部屋で「百物語」を語り続ける少年。百話を終えた時、彼の身に何が起こるのか…?
意味深タイトルの『僕が死ぬだけの百物語』。少年がひたすら、オカルト・怪奇・都市伝説風の怖い話を語り続ける、新感覚のホラー漫画です。
作者は的野アンジさんで、連載は小学館の漫画アプリ「サンデーうぇぶり」。2023年4月現在、コミックス1~6巻が刊行中。
『僕が死ぬだけの百物語』感想・レビュー
あらすじ
教室の窓から飛び降りようとする小学生・ユウマ。
それを見かけた同級生・ヒナは、彼が元気を取り戻す時間を作ろうと話かける。
「百物語って知ってる…?」
それを聞き、「ぜんぶ終わった時に本物の幽霊が出る」という話を信じたユウマ。自室でひとり、百物語を語り始める…。
「百物語」が怖面白い!
第一話冒頭を皮切りに、以降「ユウマが語る百物語」という形式で、毎回ひとつの怪奇話が展開されていく『僕が死ぬだけの百物語』。
毎回12P前後ぐらいのホラー・ショートが描かれるのですが、これがなかなかレベルの高い恐怖話。
- 欲しいものを手に入れてくれる謎のロッカー
- 遊泳禁止地区で人を引きずり込む黒い手
- オレオレ詐欺の受け子が空き家で体験した恐怖
のような、ホラーとしてはベーシックなストーリーに、オカルト・怪奇・不気味・不条理などのオチがつく(グロや痛い系の話もあり)。
そのどれもに共通するのが、「読後に残る後味の悪さ・気持ち悪さ」。
短いページ数ながらそれぞれの世界観をしっかり作り、ちゃんと怖さ・気持ち悪さに落とし込んでいく。
作者・的野アンジさんの巧みな物語運びで、安定したホラー感を楽しめます。
不穏な空気の「ひとり語り」
数あるオムニバス的なホラー漫画の中で、この『僕が死ぬだけの百物語』が特異なのは、「ユウマのひとり語り」という形式であること。
各回、ショート・ホラーの前後数ページでは、部屋でビデオカメラ(スマホ?)らしきものをセッティングする、ユウマの姿が。
そしてカメラ目線で
「今から○つ目、始めるよ」「はいっ、○つ目おしまい!」
と語りかけてきます。
それは一見なんてことのない、穏やかな風景。
ですが回が進むにつれて、微妙に不穏な空気が漂ってくる…。
「百物語」が終わる時…?
どうもユウマは「家族の声」にプレッシャーを感じているよう。
果たしてそれは虐待なのか?
そもそも声をかけてくるのは家族なのか?
彼は何のために、誰のために、語り続けるのか?
そして百物語が終わった時、彼の身に一体何が起こるのか…?
次々と湧き出る疑問と恐怖が、何とも恐ろしい『僕が死ぬだけの百物語』。
ホラー・ショートと物語全体を包む不気味さ。恐怖を恐怖でサンドしたような二重構造のホラー感に、読めば読むほど引き込まれていきます。
まとめ:確実な恐怖のあるホラー
以上、的野アンジさんの『僕が死ぬだけの百物語』感想・レビューでした。
ホラー漫画の中にはオチが強引な作品もありますが、本作は物語運びがとてもスムーズできっちり怖い!各話、確実な恐怖を味あわせてくれます。
なお各巻には10話が収録されているのですが、このペースで行けば全10巻完結?
最後まで見届けたい…ような恐いような(笑)。意味深タイトルの回収も気になるところです。
『僕が死ぬだけの百物語』は、漫画アプリ「サンデーうぇぶり」でも、FREE・初回無料の回が多数用意されています。
単行本に未収録の話も公開されているので、気になる方はアプリでチェックしてみてください。
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