惑星キャンプに集った少年少女たちは謎の光球に飲み込まれ、突如宇宙空間に放り出される。果たして彼らは、故郷へ帰り着くことができるのか?
集英社のWebマンガ誌「ジャンプ+」に連載された、篠原健太さんの漫画「彼方のアストラ」。少年漫画では近年めずらしい、宇宙を舞台にした本格的なSF。テンポ良く、最後まで息をつかせぬ全5巻です。
「彼方のアストラ」レビュー
あらすじ
西暦2063年。8人の高校生たち(+メンバーの妹ひとり)は、生徒のみで5日間を過ごす「惑星キャンプ」に出発する。
惑星マクパに到着し、キャンプの準備をする生徒たち。しかし突如出現した謎の光球に飲み込まれ、宇宙空間に放り出されることに。
宇宙服を着用していたために辛くも生存した彼ら。偶然漂流していた無人の宇宙船に乗り込み、難を逃れる。
分析の結果、彼らは惑星マクパから5012光年離れた場所にいることが判明。3ヶ月かかる帰還の道。しかし船内に残された水・食料は3日分だった。
帰還は絶望的と思われたが、食料を調達できる惑星を経由しながら移動できるルートを発見。宇宙船を「アストラ号」と名付け、少年少女たちは宇宙でのサバイバルをスタートさせる―。
未知の惑星でのサバイバル
以上がSF漫画「彼方のアストラ」のスタート。以降、食料の補給のために様々な惑星に降り立ち、サバイバルを展開する様子が描かれます。
しかしそこは未知の世界。生態不明の植物や巨大生物、過酷な自然環境など、想像もつかない危険・アクシデントの数々が。そんな危険に、生き延びるために立ち向かう少年少女たち。
運動神経抜群・行動力があり、のちにキャプテンとなるカナタ。天然ボケだが映像記憶能力を持つ少女・アリエス。宇宙船の操縦免許を持つIQ200の天才少年・ザックなど、それぞれに特技・個性を持つ彼らが、持ち前の能力を発揮してピンチを脱出。
この各惑星の冒険、なんだか「スーパーマリオ」感があって面白い。彼らが惑星を訪れる度に、「次はどんなステージが登場するんだろう?」とワクワクします。
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ドキドキのサスペンス要素も
「彼方のアストラ」、単なる冒険サバイバルSF漫画ではありません。実はメンバーの中に、彼らの行動を妨害し命を狙う刺客の存在が…?といったサスペンス要素が。
宇宙船の中で不自然に壊されていた通信機。パーツの切断面は新しさが示すのは、9人の中に妨害者が存在すること。それは彼らがなぜ、5000光年の彼方に放り出されたのか、というこにも繋がりがあります。
彼らを亡き者にしようとする者の意図。帰還を妨げる「刺客」の存在。物語が進むに従って、徐々に真実が明らかになっていき、奥行きのある物語が展開。当初読者が予想していた冒険サバイバル感を大きく変えます。
4巻終盤の衝撃展開
数々のピンチを乗り越え、謎のいくつかも解明。徐々に結束力が高まってきたアストラ号メンバー。刺客の存在がちらつきながらも、1~4巻で積み上げられてきた冒険と友情。読者も気分はすっかりアストラ号の一員。
故郷も近づき、「彼方のアストラ」の物語もいよいよ終盤に。
…と、4巻の終盤で明かされる衝撃的な事実!
ネタバレ無しなので詳細は書きませんが、いやー、そう来たかw。これまでの世界観をまるっとひっくり返す展開。驚くと同時に、最終5巻が気になって気になって仕方なくなります。
振り返ると、謎に満ちた物語のそこかしこに伏線が散りばめられていたことに気づき、背中がゾクリ。最終巻では「刺客の正体」も含めた完全決着が着くのですが、そこにもまた、驚くべき伏線の回収が。
作者の篠原健太さん。まさか最初からこれを計算して「彼方のアストラ」を書き始めたのか…?スゴすぎる物語とその結末に驚愕しました。
まとめ
というわけで、篠原健太さんのSF漫画「彼方のアストラ」のレビューでした。
SF冒険サバイバル、そしてサスペンス要素と、実に贅沢な魅力が詰まった作品。また篠原健太さんらしい、テンポの良い笑い・コメディ要素も最高に面白い。ボケとツッコミの応酬に思わず笑いがこみ上げます。
読み返してみるとこの漫画、無駄な部分がほとんど無いんですよね。WEB連載という特異さもあるのかもしれませんが、ものすごく計算されている。そして間延びしない全5巻という手頃な巻数に、描きたい内容を詰め込んできっちり完結している。
SF漫画に多彩な要素をミックス、そして少年漫画らしいメッセージを込めた青春物語。満足の読後感です。なお「彼方のアストラ」、極力中身を知らない状態で読むことをオススメします。一気読みしてドキドキ感を楽しんでください。
「彼方のアストラ」は全5巻ですが、5巻を一冊にまとめた「全巻合本版」が2018年末に刊行されています。
描き下ろしのカバーイラスト、表紙イラストやカラーイラストを集めたイラスト集、秘蔵のネームデータを収録した合本版。「彼方のアストラ」をまとめて読みたい!という方にオススメです。
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