「EVIL~光と影のタペストリー~」全3巻―スポーツ漫画の巨匠が描くサスペンス

「塀内夏子」という名前を聞けば、多くの方はスポーツ漫画を想起されるのではないでしょうか。

古くは「オフサイド」「Jドリーム」、近年は「イカロスの山」や「コラソン」といったタイトルの数々。

私も塀内氏の描く漫画は、「Jドリーム(無印・飛翔編・完全燃焼編)」「Boy Meets Girl〜マウンドの少女〜」や「塀内夏子短編集」に収録されている「42.195のダフネ」「いつも心に筋肉を」などが大好き。

スポーツとそれを取り巻くリアルな環境、そして登場人物たちの熱いぶつかり合いが描かれる塀内漫画。

いつも読み応えがあります。

そんな塀内先生がサスペンス漫画を描いていた!その作品がこちら。

「EVIL~光と影のタペストリー~」です。

佐藤秀峰氏主催の「マンガonウェブ」に連載されていた漫画が、全3巻の電子書籍として2017年4月1日に発売。

本記事作成時点では電子版のみの刊行のようです。

というわけで「EVIL~光と影のタペストリー~」全3巻を早速読んでみました。

なお「EVIL」は「エビル」ではなく、「イーブル」と読みます。

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あらすじ

アツトとみずきは都立M高校3年生。

絶滅寸前の美術部員である二人は、共に美大への進学を志す。

そんな二人はある日、類まれなる絵画の才能を持つエイジに出会う。

同じく高校3年生であるエイジと、アツト・みずきは意気投合。

アトリエで共にイーゼルを並べる仲に。

時を同じくして、東京郊外で連続殺人事件が発生。

遺体はいずれも頭部を切断されていた。

警察は防犯カメラに映る若い男を追う。

そしてエイジの元に、幼き頃に生き別れた兄・レイジがあらわれる。

レイジとエイジは、14年前に起きたとある事件の当事者だった。

再会を喜ぶエイジ。しかしレイジにはどこか影があり―。

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「EVIL~光と影のタペストリー~」レビュー

対比的な「光」と「闇」

謎解き主体のミステリーではなく、サスペンスですね。

塀内夏子作品と殺人事件の組み合わせ。いろいろな意味でドキドキしました。おもしろかったです。

印象的だったのは高校生3人を描いたまばゆい「光」。

それと対比的な、エイジ・レイジ兄弟にまとわりつく狂おしいほどの「闇」。

二つのコントラストが絡み合い、人間ドラマをくっきり浮かび上がらせる様がとても印象的。

テーマは「絵をかくということ」

塀内先生がこの漫画のテーマの一つに挙げられている、「絵をかくということ」(あとがき参照)。

幼少時の闇を抱えながらも、天才的なセンスを発揮するエイジ。

漫画家を目指し、彼に負けじと筆を磨くアツト。

東大を狙える頭脳を持つ反面、絵の才能は無いけどこよなく絵画を愛するみずき。

この三人が真剣に絵に向き合い、そして一つのものを作り上げようとする姿。

まぶしいぐらいの輝きが素晴らしい。

浮かび上がる兄弟の闇

それが輝けば輝くほど、昏く、重くのしかかるのが兄弟の闇。

幼少時に受けた凄惨なまでの仕打ちと、そこに起因していると思わしき猟奇的な連続殺人。

スポーツを題材とした漫画とはまたひと味ちがう、ドラマティックな展開が描かれます。

塀内漫画の新境地

強いて気になったことを挙げるとすれば、警察関連の描写の軽さ、でしょうか。

テーマ的におそらく青年以上をターゲットにしていると思われるので、もう少しリアリティがあると、説得力が増したのでは。

またオカルト描写もちょっと唐突感があったでしょうか。

それらも踏まえて、全体的には満足の読後感。塀内漫画の新境地を見せていただきました。

あとがきを読むと、作品ができあがるまでにいろいろとご苦労があったご様子。

商業漫画の難しさとウェブ漫画の可能性、一人の漫画読みとして興味深い内容でした。

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まとめ

以上、塀内夏子さん描くサスペンス「EVIL~光と影のタペストリー~」全3巻の感想でした。

上でオカルト描写に付いて少し触れましたが、描き方自体はすごく恐怖感があり、ベテラン作家さんならではの迫力がありました。

次回作はぜひ!ホラー・オカルト漫画にチャレンジしていただきたいところ。

漫画データ
タイトル:EVIL~光と影のタペストリー~ 1巻著者:塀内夏子出版社:電書バト発行日:2017-04-01