部屋で百物語を語り続ける少年。百話を終えた時、その身に待ち受けるものは―?
意味深なタイトルの『僕が死ぬだけの百物語』。オカルト・怪奇・都市伝説風の怖い話を少年が語り続ける、新感覚のホラー漫画です。
作者は的野アンジさんで、連載は小学館の漫画アプリ「サンデーうぇぶり」。2022年4月現在、単行本は3巻まで刊行中。
『僕が死ぬだけの百物語』感想・レビュー
あらすじ・概要
教室の窓から飛び降りようとする小学生・ユウマを引き止めた、友人・ヒナ。彼が元気を取り戻す時間を作ろうと、「百物語」のことを教える。
それを聞いたユウマ、「ぜんぶ終わった時に本物の幽霊が出る」という話を信じて、自室でひとり、百物語を語り始める…。
…という第一話冒頭を皮切りに、以降「ユウマが語る百物語」という形式で、毎回ひとつの怪奇話が展開されていきます。
【
「百物語」がレベルの高い怖面白さ
『僕が死ぬだけの百物語』では毎回、大体12P前後ぐらいのホラー・ショートが描かれるのですが、これがなかなかレベルの高い恐怖話。
- 欲しいものを手に入れてくれる謎のロッカー
- 遊泳禁止地区で人を引きずり込む黒い手
- オレオレ詐欺の受け子が無人の家で体験した恐怖
のような、ホラーとしてはベーシックなストーリーと、オカルト・怪奇・不条理・不気味などバラエティ豊かなオチを持つ各話(グロや痛い系の話もあり)。
そのどれもに共通するのが、「読後に残る後味の悪さ・気持ち悪さ」。
短いページ数ながらそれぞれの世界観をしっかり作り、ちゃんと怖さ・気持ち悪さに落とし込んでいく、的野アンジさんの物語の運び方がとてもウマイ。安定したホラー感を楽しめます。
「百物語」が終わった時、ユウマは…?
しかしオムニバス的なホラー漫画は、特に珍しいものではありません。
この『僕が死ぬだけの百物語』が特異なのは、「ユウマのひとり語り」という形式を持つこと。
各回の最初と最後の数ページで描かれるのは、自分の部屋でビデオカメラ(スマホ?)らしきものをセッティングするユウマ。
その前で「今から○つ目、始めるよ」「はいっ、○つ目おしまい!」と、カメラ目線で語りかけてきます。
その風景は一見なんてことのない穏やかなもの。ですが回が進むにつれて微妙に不穏な空気が漂ってくる。
どうもユウマは「家族の声」にプレッシャーを感じているよう。虐待なのか?そもそも声をかけてくるのは家族なのか?さらに彼は何のために、誰のために語り続けるのか?
そして百物語が終わった時に、彼の身に一体何が起こるのか…?
各話で描かれる恐怖話と、物語全体を包む疑問、そして不気味さ。恐怖を恐怖でサンドしたような二重の恐怖が、『僕が死ぬだけの百物語』ならではの面白さ+怖さとなっています。
まとめ
以上、的野アンジさんの『僕が死ぬだけの百物語』感想・レビューでした。
ホラー漫画の中には、強引な展開でオチに持っていく作品もありますが、本作は物語運びがとてもスムーズできっちり怖い!納得感のある恐怖を感じることができます。
また「百物語」形式による物語全体のドキドキ・恐怖、そして意味深タイトルの回収も気になるところ。
各巻には10話が収録されているのですが、このペースで行けば全10巻完結?最後まで見届けた…いような恐ろしいような(笑)。
『僕が死ぬだけの百物語』は、漫画アプリ「サンデーうぇぶり」でもFREE・初回無料の回が多数用意されています。
単行本にまだ収録されていない話も公開されているので、気になる方はアプリでチェックしてみてください。
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