漫画に夢を抱く離島の女子高生は、コミティアでの「衝撃的な出会い」を経て、漫画制作の道を歩き出す―!爽やかにして本格的な漫画青春物語、そして過激なタイトルにはある理由が…?
とよ田みのるさんの漫画『これ描いて死ね(これかいてしね)』感想・レビューです。連載は小学館の漫画雑誌「ゲッサン」で、単行本1~6巻が刊行中(2024年10月現在)。以下、主なあらすじや見どころなどをご紹介します。
『これ描いて死ね』あらすじ
東京から南へ120kmの離島に住む安海相(やすみあい)は、知る人ぞ知る打ち切り漫画『ロボ太とポコ太』が好き過ぎる高校一年生。
寂しい時に「ポコ太」に何度も救われてきた彼女。だが過度な漫画好きを女性教師・手島に咎められる。
「(漫画に描かれていることは)全部嘘だ」
落ち込む相だったが、『ロボ太とポコ太』の作者・☆野0(ホシノレイ)が10年ぶりに新作を発表することを知り、コミティアへの参加を決意。高速船ではるばる本土へ!
そこで多くの漫画制作者と出会い、「誰でも漫画が描ける」ことを知った彼女は、漫画への情熱が再燃!
そして☆野0と念願の対面を果たすが、それは意外な人物で…?
離島に住む漫画好きの女の子が推し作家に会いに東京に行く話
ゲッサン連載中『これ描いて死ね』第1話#これ描いて死ね#漫画が読めるハッシュタグ (1/11) pic.twitter.com/OTKFkHA2bc
— とよ田みのる (@poo1007) May 12, 2022
『これ描いて死ね』のココが面白い!
爽やか!な漫画青春物語
実は「☆野0」は、手島先生の漫画家時代のペンネーム。「コミティア行ったら先生が漫画売ってた」を実体験してしまう相(笑)。
兎にも角にも「漫画創作への情熱」に火がついた彼女は、漫画同好会を立ち上げることに。手島先生の条件「漫画を1本描くこと」を何とかクリアし、無事同好会設立!
そこで目をキラキラ輝かせて「漫画への純粋過ぎる想い」を発露していく、離島JKの姿が物凄くまぶしい!情熱あふれる漫画青春物語が展開されていきます。
「漫画の漫画」としての面白さ
しかし「漫画を描くこと」は簡単なようで、突き詰めるほど難しくなっていく。そこで相や仲間たちは悪戦苦闘することに…。
その過程で描かれる「漫画制作のプロセス」がとても興味深いもの。ストーリーだけでも、絵だけでもダメ。「漫画が好き」という情熱を、どのように創作に結びつけていけば良いのか…?
元プロ漫画家である手島先生のアドバイスも受け、少しずつ成長していく漫画同好会メンバー。ポップなタッチでテンポ良く綴られるコメディに笑いながら、「創作の現場感」に引き込まれていきます。
漫画青春群像劇!
そんな「漫画の漫画」的な面白さのある『これ描いて死ね』ですが、漫画を通した「青春群像劇」的な見どころも。
- 相…絵は下手だが、豊か過ぎる発想力が魅力
- 心…高い画力を持つが、少し引っ込み思案
- 赤福…漫画は読み専。底抜けポジティブシンキング
- 光…独特な性格の転校生。実は超有名な同人漫画家
といった、個性豊かな漫画同好会のメンバーたち。
漫画創作の実力も、漫画に対するアプローチもそれぞれ異なる彼女らが、「漫画」を通して友情を深めていく様子が何とも温かい…!
自然あふれる離島の開放感も手伝って、読み手の心をパーッ!と明るくしてくれる。青春の光が弾けすぎる雰囲気も、大きな魅力です。
本編と対をなす漫画家残酷物語『ロストワールド』
ところで気になるのが、『これ描いて死ね』というインパクトがあり過ぎるタイトル。その意味するところは、各巻末に収録の連作『ロストワールド』に真実が。
若き日の手島先生=「☆野0」の新人時代~プロ漫画家時代を描く物語。創作の苦しみから生まれる漫画への愛・憎しみ・そして「殺意」が、圧倒的な迫力でせまる!
笑い、そして狂気を孕んだ、ある意味「漫画家残酷物語」的なそのストーリーは、爽やかな漫画青春譚である本編とは対照的なのですが、作者・とよ田みのるさんの経験も反映されているであろう鬼気迫る物語が面白すぎる!
読後はきっと、「あ、なるほどね…!」とタイトルに納得しているはず。
感想・レビューまとめ
以上、とよ田みのるさんの漫画『これ描いて死ね』の感想・レビューでした。
海に囲まれた自然の雰囲気も手伝って、爽やかさいっぱいの漫画青春物語。確かな「漫画愛」が伝わってきて、読むともっと漫画が好きになる!
と同時に、「漫画に対する愛と殺意」が込められた、本編と対をなす「漫画家漫画」が何とも印象的。多方面から「漫画の魅力・面白さ」を感じられる、とよ田みのるさんの情熱が詰まった一作です。
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