少女二人が終末世界を旅する様子をただひたすら、淡々と描く漫画。
「つくみず」さんの「少女週末旅行」です。
2017年にアニメ化もされた本作。連載は新潮社のWebメディア「くらげバンチ」。2018年3月刊行の第6巻で完結となりました。
「少女終末旅行」感想
少女二人が旅する終末
「少女週末旅行」では、二人の少女が廃墟となった多層構造都市を、愛車ケッテンクラートに乗って旅をする様子が延々と描かれます。
主人公の一人は、黒髪おさげのチト。冷静沈着なケッテンクラートの操縦担当です。
もう一人の主人公は金髪長身のユーリ。呑気な食いしん坊。特に敵がいるわけではないのですが、ライフルを携行しています。
ちなみにケッテンクラートとは半装軌車、つまり前輪がタイヤで後輪がトラック状の車両のこと。
「少女終末旅行」に登場する車体は操縦席がバイク状で、後ろの荷台にキャタピラーが付いているもの。「トトトト…」という感じで走ります。
終末感あふれる静寂の世界
そんな二人が旅をする世界は、静寂そのもの。人間どころか、生き物の気配がありません。
自然と呼べるものも見当たらず、目に入るのは人工建築物ばかり。
彼女たちは時に巨大なビル群(のようなもの)を登り、時に巨大なパイプの上を渡り、時に宗教的な建築物を通り抜け、そして螺旋状の構造物を道なりに、ひたすらケッテンクラートで進みます。
この描かれる「終末感」がスゴイ。
画から伝わるのは基本的に、二人のセリフとケッテンクラートの駆動音のみ。そして時折描かれる、巨大な建築物や空間の圧倒的スケール。
そこにはハッ、と息を呑むインパクトがあります。
二人の目指す場所
チトとユーリが存在するのは、おそらく西暦3200年以降の世界。それも状況から類推されるだけで、正確なところは不明。
どうやらほとんどの生物は死に絶え、文明は崩壊しているよう。
ですが若干生き残っている人間も。その一人である男性・カナザワ(1巻後半登場)や、そのほか、人ではないものとの邂逅を踏まえ、彼女たちはひたすら前進。
基本的な目的は食料を探すことですが、いくつかの出会いを経て、その進路を明確に「上」に設定する二人。
文明の名残を目にし、そこに生きてきた人々の思いを類推しながら、やがてたどり着く場所と、旅の終わり。そこには果たして?
必然的な結末
二人は決して人類を背負っている存在ではありません。
また世界がこのようになってしまった理由も断片的に示されますが、その謎を解き明かす旅でもありません。
そのため淡々と描かれる結末は、ある意味予想通りのもの。
しかしそれは意外性が無い、ということではなく、「必然的」にそこに行き着いたのだな、という感想。
もし自分が終末世界を旅したら、こんな感じなのかもしれない。そんな読者の、そしておそらく作者・つくみずさんの心象風景が、結実したかのようなラストです。
過去に全6巻というボリュームで、ここまで終末世界を描ききった漫画は、おそらく無いのでは。それだけに、読み終わるとじんわりと、心に残るものがあります。
個人的には「こういうSF漫画が読みたかったんだ!」という気持ちが満たされました。
まとめ
というわけでつくみずさんの「少女終末旅行」全6巻の感想でした。
先をあせらずにじっくりと読み進めると、自然と心はチトとユーリの二人に同化。旅の結末を見届けたあとは、またあらためて物語の細部を振り返りたくなる、不思議な雰囲気のある漫画です。
こういう独特のテンポを持った漫画が商業作品として6巻まで刊行された、ということを何より評価したいところ。未読の方は二人と一緒に、ぜひ終末世界の静かな冒険を楽しんでみてください。
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