両親を亡くし、育ての親に奴隷として売られた少女は、運命に抗い世界の果てを目指す。しかしその旅には不思議な秘密が―?
水上悟志さんの『最果てのソルテ』。ビックリ展開が満載!令和期待の冒険ファンタジー漫画です。2022年1月現在、コミックス1~2巻が刊行中。
↑連載されているWEBメディア「MAGCOMI(マグコミ)」にて、第一話が無料で読めます。
『最果てのソルテ』感想・レビュー
あらすじ
過去の大戦により「魔法汚染」が残る世界。少女・ソルテは研究者であった両親を亡くし、村長の手により育つ。
ある日、時間と空間の歪んだ洞窟から、瀕死の状態であらわれたサルベイジャー・サリエラ。かつて村長に奴隷として売られた彼女の言葉から、自身の運命を悟るソルテ。
サリエラから魔界の霊宝を託された後、「果ての果てまで行ってやる!!」と決意。サルベイジャーに売られるために、奴隷の道を受け入れる。
奴隷商の馬車に先客の剣士・フィロとともに乗り込むが、その道中、馬車は魔法汚染地帯へ。現れた巨大なモンスターに襲われ、絶対絶命のピンチ!
その時サリエラの霊宝から謎の妖精があらわれ…?
王道ファンタジー…からのビックリ展開
魔法、孤児、奴隷、霊宝、魔界…と、よくある要素を詰め込んだファンタジー・ストーリー『最果てのソルテ』。
が、「よくある」で終わらないのが、水上悟志さんのスゴイところ。第一話の終盤でビックリ展開が。
巨大なカボチャ状のモンスターに襲われたソルテたち。それを救うのはサリエラのペンダントから飛び出た、謎の妖精・セレン…
ここまでは良くあるファンタジー漫画。が、そこからの展開が面白すぎる!
「ソルテ!!また会えたな!!」と謎のセリフを吐くセレンはソルテに魔法を授けるのですが、その力でなんとソルテは「魔法少女」に。
さらに「妖精合体!!魔法相転移魔女化!!」と叫ぶセレンはソルテの頭部に入り彼女を操縦。もう訳がわからん(笑)。
かくして「妖精が操縦する○ジンガーZ風魔法少女」となり、不死の剣士フィロと共に魔法汚染地帯を抜け出たソルテ。叔父・ブラックを探しに新たな街へ…と物語が展開していきます。
実は「2周目」な冒険
そんな風変わりな魔法ファンタジー『最果てのソルテ』。が、風変わりなのはそれだけじゃない。第一話のラストでセレンは叫びます。
「さあ2周目だ!!サクサク行くぞ!!」
なんとこのソルテたちの冒険は「2周目」。ソルテ、セレン、フィロ、ブラックの4人は、「既に共に旅をしていた」ことが判明。
またセレン情報では、2周目が始まったのは「魔界の奥地でトラップに引っかかり時間を巻き戻された」のが原因。
早くその地点まで戻りたいセレンは、ソルテたちに危険を避けるために助言。これぞ2周目のメリット!
だがそのために1周目との「ズレ」が生じ、予想外の展開が…?
【マンガ多すぎ!コミックシーモア】
既視感のある「新しい冒険」
魔法汚染、両親の死、最果ての地、不死の剣士、そして「魔法相転移!魔女化!」(笑)というユニークな要素が詰め込まれたファンタジー漫画『最果てのソルテ』。
それぞれの要素は既存の漫画でも見かけるものですが、それらをこれでもか!とぶっこんで混ぜ込んで「見たことのない世界」を作り上げる、水上悟志さんの創造のパワーが読み手にモロにぶつかってきます。
『惑星のさみだれ』『スピリット・サークル』といった評価の高い長編漫画や、短編集『放浪世界』、全1巻漫画『二本松兄妹と木造渓谷の冒険』など、魅力的な物語を生み出してきた作者。
その経験から生み出されていく「どこか既視感があるのに、新しい冒険」がめちゃくちゃ面白い!
さらに2巻では、ソルテたちを取り巻く「世界の真実」が徐々に明らかに。特にソルテの叔父・ブラックの素性が意外過ぎるもので…?
1巻に負けず劣らずのビックリ展開に、体の奥底から笑いとゾクゾクが湧き出てきます。
『最果てのソルテ』まとめ
以上、水上悟志さんの漫画『最果てのソルテ』感想・レビューでした。
ファンタジー漫画というジャンル、ややマンネリ化したような印象もありますが、逆に既存のアイデアや他ジャンルからのネタを引っ張り込んで再構築したような物語。実にインパクトがあります。
ある意味パロディ的ではあるのですが、それをわかって作り、かつ新しいものに仕上げていくのは、ベテラン作家の面目躍如といったところ。
近年のテンプレ的なファンタジー漫画とは一線を画す魅力的な物語。ソルテたちのこれからの冒険が楽しみです。
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