藤子・F・不二雄と言えば、今でもテレビアニメが大人気の「ドラえもん」はじめ、幼児から小学生まで幅広く楽しめる、愉快な漫画作品が目白押しです。
そして子供向けの藤子漫画を卒業したら、次に読んでおきたいのはこれ。小学館コロコロ文庫より刊行されている「藤子・F・不二雄少年SF短編集」全2巻です。
藤子・F・不二雄先生と言えば、「ミノタウロスの皿」「カンビュセスの籤」といった大人向けのSF(すこしふしぎ)漫画を数多く書かれています。
ですがこちらは、週刊少年サンデーなど主に少年少女向けの媒体で発表されたSF漫画です。サブタイトルは1巻が「未来ドロボウ」、2巻が「絶滅の島」と少し聞き慣れないものですが、聞けば「あれか!」と思い至る珠玉の名作も収録しています。
「藤子・F・不二雄少年SF短編集」収録作
「藤子・F・不二雄少年SF短編集」全2巻の収録作です。
1巻「未来ドロボウ」
- ひとりぼっちの宇宙戦争
- コマーさる
- なくな!ゆうれい
- 未来ドロボウ
- 四畳半SL旅行
- 恋人製造法
- ニューイヤー星調査行
- 宇宙船製造法
2巻「絶滅の島」
- ポストの中の明日
- おれ、夕子
- 流血鬼
- ふたりぼっち
- 宇宙からのおとし玉
- アン子 大いに怒る
- 絶滅の島
- 山寺グラフィティ
- 世界名作童話
おすすめ作品
1・2巻合わせて、個人的におすすめの漫画をチョイス。
ひとりぼっちの宇宙戦争
1巻より。自らの意思と関係なく、地球の命運を賭けた戦争の代表に選ばれた少年。時の止まった中、孤独な戦いの結末は…。
誰も知らない、誰にも知られることのない、しかしその肩には重い運命がのっているというシチュエーション。この空気感がたまらない名作SF。タイトルも秀逸。
宇宙船製造法
1巻より。銀河系の果て、地球型の惑星に不時着した宇宙船。地球への帰還が絶望的な状況で、クルーである少年少女たちは結束してサバイバルを始めるが…。
限定された環境での人間関係がいかように展開されるか。短編ながら実に中身の濃い一作。そして道を切り開くのはいつもあきらめないやつだけなのだ。
ポストの中の明日
2巻より。樹海で遭難した少年少女。しかし主人公・市川はこの遭難を「すでに知っていた」。ポストに届く新聞の記事が、彼にだけ「明日の事実」に視えていたからだ。
避けられなかった遭難。市川たちは樹海から抜け出すことができるか。
「予知能力」ってツライ能力ですよね。トラブルを避けようと行動したら変人扱いされるし、避けられなかったら「なんで努力しなかったんだ」って責められるし。
そんな少年の苦悩を描いた本作。ラストのセリフが好きだなぁ。
山寺グラフィティ
2巻より。青年・加藤は東京で一人の女性と出会う。彼女は若くして死んだ郷里の幼馴染みそっくりだった。
もの言わぬ彼女は何者なのか?真実を確かめるために加藤は故郷の山寺駅に降り立つ。
割りと殺伐としたSFの多い藤子F作品ですが(笑)、これは美しい話。素直に感動しました。
SFか?って言われると微妙だけど、こんな話があってもいいじゃないか。写実的な背景も良い雰囲気を醸し出します。
まとめ
以上、「藤子・F・不二雄少年SF短編集」全2巻のご紹介でした。ドラえもんやパーマンなど子供向けの藤子漫画しか知らない、という方にオススメです。青少年のみならず、大人が読んでも楽しめる作品ばかりですよ。
ただし「絶滅の島」はちょっとショッキングな表現もあるので注意…。
コメント