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短編漫画感想『透明人間の恋』など安藤ゆき短編集3冊

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長編「町田くんの世界」が大人気の安藤ゆきさん。しかしこれまでに3冊刊行された短編漫画も粒ぞろいの作品ばかりで見逃せない!

というわけで本記事では安藤ゆきさんの短編集

  • 「不思議なひと」
  • 「透明人間の恋」
  • 「昏倒少女」

の3作品をご紹介。

これらは携帯小説原作の「もっと、生きたい…」(全2巻)から現在連載中の「町田くんの世界」までの間に刊行された3冊。

収録作品は集英社「マーガレット」系の雑誌に発表されているものが主で、いずれも集英社より刊行されています。

不思議なひと

安藤ゆきさんの初短編集「不思議なひと」、紙書籍の発行は2009年です。

  • 不思議なひと
  • ちいさな恋のモノガタリ
  • 悪魔のクロエ
  • アリス・イン・ワンダーランド
  • SUGAR-COAT
  • 星とハート

の6作品を収録しています。

「過去からやって来た」と言う、ヒロインが憧れている先生にそっくりな青年。彼とヒロインの不思議な関係を描く表題作「不思議なひと」

文芸部の部長と後輩の間にある「カベ」が、恋愛小説によって取り除かれていく「ちいさな恋のモノガタリ」

などなど、安藤ゆきさんが2004年から2009年にかけて発表した、比較的初期の短編を収録。

注目はポップでスタイリッシュな絵柄。特に「ちいさな恋のモノガタリ」の、やや太めの線で描かれたコマの数々。

少女マンガの枠におさまらない高いデザイン性に、読んでいて新鮮な驚きを感じました。

「不思議な人」のヒロイン・留可の豊かな表情も良いです。

透明人間の恋

2冊めの短編集「透明人間の恋」、紙書籍の発行は2013年。「このマンガがすごい!」2014年オンナ編の第17位です。

  • そこは注文の多い料理店
  • 透明人間の恋
  • マトリョーシカ
  • 勝手な2人
  • drops.

以上5編を収録。

表題作「透明人間の恋」が素晴らしい!

透明人間のように存在感の薄い無表情女子高生・田辺が、モテ男・鈴鹿に告白したところから物語スタート。

「あんた鏡みたことあんの?」と鈴鹿にバッサリ振られる田辺。

思い立ち、メガネをコンタクトに変え、髪型を変え、化粧をはじめると周囲の反応が…という展開。

メガネを外したら実は美形、というパターンは男女問わずに定番の設定。

しかし終盤で明かされる、ヒロインが鈴鹿に対して抱く気持ち、そして彼女の表情

読んでて自然と笑みがこぼれます。

ちょっとイヤなヤツ風の鈴鹿にも感情移入できる、短編らしからぬ奥の深さもスゴイ。

雨の日の出来事を少しずつ紡いだ「drops.」など、他作品も素敵な物語ばかり。

安藤ゆきさんの短編を存分に味わえる作品集です。

昏倒少女

安藤ゆきさんの短編集としては最新となる3冊目「昏倒少女」。紙書籍の発行は2015年。

  • ホットアイスチューン
  • 昏倒少女
  • 溢れる
  • 炎のゆくえ
  • パーティー

以上の5編を収録。

こちらも表題作「昏倒少女」が秀逸

虚弱体質ゆえか頻繁に倒れる少女・小日向と、彼女を保健室に運ぶ柔道男・橘

母への届かぬ愛を抱える小日向、義姉への密かな思い胸に秘める橘。

二人の距離が橘家での豊かな食事によって、少しずつ縮まっていく様が朗らかに描かれます。

タイトルと絡んだオチがウマイ!

全10ページと短めながら、ラストでニヤリとしてしまう冒頭作「ホットアイスチューン」など、どの漫画も短編ながら読み応えあり。

「不思議なひと」「透明人間の恋」と読み比べると、それらよりややテクニカル、ちょっとひねった傾向の作品群です。

画力も初期よりクオリティの高い安藤ゆきさんですが、巻を重ねて徐々に変化、洗練されてきたその描き方

初期作品と較べて見ると、また面白みがあります。

安藤ゆき短編の魅力

以上、安藤ゆきさんの短編漫画集「不思議なひと」「透明人間の恋」「昏倒少女」3冊のご紹介でした。

基本「ガール・ミーツ・ボーイ」が描かれる安藤ゆき作品。

話に突飛さがなく、また物語のテンポがとても良いので、短編ながらグッと各話の世界観に惹き込まれます。

読後感もカラッとさわやか。

この読後感の良さはどこから来るのだろう、と考えると、それはヒロインの気質にあるのではないかと思います。

少女漫画ということでもちろん恋愛系の話が多いのですが、みんな恋愛にがっついてないんですよね。

気づくと恋してる、みたいな。

この「くど過ぎないけどジワッとしみ出て来る甘さ」のような感覚が安藤ゆき作品の魅力。

もう一つ、読んでいて惹きつけられたのが、各ヒロインの表情

安藤さんはしっかりとした線を描かれるタイプですが、主人公たちのくっきりはっきりした「目」に力を感じます。

みんな邪気の無い、真っ直ぐな目をしている。

その目の形と連動した、コロコロと変わる表情も魅力的。

笑顔や泣き顔だけでなく、片目だけすぼめておどけたり、歯を食いしばって悔しがったり。

「不思議なひと(表題作)」の留可や、「悪魔のクロエ」の黒絵など、飽きのこない楽しい表情で読者を楽しませてくれます。

絵もストーリーも満足の作品ばかり。「町田くんの世界」が気になっている人にも、短編漫画好きの人にも、ぜひオススメしたい安藤ゆきさんの作品。

きっと男女問わず楽しんでいただけると思います。

何度も読み返したくなる、漫画の魅力が詰まっていますよ。

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