男性・高田から、事件・事故などで「いわくつき」となった土地や物件の除霊を、高額で引き受ける鈴。彼女と高田が出会う怪異の数々が、劇中で描かれていきます。

本作は、講談社モーニングコミックスより刊行の「とこよかくりよ」全2巻の続編。「常世幽世 GHOST EATER」のあとがきによると、「とこよかくりよ」は残念ながら打ち切りとなったようで、媒体を移しての復活となりました。

「とこよかくりよ」の主人公は鈴ではないのですが、劇中に鈴は登場していたよう。また高田の存在や「獏人」の設定も引き継いでいるようです。なお私は「とこよかくりよ」は未読の状態で本作を読んでいますので、予めご了承を。

物件・不動産絡みの怪奇現象

誰もいない部屋から物音がする、なぜか入居者がいつかない、土地の工事で事故が起こる…など、物件・不動産が絡んだ怪奇現象はオカルト・ホラーの定番。「常世幽世 GHOST EATER」の各話の発端は、不動産屋・高田から持ち込まれる、そんな「いわくつき」物件

その人知を超えた超常現象問題を解決するのは、「金の為なら」喜んで危険も引き受ける、一見ギャル風の鈴。身ひとつで物件・不動産に立ち入り、怪異に立ち向かっていきます。

独特な除霊方法

第一話の依頼は、なぜか入居者が何人も数日で退去してしまう、ハイツの一室を何とかすること。母子二人暮らしで、母親の失踪後に子供が餓死した部屋には、何かが出るとウワサが。

その怪異に向き合う、鈴の除霊方法は独特。それは除霊対象を「食べる」こと。

対象の物件に入り、耳栓を抜くと、生前の死者の想い(または怨念)があふれたかのような、生活感あるれる空間にトリップ。そこで死者の霊と会話を交わし、心残りであったことを受け止め、そして口から対象を一気に呑み込む!

この除霊時に描かれる「トリップ時の幻想的な雰囲気」が、非常にインパクトのあるもの。程よいグロさ、迫力ある除霊シーンと相まって、クオリティの高いオカルト・ホラー風味を感じます。

鈴の秘密

鈴というキャラクターそのものも、とても魅力的。食欲旺盛、金にがめつく、やや口が悪いのが玉にキズだが、度胸と除霊の力は信頼に足るもの。心霊現象の中で危険な目にあい、傷つきながらも、目の輝きを決して失わない主人公です。

その右肩にある「獏」柄のタトゥー(のようなもの)は、何やら彼女の除霊方法と関係があるようで、霊を呑むたびに少しずつ変化があるのも気になるポイント。

そして1巻の後半では彼女のルーツに関わる人物が登場するのですが、こちら鈴とはただならぬ間柄のようで。前作「とこよかくりよ」と関連があるのかもしれませんが、鈴の持ついろいろな秘密が今後どのように明かされていくのか?が気になります。

物語全体の行方

魅力的なキャラクター、一風変わった除霊方法、魅せるビジュアル、クオリティの高いオカルト・ホラー要素を持つ「常世幽世 GHOST EATER」。各話、なかなかの読み応えです。

ですが1巻全体の感想としては、前作との関連性や物語全体の方向性を、もう少し提示して欲しかったところ。鈴はなぜ除霊能力を持っているのか?なぜお金が必要なのか?そして彼女の目的は何なのか?

「獏人」という存在やタトゥーの謎などは追々明かされるとして、「常世幽世 GHOST EATER」という物語がどこへ行き着こうとしているのか?のせめて断片を、もう少し知りたかったところ。

ただ1巻終盤の展開については、前作を含めてもっと「常世幽世 GHOST EATER」の世界を知りたい!と思わせるものでした。今後の鈴の活躍と、謎の開示に期待です。

まとめ

以上、「常世幽世 GHOST EATER」感想・レビューでした。

ストーリー・ビジュアルとも、近年読んだオカルト・ホラー系の漫画としては屈指の出来。幻想的な描写と程よい恐怖感で読み応えがあります。怖い系の新しい漫画を探している方は、チェックしてみてはいかがでしょうか。

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